ゆらぎの定理
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当時はNose-Hoover熱浴特有の性質と思われていたが、1998年にKurchanによってランジュバン方程式に従う系に[2]、2000年にJarzynskiによって一般のハミルトン系に[3]対して証明がなされ、極めて一般的に成り立つ定理であることが分かった。
ゆらぎの定理の意味

ゆらぎの定理は、状態変化の速さ(例えば、ピストンを動かす速さ)に対していかなる制限もなされていない。これは、操作が準静的のみ、あるいは線形応答領域のみのように制限されていたこれまでの定理と一線を画する部分である。また、この定理はエントロピーが増えるような「極めて典型的な状態変化」の発生確率と、エントロピーが減るような「極めてまれな状態変化」の発生確率との間に、上記のような極めてシンプルな関係が存在していることを主張している。ゆらぎの定理以前には、そのような「極めてまれな状態変化」の発生確率について有意義な関係式など存在しないだろうと思われていたので、この定理はそうした常識的な見方を覆したという意義も持っている。
定常過程のゆらぎの定理

多くの場合、ゆらぎの定理は上記のような「ある遷移過程における順過程と逆過程のエントロピー生成率の関係」を指すが、定常状態におけるエントロピー生成率の大偏差性質についての定理も「ゆらぎの定理」と呼ばれることがある。これらを区別するため、前者を「遷移過程のゆらぎの定理」、後者を「定常過程のゆらぎの定理」と呼ぶこともある。

定常過程のゆらぎの定理は以下で表される。 lim t → ∞ 1 t ln ⁡ P ( σ ¯ ( t ) = A ) P ( σ ¯ ( t ) = − A ) = A {\displaystyle \lim _{t\to \infty }{\frac {1}{t}}\ln {\frac {P({\bar {\sigma }}(t)=A)}{P({\bar {\sigma }}(t)=-A)}}=A}
脚注^ D. J. Evans, E. G. D. Cohen, and G. P. Morris, Phys. Rev. Lett. 71, 2401(1993)
^ J. Kurchan, J. Phys. A (Math. Gen.) 31, 3719(1998)
^ C. Jarzynski, J. Stat. Phys. 98, 77(2000)

参考文献

早川尚男『臨時別冊数理科学 SGCライブラリ 54 「非平衡統計力学」 2007年 03月号』サイエンス社、2007年。 

関連項目

ゆらぎ

Jarzynski等式

線形応答理論

非平衡熱力学

H定理


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