ら抜き言葉
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また、関東や新潟など一部の方言では「見られる」「食べられる」「来られる」は、未然形(「ない」が語尾に着くとき)が「見らんない」「食べらんない」「来らんない」と「れ」が「ん」に変化することがあり、国語文法を習う際に「れ」に置き換えると教育を受けるので、「ら抜き」言葉に強い違和感を持つ地域もある。さらには「着らんない」(着られない)など現在は「着れない」がほぼ常用になっているら抜き言葉などが新潟弁として残っている。
さ入れ言葉(さ付き言葉)[ソースを編集]

「歌わせてください」というべきところを 「歌わさせてください」というように、余分な「さ」を入れるものを「さ入れ言葉」[10]または「さ付き言葉」と呼ぶ。「…させていただく」のような敬語表現に特徴的に現れる。本来は誤用であるが、すでに市民権を得たとの見解もある[11]
「?たり」の用法[ソースを編集]

動作や状態を並列して述べる場合に使われる助詞の「たり」は、「?たり,?たり」のように、「たり」を繰り返す形で用いるのが本来の語法とされているが[12](例:本を読んだり、音楽を聴いたりして)近年は、本来の用法が守られず後ろの「たり」を落として用いられる傾向がある[13]。(例:本を読んだり音楽を聴いて)「?たり?たり」の語法が守られない背景には、前の「たり」との間にさまざまな節が入り長い文章になったとき、「?たり?たり」の語感が薄れる傾向があることや、類似事例の存在を暗示する「たり+する」の用法が「?たり?たり」に転化した結果、並立助詞としての機能と曖昧な例示としての機能の使い分けが厳密に運用されなくなったことが考えられる[12]
「?と」の用法[ソースを編集]

語を並列して述べる場合に使われる助詞の「と」は、「と」を繰り返す形が本来の語法とされるが、繰り返しを省略する事例が多い。例えば、

「AとBとは異なる」→「AとBは異なる」

「AとBとを対象とする」→「AとBを対象とする」

全然+肯定表現[ソースを編集]詳細は「全然」を参照

「全然」は、明治時代から戦前までの近代語では否定表現を伴わず「すっかり、ことごとく、完全に、全面的に」として用いられてきた(戦前の文学作品には否定表現を伴わずに「全然」が用いられる例が多く見られる[14][15]。「全然違う」、「全然だめ」、「全然反対」、「全然別」など、「全然」に修飾される語に否定的な要素が含まれたものも古くから使われている[15]。)が、文部省教育の定着と世俗の中で昭和中期に肯定用法の使用が減少し、戦後は打消しの言葉や否定的な表現を伴って「まったく。まるで。少しも。まるっきり。」として用いるのが正しい用法とされた。しかし、最近は明治時代から戦前までの「全然」とは違った意味での否定を伴わない用法が増え、これが誤用、若しくは俗用として扱われている。.mw-parser-output .templatequote{overflow:hidden;margin:1em 0;padding:0 40px}.mw-parser-output .templatequote .templatequotecite{line-height:1.5em;text-align:left;padding-left:1.6em;margin-top:0}すると警保局長は全然出版に反對の意を仄めかした。—夏目漱石、『『煤煙』の序』1909(明治42)年妻を迎へて一家團欒の樂を得ようとして、全然失敗した博?士も、此城丈は落されまいといふので、どうしても母君と一しよに食事をする。—森?外、『半日』1909(明治42)年これと全然同じ話が支那にもある。—芥川龍之介、『才一巧亦不二』1925(大正14)年
「おぼつく」「おぼつきません」[ソースを編集]

「おぼつかない」の「ない」は、形容詞を構成する接尾辞の「ない」であり[注釈 1]、打ち消しの助動詞の「ない」ではない。したがって、「おぼつく」「おぼつきません」といった語は存在しない。しかし、遅くとも2010年代には、マスメディアにおいても「足元おぼつかず車道へ[16]」「会議後に報告を受けていたのでは「先手先手」の対応などおぼつくまい[17]」のような用法が見られるようになっている。
敬語に関するもの[ソースを編集]
形容詞/動詞+です[ソースを編集]

丁寧な断定の助動詞「です」が形容詞や動詞に接続することが誤った用法とされることがある。しかし、どちらも古くからある形である。たとえば田山花袋『蒲団』(1907年)には「好いですよ」「困るです」などが多く使われている。

このうち「おもしろいです」のように形容詞に接続するものについては、1952年国語審議会『これからの敬語』で容認された。ただし、過去形では「おもしろいでした」はあまり用いられず、「おもしろかったです」が普通である。

