171日目に、同じプレスタイン財閥所有のV級輸送艇「ヴォーガ」が通過するのを発見したフォイルは救助信号を発信する。しかし、救助信号に気付いたはずのヴォーガは、なぜかそのまま飛び去ってしまう。その深い絶望とヴォーガへの復讐心が、元は凡庸な三等航海士に過ぎなかったフォイルを、強固な意志を持つ男へと変える。
試行錯誤の末に大破したノーマッドを動かすことに成功したフォイルは、サーガッソ小惑星群に住む科学人(前世紀の科学調査団の末裔)たちによって救助される。しかし、彼らが信奉する科学とは、すでに奇怪な風習へと変化しており、彼らによってフォイルは顔全体に虎のような模様、額に N♂MAD という文字の刺青を彫られてしまう。科学人の小惑星を破壊し、彼らの居住空間として使用されていたロケット艇で脱出したフォイルは、火星の軌道外9,000マイル (14,000 km)の地点で内惑星連合の宇宙海軍に救助される。
地球への帰還を果たしたフォイルは、ジョフリー・フォーマイルと名を変え、プレスタインに近づいていく。一方、プレスタインも行方不明となったノーマッドの積荷を求め、唯一の生き残りであるフォイルを追っていた。 ワイドスクリーン・バロックの代表的な作品であり、様々なSFアイディアが盛り込まれている[3]。この作品で使われたジョウントや加速装置の設定は、後に様々なメディアで登場した(詳しくは各項目参照)。 本作は何度か映像化の企画が浮上したが、実現に至っていない。 1968年、日本のアニメ制作会社エイケンがテレビアニメ化を企画し、『TIGER TIGER』のタイトルで3分45秒のパイロット・フィルムも製作された。脚本は足立朗、演出は山本功、キャラクターデザインはSF系のイラストレーターの金森達 2004年、日本のアニメ制作会社ゴンゾの前田真宏監督は本作をアニメ化しようとしたが、著作権の関係で果たせず、本作のモチーフとなった『モンテ・クリスト伯』を『巌窟王』としてアニメ化した[5]。宇宙を舞台にした設定や主人公の顔に刺青のような紋様が浮き出るなど、この作品のモチーフはいくつか残っている。 ジョン・カーペンターが監督をするという映画化企画もあった[6]。それとは別に2006年にはユニバーサル映画が映画化権を取得し、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラが製作すると発表された[7]。
SF設定
日本語版書誌
わが赴くは星の群(中田耕治訳、講談社サイエンス・フィクション・シリーズ5、1958年9月)
虎よ、虎よ!(中田耕治訳、ハヤカワ・SF・シリーズ3068、1964年6月)
虎よ、虎よ!(中田耕治訳、早川書房世界SF全集18、1970年7月)
虎よ、虎よ!(中田耕治訳、ハヤカワ文庫SF277、1978年1月) ISBN 4-15-010277-5
虎よ、虎よ!(中田耕治訳、ハヤカワ文庫SF1637、2008年2月) ISBN 978-4-15-011634-7
映像化
脚注[脚注の使い方]
注釈^ ノーマッド(nomad)は遊牧民、流浪の民の意味。
出典^ 渡辺英樹「ハヤカワ文庫SF40年の歩み(下)」『S-Fマガジン』2010年11月号、p.224
^ 浅倉久志「十年に一度の傑作」『虎よ、虎よ!』アルフレッド・ベスター、ハヤカワ文庫、1978年、pp.235-237
^ 鈴木力「SFスタンダード100ガイド 虎よ、虎よ!」『S-Fマガジン』2011年9月号、p.29
^ 「初公開!!パイロット・フィルム いま見せる作品に賭けた熱き胸」『アニメージュ』1981年12月号
^ 小黒祐一郎「この人に話を聞きたい 第六十八回 前田真宏」『アニメージュ』2004年9月号
^ 「企画流れに終わった幻の宇宙SF映画を追え」『新映画宝庫 Vol.4 スタークラッシュ 大宇宙映画放浪編』大洋図書、2002年、p.98
^ 井口健二