アイザック・ニュートン
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しかし、いずれもすぐに色良い返事がもらえたわけではなかった[1]

精神的な疲労に加えて、このように政界進出の出鼻をくじかれたニュートンは、やがて精神に変調をきたすようになった。不眠や食欲減退を引き起こしたほか、被害妄想にも悩まされるなど、回復には時間を要したとされる。これらについて、福島章統合失調症だったのではないかと指摘している[9]。この当時のニュートンの具体的な行動としては、ジョン・ロックへの書簡で「チャールズ・モンタギューは私を欺くようになった」との内容を認めたとされる[1]。また、2年ほど自宅に引き籠るようになったとも言われる[誰によって?]。これらについては、うつ病だったのではないかとの指摘や、母の死去[注 17]に伴うものとの指摘もある[1]。他方、ニュートンが好んで行っていた行動のひとつとして、錬金術においてしばしば重金属の「味見」をしたといわれる[誰によって?]。このために、一時的な精神不調に陥った可能性も指摘されている[誰によって?]。

以上のような壮年期のスランプ状態にあっても、ニュートンはなお学問を楽しみとしていた。当時、数学者のヨハン・ベルヌーイは、ヨーロッパ中に対して、難解ながら読者の興味を惹く数学の問題を新聞に出題していた。たとえば、「鉛直面上に2つの点があるとする。ひとつの物体が上の点から下の点まで重力のみで落下する時に、要する時間をもっとも短くするにはどのような道筋に沿って降下させればよいか?」という出題があった。これは1696年の出題で、現在では最速降下曲線と呼ばれる問題である。この問題を掲載した新聞は、翌年1月の夕方にニュートンのもとに到着した。この出題に目を通したニュートンは、今日変分法と呼ばれる新しい数学の手法を一夜で組み立て、翌朝の出勤前までに回答を作成し、これを匿名でベルヌーイに投稿したとされる。
王立造幣局長官のニュートン1702年の肖像画

上述のニュートンの打診を受けていたモンタギューはやがて財務大臣となり、1696年4月にモンタギューの紹介で[1]ニュートンは王立造幣局監事の職に就いた。1699年には、ニュートンは王立造幣局長官へと昇格した。モンタギューとしては、働きづめの恩師ニュートンに対して、研究から距離をおいて時間的、体力的に余裕の持てる地位や職を紹介したつもりであった[1]。しかし、ニュートンは、就任早々に通貨偽造人の逮捕し、これを皮切りに片っ端から組織の汚職を洗い出し、処罰する方針を打ち出した[1]

ニュートンは政治・行政の世界とは縁遠い大学教授であったが、王立造幣局長官として鮮やかな手並みを発揮した[1]。部下の捜査員に変装用の服を与えるなどして捜査を進めさせ、偽金製造シンジケートの親分ウィリアム・シャローナー(英語版)を捕らえ、裁判にかけて大逆罪死刑にした[1]。ニュートンが造幣局長官に在職している間は、偽金造りが激減したといわれる。

他方で、ニュートンは貨幣鋳造のために、貨幣の正確な重量やその測定基準を新たに制定した[10]。このときニュートンは、銀貨金貨の相対価値 (金銀比価)を設定するにあたり、市場のの相場を見誤り、銀貨の貨幣価値を銀自体より低く定めてしまった(ニュートン比価)。これにより、銀貨が溶かされ銀の鋳塊が金貨と交換される事態を引き起こした。この結果として、銀貨が実質的に価値を損ない、イギリスは事実上の金本位制に移行した[注 18]

なお、造幣局勤務時代にニュートンは、給料と特別手当で2000ポンドを超える年収を得て、かなりの金銭的余裕を得た[1]
個人投資家のニュートン

ニュートンは株式投資も実践していた。ニュートンは長年にわたって手堅い投資を心がけ、その運用成績も好調だった。株式や国債などに分散された投資ポートフォリオは、1720年の年初時点でおよそ3万2000ポンド[注 19]に相当した[10]

この頃のイギリスでは株式市場が発達し、株式ブームが起こっていた。当時、特に南海会社は特に人気があった。イギリス政府が額面100ポンドで売り出した南海会社株は爆発的な人気を集めていた。時はやや遡るが、かつてニュートンは王立造幣局長官として、当時増大していたイギリス政府の公的債務の整理問題にも携わっていた。このとき、当時はまだ小さな業績不振の貿易会社に過ぎなかった南海会社を知った。当時の南海会社はまだ人々から注目されていなかったが、ニュートンは南海会社の事業内容に将来性を感じ、南海会社の設立[注 20]から間もない1712年6月に株式を購入していた[10]


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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