アイルランド(愛: Eire、英: Ireland)は、北西ヨーロッパに位置し、北大西洋のアイルランド島の大部分を領土とする共和制国家。代替的な記述でアイルランド共和国(アイルランドきょうわこく、愛: Poblacht na hEireann、英: Republic of Ireland)としても知られる[注釈 1]。首都はダブリン。
人口490万人のうち約4割がダブリン近郊に住んでいる[1]。主権国家であり、北アイルランド(イギリス領)とのみ陸上で国境を接している。大西洋に囲まれており、南にはケルト海、南東にはセント・ジョージ海峡、東にはアイリッシュ海がある。単一国家であり、議会共和制である[2]。立法府は、下院であるドイル・エアラン(Dail Eireann)、上院であるシャナズ・エアラン(Seanad Eireann)、そして選挙で選ばれた大統領(Uachtaran)から構成されている。政府の長は議会で選出され、大統領によって任命された首相(Taoiseach、ティーショク、英語では「Prime Minister」とは呼ばれない)である。
1922年に英愛条約の結果、アイルランド自由国として誕生した。1937年に新しい憲法が採択されるまでは自治領の地位にあった。「アイルランド」と名づけられ、事実上の共和制となり、選出された非執行大統領が国家元首となる。1948年のアイルランド共和国法(Republic of Ireland Act 1948)により、1949年に正式に共和国と宣言された。1955年12月、アイルランドは国際連合に加盟した。1973年には欧州連合(EU)の前身である欧州経済共同体(EEC)に加盟した。20世紀のほとんどの間、北アイルランドとの正式な関係はなかったが、1980年代から1990年代にかけて、イギリス政府とアイルランド政府は「厄介事(愛: Na Triobloidi、英: The Troubles)」と呼ばれている北アイルランド問題の解決に向けて北アイルランドの当事者と協力した。1998年にベルファスト合意が調印されて以来、アイルランド政府と北アイルランド政府執行部は、協定によって設立された南北閣僚協議会の下で、多くの政策分野で協力してきた。
アイルランドは一人当たりの国内総生産が世界で最も裕福な国のトップ10にランクされており[3]、2015年のレガタム繁栄指数によると世界で10番目に繁栄している国である[4]。EEC加盟後、アイルランドは一連の自由主義的な経済政策を実施し、急速な経済成長を遂げた。1995年から2007年までの間、ケルトの虎時代として知られるようになり、繁栄を達成した。2005年、『エコノミスト』の調査では最も住みやすい国に選出されている。しかし、2008年に発生した未曾有の金融危機と同時に世界的な経済危機に見舞われたことで、この時期の繁栄は途絶えた[5][6]。2015年にはアイルランド経済がEU内で最も急速に成長したことから、アイルランドは国際的に富と繁栄を比較するリーグテーブルを再び急速に上昇させている[7]。例えば、2019年には、アイルランドは国連の人間開発指数によって世界で3番目の先進国にランクされた[8]。また、報道の自由、経済的自由、市民的自由など、数々の国の指標でも高く示されている。アイルランドは欧州連合(EU)に加盟しており、欧州評議会と経済協力開発機構の設立国でもある。アイルランド政府は第二次世界大戦の直前から非同盟による軍事的中立政策をとっており、北大西洋条約機構(NATO)には加盟していないが[9]、平和のためのパートナーシップや常設軍事協力枠組み(PESCO)には加盟している。
国名詳細は「アイルランドの国名(英語版)」を参照アイルランドの地図
アイルランドの32県のうち26県で構成される1922年の国家は、「アイルランド自由国」として知られていた[10]。1937年のアイルランド憲法で定められた正式名称はアイルランド語で「Eire([?e????] ( 音声ファイル)、エール)」、英語では「Ireland([?a??rl?nd]、アイアランド)」。国際連合や欧州連合では「Ireland」として国名登録されているが、その一方で「1948年アイルランド共和国法(The Republic of Ireland Act, 1948)」は、憲法の規定を覆す効力は無いものの「アイルランド共和国(愛: Poblacht na hEireann、英: Republic of Ireland)」を国の記述とする旨を定めている[11]。
イギリス政府は、国家の名称として「Eire」(ダイアクリティカルマークなし)、1949年からは「Republic of Ireland(アイルランド共和国)」を使用していたが[12]、1998年のベルファスト合意までは「Ireland(アイルランド)」という名称を使用していなかった[13]。
「Ireland」、「Eire」、「Republic of Ireland」の他に、「the Republic(共和国)」、「Southern Ireland(南アイルランド)」、「the South(南部)」とも呼ばれることがある[14]。アイルランド共和主義では、「the Free State(自由国家)」または「the 26 Counties(26県)」と呼ばれることが多い[15]。
日本語では「アイルランド」と「アイルランド共和国」の両方が使われており、日本国外務省は公式名称である前者を用いている[16]。アイルランド語読みの「エール」と呼ぶこともある。漢字による当て字は愛蘭土で、愛と略す。
歴史詳細は「アイルランドの歴史」および「アイルランド共和国の歴史(英語版)」を参照
先史時代と古代新石器時代の支石墓