やすらぎの郷
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一部シーン[注 7]では、演者たちの安全のため背景を別撮りした合成撮影が用いられる。

また、主演の石坂と白川冴子役の浅丘ルリ子は元夫婦であり、1986年公開の映画『鹿鳴館』以来31年ぶりの共演が実現した。井深凉子役の野際陽子は放送期間中の6月13日に死去したため、本作が遺作となり、死去が公表された翌日(同月16日)の第55話において、番組冒頭に追悼のテロップが挿入され、本作の番組ホームページでも同様の文章が記載された。

後に同枠にて、本作の続編である『やすらぎの刻?道』の放送が決定し、2019年4月8日より放送が開始されたが、本作とは若干設定が異なる部分もある[注 8]
あらすじ

テレビ業界の黄金期に人気脚本家として活躍した菊村栄は、元女優で認知症を患った妻・律子を献身的に介護したが先立たれる。律子は更年期に入り物覚えが悪いことに悩んでいた時期、ある批評家の酷評が引き金で女優引退を余儀なくされ生き甲斐を失い認知症を発症したのだった。栄は彼女の介護に専念するため、脚本家としては事実上の断筆状態となり、同居しながら介護に一切関わろうとしない長男の嫁との間にも深刻な溝が生じていた。

律子を看取った後、仕事も生き甲斐も失って途方に暮れていたとき、以前に夫婦での入居をすすめられていた「やすらぎの郷」から再び誘いを受ける。テレビ業界では「都市伝説」のように語られていたその施設に半信半疑ながら入居を決めた栄は、そこでかつて一世を風靡した女優たちと再会を果たす。憧れの存在でもあり清楚な雰囲気で人気を博した九条摂子、国民的人気女優だった白川冴子、栄とは仕事の機会が多かった水谷マヤ、亡き律子を知る井深凉子など入居者たちの錚々たる顔ぶれに栄は驚愕する。

入居者たちは海沿いで風光明媚かつ広大な敷地の中に作られた施設で、元CAで行き届いたサービスを提供する松岡伸子らコンシェルジュと呼ばれる女性スタッフや、前科者で「更生中」の男性スタッフから大事に扱われ人生の終末期を謳歌していた。また、それぞれあだ名があり、摂子は「姫」、冴子は「お嬢」、逮捕歴もある個性派男優真野六郎は「マロ」、時代劇の当たり役に由来する「大納言」こと岩倉正臣など様々。栄は「今もって現役」意識の強い女優たちから自分たちを主役にした脚本の執筆依頼を談じ込まれ、現役当時のように「栄ちゃん」「菊村先生」と呼ばれるようになる。そして、夜は「ハッピーちゃん」の愛称で親しまれるバーテンダー財前ゆかりが切り盛りする「カサブランカ」で一杯やりながら噂話や昔話に花を咲かせた。

