アイスランド
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こうした危機を乗り切るため、アイスランド中央銀行は8日にロシアから40億ユーロの緊急融資を受けることを発表したものの危機は収まらず、10月14日には国際通貨基金(IMF)に正式に支援を要請した[注釈 2][35]10月27日、カウプシング銀行のサムライ債(円建ての債券)780億円が事実上のデフォルト(債務不履行)となった[36]。当時のゲイル・ホルデ首相は『朝日新聞』のインタビューに対し「民間銀行だったときのことで本来は政府の問題ではない。公的管理下にあり、そこで最善の処置がされるだろう」と回答を示している。

2010年1月、政府管理下での公的資金投入を決定。しかし、外国(特に英国とオランダ)の大口預金者までも自分たちの税金で救済することに国民が反発し、大統領が拒否権を発動した。ついにこの問題は2010年3月6日に国民投票となり、圧倒的票差で否決されてしまった。これに対し、自国大口預金者への負担の「肩代わり」を既に済ませた英国・オランダ政府が支払いを求めて反発。2011年2月、再び公的資金投入を決定、しかし再び大統領が拒否権を発動。2011年4月、再び国民投票となり、再び否決されてしまった。このために、IMFによる支援やEU加盟にまで悪影響を及ぼしている[37][38]。「2009年アイスランド金融危機抗議デモ(英語版)」も参照

危機を導いた「男性型経営」に対する批判も多く、国有化されたランズバンキ、グリニトル両行には、それぞれエリン・シグフースドッティル、ビルナ・エイナルスドッティルという2人の女性が新CEOに就任した[39]

2007年時点では1ドル約60クローネであったものが金融危機後には通貨暴落で125クローネとなり、輸入費が高騰したのを受けてマクドナルドでは2009年10月31日に異例ともいえるアイスランドからの撤退を行った[40][41]。しかしそれと同時に自国通貨が為替市場で安くなったことにより、水産物などの輸出ドライブがかかり、経常収支が大幅に改善。アイスランドの輸出額はGDPの59パーセントにまで達し[42]、2011年度には3パーセントを超える経済成長率を記録するなど順調に景気が回復している。この通貨安は観光業に恩恵をもたらし、2011年度には約56万人の観光客がアイスランドを訪れその地で買い物をした。これは2010年度に比して16パーセントの増加である。

輸出拡大と観光客増加により、2013年には経常収支が黒字を回復した。2016年は観光客数はさらに約180万人へと増え、経済成長率は7.2パーセントに達した。通貨防衛のための資本規制は2017年3月に解除し、海外投資などが再び自由にできるようになった。アイスランド中央銀行のグズムンズソン総裁は「銀行を救わずに金融危機から脱した」と総括している[43]

2013年時点で、経済危機に苦しむEUを尻目に、アイスランドの経済はEU平均を上回る成長を見せていた[44]
資源

漁獲資源が豊富で、漁業が古くから盛んである。それ以外の天然資源は乏しく、が唯一産出する鉱物資源である。森林資源は、かつてはカバ林が存在したが、開拓の時代に燃料資源として使い尽くされた。現在、国土に占める森林面積はわずか0.3パーセントに過ぎず、矮小なポプラトネリコが残るのみである。かつての自然を復活させようと懸命な植林活動が各地で行われており、アイスランド出身の歌手ビョークもこの活動をPRしている。
漁業

アイスランド本島付近では、北大西洋海流暖流)と北極方向からの寒流がぶつかり潮目を形成しているため、この付近の海域は世界有数の漁場となっている。このため漁業は、古くからアイスランドの基幹産業であり続けた。現在でも漁業は盛んであり、漁業が雇用の8パーセントを担っている。漁獲量は多いが、近年はタラなどの漁獲量が減少している。そのため市場に出回るの価格は上昇を続けており、国民が魚を口にする機会は昔に比べると減っている。アロンガ、ハドック、カレイヒラメなどが獲れる。日本は大量のカラフトシシャモを輸入している。漁業資源の統制を失うことへの懸念から、EUへの加盟を拒否し続けている。また、捕鯨国であることもEU加盟を遠のかせている。「アイスランド食糧省(アイスランド語版、英語版)」も参照
農業詳細は「アイスランドの農業(英語版)」を参照

アイスランドは地質活動の影響により地熱利用が一般化されているために、涼しい気候[45]と限られた栽培期(英語版)にもかかわらず、様々な野菜類や花卉をはじめ飼料用の作物が生産されている。

主にジャガイモルバーブカブダイコンニンジンソラマメエンドウマメイチゴキャベツケールカリフラワートマト[46]など、各種の食用作物が栽培される。

19世紀にはアイスランド人の70?80%が農業で生計を立てていたが、それらの割合は長年に亘って減少していて、現在ではその数は総人口の5%未満となりつつある問題点を抱えている[47]。今後もその数は減少し続けることが予想される。

耕作可能な土地面積は総面積 (100,000km2のうち) のわずか1%であり、ほぼ独占的に国の周縁部の低地に限定される。
畜産業

家畜は、ヒツジ [注釈 3]ウシ [注釈 4]の飼育が主なものとなっている[48]が、ブタ家禽も飼育されている。同国では肉、乳製品、卵の生産を自給自足で賄っている面が顕著となっている。
エネルギー政策詳細は「アイスランドにおける再生可能エネルギー(英語版)」を参照レイキャヴィーク郊外にある地熱発電所

アイスランド本島には温泉が多く存在するため、温泉を活用した暖房設備が従来から使用されており、石油危機以後には急速に普及した。お茶を沸かすにも温泉が使用されたりするなど、化石燃料の使用は激減した。首都レイキャヴィクは世界的にも「空気のきれいな都市」とされている。暖房用エネルギーの比率は、1970年に石油が5割強で地熱は4割弱だったが、1980年代には地熱が8割超となり石油は1割未満になった。

電力については、アイスランド本島は大西洋中央海嶺上に位置するため、火山や温泉が多く熱源に恵まれていることから、地熱発電が盛んである。島の南部は西岸海洋性気候に属するため、年間を通じて降雨があり、水力発電は更に盛んである。1990年代後半からは安価な電力を使いアルミニウム精錬[注釈 5]事業も活発になった。2000年代以後は国内発電量の7割強がアルミニウム精錬に供給されている。事業用のほか、一般家庭の電力やシャワーを温めるエネルギーをすべて地熱発電でまかなったり、発電所の温排水をパイプラインで引き込んでそのままお湯として利用できたりする家や施設もある。バスや空港で水素燃料電池の導入実験を行うなど、新エネルギー導入に積極的な施策を打ち出している[34]。こうして1980年代から再生可能エネルギー発電への転換を推進しており、エネルギー政策先進国として世界から注目を浴びている。2015年時点での電源構成比は、水力が約7割、地熱が約3割となっており、火力は全廃され、原子力は導入されていない。2050年までには化石燃料に頼らない水素エネルギー社会を確立することを標榜しており、既に燃料電池自動車のバスの運行、水素ガス供給ステーションの建設が始まっている。
製造業

近年、工業の多様化に努め、ソフトウェア産業やバイオテクノロジー医薬品の輸出が盛ん)のほか、水力発電によって産み出される安価な電力を利用したアルミニウム精錬産業が盛んである。さらに天然資源の加工品としてコンクリートがあり、非常に高価な輸入木材に代わってほとんどの建築に利用されている。
商業

金融サービスなどが盛んになってきている。


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