もう誰も愛さない
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番組終了後、ライバル局の日本テレビが同様のコンセプトのテレビドラマとして『愛さずにいられない』を放映した。本家と同じく、吉田栄作主演・アベクカンパニー製作・ジェットコースター的展開であることからパクリ企画だと話題になった。当時の『読売新聞』の記事には、「同じスタッフ・コンセプトで正反対の内容の作品を」との目的で企画されたとあった。

当時の吉田栄作は、見た目通りの爽やかな役が多かったが、本作では「金に執着して犯罪に手を染めるというシリアスな役」を演じた[1]。過去に共演経験がある田中によると、吉田は元々ストイックな性格だが、本作の撮影期間中はかなりナーバスになっていた。田中によると、とあるシーンの地下駐車場では、人気俳優の吉田見たさに一般人が集まった。その撮影時に見物人はカメラには映らない場所にいたが、吉田の視界には入る状態だった。気が散って演技に集中できない吉田は思わず、「(見物人たちを)どかせぇ!」と叫んだという[1]

卓也が「ウオー!!」などと叫ぶシーンが話題となり[1]、そのまま当時の吉田栄作の代名詞となった。放送当時、JA共済など自身出演のCMでも多用されたことから、現在も過去の吉田栄作を振り返る時には頻繁に使用される。ただし、本作において吉田が劇中で叫ぶのは、第2話と第9話の2回のみである。吉本は「脚本に“叫ぶ”とは書きましたが、視聴者にとってあれほど印象的なシーンになるとは思っていなかった」と述懐している[1]。また、吉田は上記以外でも熱の籠もった演技をしたことから、作中で相手役を呼びかけるだけのシーンでも自然と「小百合!」「美幸!」という言い方になった[1]

伊藤かずえ扮する拝金主義の女弁護士・町田玲子役は、バブル時代の自立した女性の象徴として作られた[1]。本作の終盤では、伊藤のバラバラ死体が話題となったが、本人によると実際にゴミ袋に入って撮影した。この際、袋の口を縛るか開けるかで議論となり、両バージョンとも撮影されたが、本編で使われたのは開けた方だった[2][3]

田中美奈子はもともとコミカルな作品が好きで、それまでの出演作では明るい役が多かったため、本作の悪女役とはものすごくギャップがあり、演じるのが大変だった[1]。本作への出演をきっかけに悪女の役のイメージが付いたことから、その後も悪女役での出演が増えた。これについて本人は、「私の今を決定づけてしまった作品ですね。たまには、いい人をやらせてよとも思いますが(笑)」と語っている[4][1]

田中によると、辰巳は本作まで悪人役はあまり経験がなかったようで、米倉が指につけたシチューを小百合に高圧的に味見させるシーンでは、彼が緊張して何度もNGが出てしまった[1]

上記の通り、吉田、田中、山口はそれまでのイメージを覆す悪役を好演したことから、本作への出演を契機に役の幅を広げていった[1]
あらすじ

東都銀行の運転手、沢村卓也は父親の裁判費用に困っていたところ、窓口係の宮本小百合から一攫千金の詐欺計画を持ちかけられる。ターゲットは小百合の同僚、田代美幸。美幸と婚約者の牧村を暴漢に襲わせ、婚約を破談させたところで、傷心の美幸に卓也が接近する。美幸は愛する卓也に言われるまま口座横領事件を起こし、家族は一家心中、実家の地価10億円の土地を騙し取られる。卓也は罪の重さに苦しむが、小百合はふたたび暴漢を差向け、美幸が身籠った卓也の子を流産させる。美幸は暴漢を刺し殺し、殺人罪で女子刑務所に送られる。