やがて栄は、施設を運営する「やすらぎ財団」の理事長で施設内の医師でもある名倉修平、加納の娘で総務理事の名倉みどり夫妻から信頼され内々に依頼を受けることになったり、女優たちの持つ意外な一面を知ったり、余計な指摘からちょっとした騒動に巻き込まれるなど、多忙かつ新鮮な毎日に翻弄されるのであった。
登場人物
「やすらぎの郷 La Strada」の入居者と関係者
菊村栄(きくむら さかえ)
演 -
石坂浩二本作の主人公。脚本家。年齢は70代後半[注 9]。戦時中[注 10]の疎開時期を除いて東京・杉並の善福寺で生まれ育ち、早稲田大学文学部を卒業後[注 11]に脚本家への道を歩み、テレビの黄金期には数多くのテレビドラマをヒットさせ紫綬褒章を受章するほどの活躍をした。愛煙家で、近年の禁煙ブームに辟易している。性格は表面的には温厚で人当たりが良い一方、頑固な面や執念深い面、猜疑心も強いなど、内面的にはかなり複雑な人物。「やすらぎの郷 La Strada」に入居するまでは、善福寺に一戸建てを構え、妻の律子、息子の一郎とその嫁の加奈子、孫の梢の5人で暮らしていた。数年前に律子が認知症になってからは、介護と両立させるために在宅での執筆に専念していたが、病状が進むにつれそれすら困難となり、ついには彼女を殺して自らも死のうと考えるまでに追い詰められ事実上の断筆状態となっていた。その矢先に「やすらぎの郷 La Strada」から誘いがあり、夫婦共々入居する決意を固めたが、律子の死により入居は一旦棚上げとなった。それから約半年が経過して心の整理ができたことを機に、単身での入居に踏み切る。家族は先述の妻と息子の一家の他に、死別した両親と兄がおり、この他に姉と妹と、何人かの甥や姪がいるが、この他に両親に兄弟がいるかどうかといった親族の全容については本人もはっきりと把握してはいない。「やすらぎの郷 La Strada」ではコテージの203号室に入居するが、かつてそこに入居しており、最後には自殺した栗山たかこの霊と思しき幽霊騒動の末、マヤの提案により部屋の模様替えを行い、たかこが使っていた家具の数々をマヤが手放したものに入れ替えた。律子の位牌と遺影は自宅から持ち込んだが、遺影については摂子らが所持していた昔の写真の中にあった、律子が一番輝いていた若い頃の水着姿のブロマイドを譲ってもらい、コテージに改めて飾っている[注 12]。冴子とマヤからは“栄(えい)ちゃん”の愛称で呼ばれ、他の人物からは主に「先生(または菊村先生)」と呼ばれる[注 13]。また、脚本家としては事実上の引退状態にあるものの、彼ら旧友の俳優陣からは自分のために脚本を書くよう個人的に頼まれている。「姫」こと摂子からある男性から受け取った遺品について相談され、博学ぶりを見せ「ただのデッサン画」を実は高価なものだと疑ったことで事態をややこしくしている。また話題の新人作家「濃野佐志美」が発表しようとしている作品が摂子と英吉にとって苦く辛い過去を暴くものだとして名倉夫妻から正体を含めて内々に相談され、食事に誘って凉子の説得にあたり「作家として人を傷つけるものは世に出すべきではない」と諭した。秀次の入居が決まった後で六郎と彼に関する話をする中で、「やすらぎの郷 La Strada」に彼と過去に関係を持った女性が何人もいるという話題になり、顔ぶれを説明される中でポロリと律子の名が出たのに反応するも、六郎から違うと言われる。しかし、当の六郎が栄の追及に対し慌てて否定するだけだったことや、後述の律子の過去における行動もあって彼女と秀次の間に何かがあったのではないかとの疑念を抱く。秀次は入所予定日に現れず、深夜になって突然栄のコテージを訪ね、律子の位牌に長々と手を合わせた後、無言のまま遺影に見入るなど不審な行動で栄をさらに悩ませ、不眠に悩んで[注 14]明け方に眠剤を飲んだ栄は起床点呼に遅れ「死んだ」と騒ぎになる。マヤや冴子たちに律子と秀次の関係をはぐらかされ、凉子に真相を聞いた。その中で、律子は秀次にヌードモデルに誘われたが結局何の関係もなかったこと、かつて起こした律子の自殺未遂の原因が凉子に対する罪悪感によるものであって栄が若い女優の安西直美に慕われたことが直接の原因でなかったことを知る[注 15]。秀次と律子の関係について誤解が解けるや、秀次がギックリ腰を起こしたことで密かに溜飲を下げていたが、病室から逃げ出した秀次にコテージに転がり込まれる。(秀次の項参照)そもそも嫌いな人物だというのに横柄な態度に出られるわ、ソファーで寝るハメに陥るわ、下の世話まで手伝わされるわと散々な目に遭うが、人間としての格の違いで強い態度に出られない。さらに警察に疑いを持たれ、実情は知らない凉子、冴子、マヤからは不本意にも秀次を匿う「真犯人」と勝手に憎まれていた上、ついにはこれに対して警察を呼んだ施設側への怒りから「他の入居者が頼りにならないから、入居者代表になって抗議して」と頼まれるが、その理由は自身が早稲田大卒のエリートと見なされた上に、「過去には刑事ドラマも手掛けたから、法律にも詳しいはず」という強引な理屈によるものだった[注 16]。郷内の人間が確執がある小春を避ける中彼女と接し、歓迎パーティーにも出席する。その後小春の自殺を受け、彼女の遺体の引き取り人を買って出て一時都会へ戻り、彼女の遠縁である村井や手伝いに来た中山と共に彼女の遺体を荼毘に付す。かつて共に仕事をしていた、「ちのやん」こと茅野大三郎(後述)と再会。彼とは、妻が先立った後のことを語り合っていた。