動詞に接続するものについては『これからの敬語』でも認められず、「です」の接続はおかしいという感覚をもつ者が現在でも多いが、井上史雄は将来的に動詞も含めてすべてに「です」が付くようになるだろうと予測している[18]。なお、近年は「?っす」という形が一部で用いられるが、これは品詞を問わず接続する[19]
とんでもございません[ソースを編集]

「とんでもない」は全体で一つの形容詞であるから、丁寧形は「とんでものうございます」もしくは「とんでもないことでございます」などと言わなければならず、「とんでもございません」は誤りとされることがある。

しかし、2007年の文化審議会による『敬語の指針』にて容認された[20]。「とんでもない」は、形容詞の「とでもない」(とでもなし)に、撥音便に類推する「ん」が付加されて生じた語であるという説がある[21][22]。また、「とんでもない」の「ない」は、前置された語素(とんでも)に対し、「そのような状態にある」という意味を付加して、語全体を形容詞化する接尾辞であり、打ち消しの意味を持たないという説がある[23]

2004年の『明鏡国語辞典』では、語法欄で「とんでもありません」「とんでもございません」の形でも使うと述べた[24]。同辞典編集委員で筑波大学教授の矢澤真人は「とんでもない」の「ない」の語源を辿れば、形容詞の「ない」であるとし、文法的にはこれを「ありません」や「ございません」に置き換える理由はそれなりにあり、「とんでもありません」「とんでもございません」が文法的に誤りだということはないとしている[24]

仮に「とんでもない」が一語であれば、丁寧形は「とんでものうございます」のはずだが、それでは変なので、「とんでもない」は多少は分解を許す形であり、「とん」が元々名詞性の語だと仮定すれば「とんでもございません」はありうる形だと、敬語の専門家で東京大学教授(当時)の菊地康人は述べている[25]

文化庁国語課は、社会で広く使われてきた表現として、「とんでもございません」はこれからさらに定着していくと考えている[26]
おいしくいただけます[ソースを編集]

「いただく」を謙譲語とみなせば、聞き手の行動を謙譲語にしているこの表現は敬語として誤りとなるため、「おいしく召し上がれます」が正しいことになる。文化庁国語科による1997年の調査では、この表現が「気になる」と答えたのはわずか一割程度である。井上史雄は、この調査結果から、ここでの「いただく」はすでに謙譲語の意味を失って「たべる」の丁寧な言い方になったと判断した。さらにいえば、「たべる」自体も古くは謙譲語である。「いただく」が単に「たべる」の丁寧な言い方になったのは、「たべる」が謙譲語としての意味を失って単に「食う」の丁寧な言い方になった歴史の繰り返しである[27]
ご乗車できません・お書きできません[ソースを編集]

「乗車できません」を尊敬語にする場合「ご乗車になれません」が適切な形で、「ご乗車できません」は誤りである(「ご乗車いただけません」「ご乗車はできません」も正しい言い方である)。同様に、「書けません」を尊敬語にする場合「お書きになれません」が適切な形で、「お書きできません」は誤りである。「お(ご)......できる」という形だと、尊敬語ではなく謙譲語「お(ご)......する」の可能形になってしまう[28]。このような表現を一般的に広く使われているものと認めながらも、広く使われているからといってこれを「よし」としてしまうと、敬語の二つの大きな柱である尊敬語と謙譲語の区別ができなくなり、敬語が基本から壊れてしまうとして断固として認めない立場もある[29]
ご利用される[ソースを編集]

「ご利用される」は、その成り立ちを「ご利用+される」と考えることができ、その場合においては「ご利用される」は尊敬語としてはあり得る形だとされる。ただし「ご利用される」の「ご……さ」の部分が「ご……する」という謙譲語の形であり、これに「れる」という尊敬語が付いた「謙譲語+尊敬語」の組み合わせだと見られることなどから、現時点では「適切な敬語ではない」とする考え方が有力とされる。「ご利用になる」・「利用される」・「利用なさる」が適切とされる形である。
「?させていただく」の乱用[ソースを編集]

何らかの許可を得て恩恵を得るという「させていただく」のほかに、単に「いたす」の代用として「?させていただく」と言うことは批判的な意見が多い。元は近畿地方の表現であり(伝統的に関西ではへりくだった遠回しな表現を好む傾向がある)、関西ではそれほど「させていただく」の多用が問題視されていない[30]井上史雄は、このような表現が関西から東京へ広まったのは1950年代と考えている[31]尾藤克之は東洋経済オンラインのなかで、2009年に民主党政権が誕生して以降に急増したと解説。国会会議録検索システムで過去の議事録を精査した結果を根拠として挙げた[32]


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