アオサ
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アオサの大量繁殖は自然環境への打撃のみならず漁業観光海水浴ウォータースポーツ潮干狩り等)への経済的打撃をも与える。

しかしアオサは成長が早く、海水中の炭素窒素リン栄養塩などを効率よく吸収するため、海水の浄化に寄与している一面も持つ。

日本各地で現出するアオサ緑潮の原因種は発生箇所や発生時によって様々だが、日本沿岸でよく見られるアナアオサ型、温暖海域生息のアミアオサ型とリボンアオサ型、そしてヨーロッパでよく見られる U. armoricana 型の4分類群が原因種だと推定されている。

大量繁殖したアオサの活用法は緑潮問題を抱える自治体によって進められ、食料や飼肥料に転化させる動きもあるが、多くは回収されたのち焼却処分されるのが現状である。
利用

アオサ類は食品のほか、飼料や水質浄化、バイオマスエネルギーにも利用されている[5]
食品
乾燥粉末はふりかけなどに利用されている(ヒトエグサを含めた加工食品については「加工食品」参照)。
飼料
北海道ではウニの人工飼育において飼料用に不稔性のアオサを養殖する。不稔アオサは成熟せず成長を続けるので飼料に適している。大量繁殖し沿岸に漂着したアオサを回収し、塩類除去や乳酸発酵などの工程を経て、魚貝類鶏卵)の飼料や、堆肥として用いる試みが各地で行われている。こういった海藻の飼肥料化をマリンサイレージと呼ぶ[2]
エネルギー用
アオサを発酵させてメタンガスを発生させ、バイオマスエネルギーとして利用しようとする取り組みが大阪府立大学東京ガス九州産業大学福岡女子大学西部ガスなどでそれぞれ行なわれる。発生したメタンガスは燃料として、或いは発電用燃料としての利用が考えられる。また超臨界水によってガス化する取り組みもある。ただしコスト面などの理由で実用化には至っていない。
加工食品

植物のアオサ類のうち、食品として高値で取引されているのは高知県四万十川河口域産のスジアオノリである[2]

他のアオサ属はスジアオノリのような旨味や芳香に欠け、食感も固く、結果、商品価値が低く安価であり、代用品として使用されている[2][6]

日本食品標準成分表』には「あおさ<石蓴>」の素干し(09001)が掲載されており、アナアオサが主に食用とされるとなっている[7]。この食品標準成分表の成分値は、藻体を水洗いし、天日で乾燥したもの及び市販品とされ[7]ワカメ青のり同様に、マグネシウムなどのミネラルが豊富な海藻食品であるとする[8]。なお、『日本食品標準成分表』では「あおのり<青海苔>」の素干し(09002)を、スジアオノリを主体としてウスバアオノリを混ぜたものとしており、別の分類としている[7]

伝統的なアオサ属はかつて、旧アオノリ属やヒトエグサと比べると総じて品質が劣るとされた。これは主に、ヒトエグサでは藻体を構成する細胞が一層に薄く並んでいるのに対し、アオサでは二層となっており、口に含んだ時の食感や食味が良くないためである。一般的にアオノリの方が高価であり、解きほぐれるように食感も良く濃密な芳香があるのに対して、アオサは香りが薄く、いつまでも口に残るような硬さがあり、また苦味を感じる場合もある。

しかし青海苔の消費拡大に伴い、伝統的アオサ属が旧アオノリ属の代用として利用されるようになり、アオノリの出荷量を上回るようになっている[9]

養殖場では人工採苗によって海苔網へ種付けし、河口付近などの穏やかな海に海苔網を張って養殖する。

なお青海苔業界では古くより、大阪より東で取れるという意味で伝統的アオサ属によるアオサを「ばんどう(阪東)アオサ」「坂東粉(ばんどうこ)」と呼び、旧アオノリ属による製品と区別している。
脚注^ 【三重ブランド】2月:アオサノリ(上)全国一の産地 中日新聞ニュースサイト(2020年2月9日)2022年11月5日閲覧
^ a b c d e f g h 名畑進一「海藻アオサ類の分類と利用」『北水試だより』69(2005年)pp.2-12
^ 砂浜に大量アオサ 困惑:1000トン腐敗し異臭 活用策なく/横浜「海の公園」養分多く波穏やか『毎日新聞』夕刊2022年10月31日(社会面)2022年11月5日閲覧
^吉田忠生・吉永一男 (2010) 日本産海藻目録(2010年改訂版), 藻類 Jpn.J.Phycol. (Sorui) 58:69-122, 2010 Archived 2014年7月20日, at the Wayback Machine.
^ a b アナアオサ 京都府海洋センター
^ 「今年も青のり高騰」『食品新聞』2019年2月4日(2022年11月5日閲覧)
^ a b c 9)藻類 文部科学省
^ 「藻類」『2004五訂食品成分表』(女子栄養大学出版部、2004年1月)pp.128-133
^ 大野正夫「新しい食材になるアオサ」(pp.137-143) 『アオサの利用と環境修復(改訂版)』能登谷正浩編著、成山堂書店、2001年

参考文献

能登谷正浩『アオサの利用と環境修復』(
成山堂書店、2001年 ISBN 9784425827527

平岡雅規、嶌田智、吉田吾郎「グリーンタイド」『21世紀初頭の藻学の現況』(日本藻類学会創立50周年記念事業実行委員会、2002年)98-101頁

名畑進一「海藻アオサ類の分類と利用」『北水試だより』69号(北海道立水産試験場、2005年)1-6頁

「三河湾環境チャレンジ 第3回シンポジウム」蒲郡市、2005年

関連項目.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}.mw-parser-output .sister-box .side-box-abovebelow{padding:0.75em 0;text-align:center}.mw-parser-output .sister-box .side-box-text>ul{border-top:1px solid #aaa;padding:0.75em 0;width:217px;margin:0 auto}.mw-parser-output .sister-box .side-box-text>ul>li{min-height:31px}.mw-parser-output .sister-logo{display:inline-block;width:31px;line-height:31px;vertical-align:middle;text-align:center}.mw-parser-output .sister-link{display:inline-block;margin-left:4px;width:182px;vertical-align:middle}ウィキペディアの姉妹プロジェクト
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