葬儀の後、冴子から安西直美に瓜二つな彼女の孫娘、榊原アザミと会ったことを明かされた。その後アザミと連絡を取るべく、携帯電話のメールを四苦八苦しながら習得する。しのぶが郷を退去した同時期、アザミとついに対面するが彼女から直美が東日本大震災で亡くなったことを明かされた。彼女と駅で別れ、郷へ帰った後に彼女から「読んで下さい」と託された脚本の中に、自身がかつて直美へと宛てた手紙の一文が執筆されていたことを知り、衝撃を受ける。秋になり、摂子がかつて高井の半生を描いたノンフィクション作家と対面することになり、その場に立ち会うが触れられたくない過去のことを根掘り葉掘り聞かれ、深く傷ついた彼女の手を握っていた。その後、夜中に自身のコテージを訪ねてきた摂子から、千坂との京都での思い出話を聞いた後で彼女を送る。摂子の一件からしばらく後、中井が催していた「じじいバンド」のライブでかつて一緒に仕事をしたことがあるトランペッター兼作曲家の白鳥洋介と再会する。その前後頃、六郎から伸子の父と対面することについて相談された。彼と松岡が麻雀で勝負[注 17]することになり、その場に立ち会う。終った後、松岡から呼び出され今後を託された。六郎の麻雀勝負及び松岡との一部始終を、BAR「カサブランカ」で正臣に語り、閉店時間までその話で盛り上がり、財前から窘められ、慌てて水割りを2人で飲み干していた。その後、財前の性的暴行被害を知り、悩みつつも彼女が復帰したBAR「カサブランカ」へと行き、彼女に対してどう接するべきか戸惑っていたが、意外にも吹っ切れた様子だったことから、安堵していた。運転免許の高齢者講習のため、正臣たちと共に自動車教習所へと行き、筆記試験を受けるが四苦八苦。教習所敷地内での路上講習で、岡林谷江(後述)が運転する車の後部座席に同乗していたが、彼女が赤信号で直進していたため冷や冷やしていた。岡林が免許証を取り上げられて、憤りながら郷へ戻っていく様子を見て正臣と2人「免許証を取り上げて正解だった」とBAR「カサブランカ」で語っていた。その前後頃、摂子が「断捨離」をするようになったことで、彼女の付き人・夕子から相談を受ける。その直後にマヤから「断捨離を進めたのは自分だ」と打ち明けられた。翌日、冴子から「マヤが姫(摂子)を妬んで、トロフィー類を捨てさせたのでは?」と告げられ、直後にBAR「カサブランカ」でそのことを巡って2人が激しい言い争いを始め、正臣・六郎と共にオロオロしていた。その最中、夕子が飛び込んできて、摂子の異変を知らせ彼女と共に摂子の下へ向かうが、摂子が浜辺で歌を歌いながら着物を破り徘徊する様子を目の当たりにし、衝撃を受けた。その直後、彼女が倒れ名倉から「肺がんが脳へ転移していて、余命1ヶ月です」と告げられ、言葉を失う。翌日、彼女のお見舞いへ行ってすぐ名倉に、「苦しませないでやって下さい」と告げた。病室棟にいる摂子の看病で疲れ切った夕子が彼女の病状に気付けなかった自分を責めていたため、慰めていた。その前後頃、マヤがコテージを訪れ、自分だけ摂子の容態を知らされていなかったことで彼を責めたが、それと同時に断捨離を薦めたことを悔いている様子を見て、返す言葉もなかった。その直後、凉子から電話で呼び出され、「山家」で摂子の容態などについて語り合う。実はこの日、彼女は芥川賞選考会の受賞選考待ちだったため、驚き「行かなくていいのか」と問いただすと、彼女は「行かない」と拒否。結果は次点で受賞を逃したが、吹っ切れた表情の反面、本当は悔しかったのだろうと確信し、彼女を思いやる。さらに、凉子から「路子さんのコテージからこっそり、男が出てくるところを見ちゃったのよ」と明かされ、驚く。しかも相手が、郷の職員・中里[注 18]であることを知らされ、2度ビックリしていた。病室棟へ摂子のお見舞いに訪れるが、彼女が夢うつつで自身を千坂と勘違いしていることに戸惑うも、一緒にしりとりをしていたが、自身が「スマホ」と答え、目覚めた彼女からテレビ局内の夢を見ていたことを告げられた。第109話で、アザミと直美。そして律子が交互に現れアザミからはキスされたり、直美からは「私とアザミと、どちらが好き?」と訊かれるなどというハーレム状態の夢を見て、眠れずにバルコニーへと向かうも郷の入り江に人影があるのを目撃。岩陰から密かに様子を覗うと、郷の創立者・加納が摂子の車いすを押しながら、入り江を歩く姿を目撃した。摂子の病状を知り、医研センターからしのぶが舞い戻ってきたことに驚く。彼女が亡くなり、東京で営まれる本葬で遺影として使う写真を夕子・凉子と共に選んでいたが、女優として活躍していた頃の写真ではなく、最近郷で撮影された「シワだらけ」の生前の摂子の写真を選んだ。やすらぎ財団の芸術委員会を通じて、新聞社から「九条摂子さんへの追悼文を執筆して欲しい」と依頼を受け、書いていたが名倉から呼び出され、高井・白鳥と共に生前の摂子のことを振り返っていた。その場で、名倉からしのぶが置いていった詩集を見せられ、名倉から借りて読んでいたが、ある一文を読み、書いていた追悼文を捨て改めて書き始めていた。摂子の死去から10日経った頃、突如孫娘・梢が訪ねてきた。一郎が善福寺の自宅を売却したことを知らされショックを受ける[注 19]が、更に追い打ちをかけるように梢から「パートナーと一緒に暮らしている」と打ち明けられる。


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