アイスランド
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しかし、水産加工業を手始めに徐々に工業第2次産業)やサービス業第3次産業)へと軸足を移し、第1次産業の割合は1945年には35パーセント、1973年には13パーセントまで低下した[32]。しかし漁業は依然として重要な輸出産業である。また1920年代から1940年代にかけてアイスランド経済は高い成長を遂げ、1950年には1人あたりGDPは1000ドルに達し、独英仏など西ヨーロッパ主要国を追い越した。1960年代までインフレ率は10パーセント台と比較的高い水準にあったが、2度にわたる石油危機の発生は、人口が少なく国際経済へ依存が強いアイスランドのインフレを昂進させ、1983年にはインフレ率が84パーセントに達した。1990年代に入ってようやくインフレは収束した。1970年代から1990年代までのアイスランド経済は平均3パーセント程度の穏やかな成長が続いた。
金融危機以前

2008年9月から顕在化した世界金融危機により、アイスランド経済は危機に陥ったが、それ以前は一時的な繁栄を謳歌していた。全体の国内総生産(GDP)は少なかったが、国民1人あたりでは世界でもトップレベル(2006年時点で世界5位)であった。さらに国際競争力も高く、世界4位、ヨーロッパ1位となっており[33]、小国ながら特筆すべき経済力を持っていた。産業としては金融部門の伸びが著しく、金融不動産業がGDPに占める割合は26パーセントに達した。これが、後にこの国の経済危機を招いた。一方、従来の主力産業であった漁業のGDPに占める割合は6パーセントまで減少した(2006年時点)。政府の財政体質は良好で、1998年以降は黒字となっていた[34]。以上のように、一時は大胆な産業構造の転換の成功例として華々しく紹介されていたアイスランドではあったが、それは破綻の危険性と常に背中合わせの状態であった。
金融危機以後詳細は「2008年-2011年アイスランド金融危機(英語版)」を参照

2008年9月、アメリカ合衆国サブプライムローン問題に端を発した世界金融危機により、アイスランド経済は危機に陥った。2008年9月29日グリトニル銀行が政府管理下に置かれ、クローナの対ユーロ相場は大幅に下落した。10月6日には政府が非常事態を宣言し、議会はアイスランド国内の全銀行を国有化する法案を可決した。7日にはランズバンキ銀行が国有化され、9日には最大手のカウプシング銀行も国有化された。

こうした危機を乗り切るため、アイスランド中央銀行は8日にロシアから40億ユーロの緊急融資を受けることを発表したものの危機は収まらず、10月14日には国際通貨基金(IMF)に正式に支援を要請した[注釈 2][35]10月27日、カウプシング銀行のサムライ債(円建ての債券)780億円が事実上のデフォルト(債務不履行)となった[36]。当時のゲイル・ホルデ首相は『朝日新聞』のインタビューに対し「民間銀行だったときのことで本来は政府の問題ではない。公的管理下にあり、そこで最善の処置がされるだろう」と回答を示している。

2010年1月、政府管理下での公的資金投入を決定。しかし、外国(特に英国とオランダ)の大口預金者までも自分たちの税金で救済することに国民が反発し、大統領が拒否権を発動した。ついにこの問題は2010年3月6日に国民投票となり、圧倒的票差で否決されてしまった。これに対し、自国大口預金者への負担の「肩代わり」を既に済ませた英国・オランダ政府が支払いを求めて反発。2011年2月、再び公的資金投入を決定、しかし再び大統領が拒否権を発動。2011年4月、再び国民投票となり、再び否決されてしまった。このために、IMFによる支援やEU加盟にまで悪影響を及ぼしている[37][38]。「2009年アイスランド金融危機抗議デモ(英語版)」も参照

危機を導いた「男性型経営」に対する批判も多く、国有化されたランズバンキ、グリニトル両行には、それぞれエリン・シグフースドッティル、ビルナ・エイナルスドッティルという2人の女性が新CEOに就任した[39]

2007年時点では1ドル約60クローネであったものが金融危機後には通貨暴落で125クローネとなり、輸入費が高騰したのを受けてマクドナルドでは2009年10月31日に異例ともいえるアイスランドからの撤退を行った[40][41]。しかしそれと同時に自国通貨が為替市場で安くなったことにより、水産物などの輸出ドライブがかかり、経常収支が大幅に改善。アイスランドの輸出額はGDPの59パーセントにまで達し[42]、2011年度には3パーセントを超える経済成長率を記録するなど順調に景気が回復している。この通貨安は観光業に恩恵をもたらし、2011年度には約56万人の観光客がアイスランドを訪れその地で買い物をした。これは2010年度に比して16パーセントの増加である。

輸出拡大と観光客増加により、2013年には経常収支が黒字を回復した。2016年は観光客数はさらに約180万人へと増え、経済成長率は7.2パーセントに達した。通貨防衛のための資本規制は2017年3月に解除し、海外投資などが再び自由にできるようになった。アイスランド中央銀行のグズムンズソン総裁は「銀行を救わずに金融危機から脱した」と総括している[43]

2013年時点で、経済危機に苦しむEUを尻目に、アイスランドの経済はEU平均を上回る成長を見せていた[44]
資源

漁獲資源が豊富で、漁業が古くから盛んである。それ以外の天然資源は乏しく、が唯一産出する鉱物資源である。森林資源は、かつてはカバ林が存在したが、開拓の時代に燃料資源として使い尽くされた。現在、国土に占める森林面積はわずか0.3パーセントに過ぎず、矮小なポプラトネリコが残るのみである。かつての自然を復活させようと懸命な植林活動が各地で行われており、アイスランド出身の歌手ビョークもこの活動をPRしている。
漁業

アイスランド本島付近では、北大西洋海流暖流)と北極方向からの寒流がぶつかり潮目を形成しているため、この付近の海域は世界有数の漁場となっている。このため漁業は、古くからアイスランドの基幹産業であり続けた。現在でも漁業は盛んであり、漁業が雇用の8パーセントを担っている。漁獲量は多いが、近年はタラなどの漁獲量が減少している。そのため市場に出回るの価格は上昇を続けており、国民が魚を口にする機会は昔に比べると減っている。アロンガ、ハドック、カレイヒラメなどが獲れる。日本は大量のカラフトシシャモを輸入している。漁業資源の統制を失うことへの懸念から、EUへの加盟を拒否し続けている。また、捕鯨国であることもEU加盟を遠のかせている。「アイスランド食糧省(アイスランド語版、英語版)」も参照
農業詳細は「アイスランドの農業(英語版)」を参照

アイスランドは地質活動の影響により地熱利用が一般化されているために、涼しい気候[45]と限られた栽培期(英語版)にもかかわらず、様々な野菜類や花卉をはじめ飼料用の作物が生産されている。

主にジャガイモルバーブカブダイコンニンジンソラマメエンドウマメイチゴキャベツケールカリフラワートマト[46]など、各種の食用作物が栽培される。

19世紀にはアイスランド人の70?80%が農業で生計を立てていたが、それらの割合は長年に亘って減少していて、現在ではその数は総人口の5%未満となりつつある問題点を抱えている[47]。今後もその数は減少し続けることが予想される。

耕作可能な土地面積は総面積 (100,000km2のうち) のわずか1%であり、ほぼ独占的に国の周縁部の低地に限定される。
畜産業

家畜は、ヒツジ [注釈 3]ウシ [注釈 4]の飼育が主なものとなっている[48]が、ブタ家禽も飼育されている。


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