ふたりの詐欺計画は、小百合の愛人である地上げ屋の米倉に見破られ、10億円を横取りされる。反撃のため、卓也は米倉のフィアンセ戸川亜紀を寝取り、父親の戸川商事会長を味方につける。小百合は女性弁護士の町田と共謀し、米倉の不動産会社を乗っ取る。卓也は亜紀の夫としてリゾート開発事業に専心しながら、小百合と愛し合うようになる。その頃、美幸は亡き父に恩があるという香港の実業家、王小龍(ワン・シャオロン)から卓也と小百合の手口を知らされ、「もう誰も愛さない」と復讐を誓う。

3年後、出所した美幸は王のグループの日本支部を率い、冷酷な手腕で卓也と小百合を追いつめていく。戸川家から追放された卓也は牧村に刺され、美幸の邸宅で車椅子生活を送る。美幸は憎しみを忘れて愛情を再燃させるが、卓也は従順なふりをしながらリハビリに励み、日本支部の裏金5億円をせしめて小百合のもとへ戻る。しかし、小百合の身体は末期の子宮頸がんに侵されており、懺悔の想いで出身の孤児院を守ろうとする。一方、愛憎うずまく美幸の身体には、ふたりめの卓也の子の命が宿っていた。

やがて、20年前の球界の「黒い霧事件」を巡る政財界の闇が明かされ、複雑な人間関係が浮かび上がる。王小龍を名乗る樫村はかつて戸川の部下として賭博事件に関与し、口封じのため消されかけ、美幸の父の助けで香港へ逃亡。そのとき日本に残した息子が卓也であり、卓也の育ての親の沢村元春は本当は小百合の父親であった。正体を明かした樫村は戸川から東京湾岸開発プロジェクトの利権を奪い取り、美幸を見限ったうえで米倉、町田、牧村、元春らの命を消していく。病床の小百合は美幸と和解し、卓也を託して息を引き取る。美幸は胎盤早期剥離による母体の危険を承知で、卓也の子を産もうとする。そして、卓也は樫村との宿命の決闘を終え、美幸を病院へ送ったあと、安らかな顔をして路傍に倒れる。
キャスト
主要人物
沢村 卓也(さわむら たくや)
演 -
吉田栄作出生名は「樫村 満(かしむら みつる)」。第9話で28歳の誕生日を迎える。物心がつく前に父、健三がトラブルに巻き込まれた末に海外へ逃亡。父が亡くなったと思い込んだ母が自殺した為に、母の兄である沢村元春に引き取られ、戸川の追及を逃れるため「沢村卓也」と改名された。横須賀市で育ち、中学卒業後に上京。成人後は東都銀行の支店長付きの運転手をしていたが、元春の再審請求の弁護費用を捻出するため、小百合のそそのかしに乗って詐欺計画に荷担する。根は優しく、悪事に手を染める罪悪感に苛まれる一方、貧しかった過去がトラウマ化している面もあり金のためならなりふり構わない。そして美幸や亜紀の女心を掌中におさめる。米倉の不動産会社を乗っ取り、戸川商事の子会社「S&Tカンパニー」と改名。社長に就任すると、リゾート開発ビジネスで辣腕を発揮。その野心的な仕事ぶりは、財界の大物である戸川をして一目を置かざるを得ないほどだったが、経営が思わしくなかった時に美幸の復讐を受け経営破綻。会社更生法の適用を受けようとするも、戸川に解任された上で亜紀とも離婚させられる。美幸の復讐に遭ってからは、ガソリンスタンドのアルバイト、観葉植物リース会社の社長、商社の不動産部門の部長など職を転々とする。牧村に刺されて右半身麻痺となっても、ひとり執念のリハビリを続けて復活する。小百合とは異母兄妹の疑念が発生するも真実が判明。本物の愛で結ばれ、小百合が病で命尽きるまで、彼女の出身の孤児院が売却されないよう奔走する。最後は実の父である王(樫村)と対決して撃ち殺すが、自身も深手を負い、産気づいた美幸をタクシーに乗せて病院へ送った後、生まれてくる我が子のことを想いながら絶命する。


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