めぞん一刻
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なお、作品中五代が悪友の坂本に「未亡人三本立て」を上映中の成人映画館に「お前の好きなやつ」と誘われ、怒る場面がある。

アニメ化に際して、中央・総武緩行線の列車が登場したこともある[注釈 4]。アニメ31話では「立川」、「津田沼」の行き先を出した電車が描かれており、92話では「西船橋」の方向幕を出した電車が描かれているが、その一方で原作の舞台を走る西武線の車両も登場しており、アニメ47話では、特急レッドアローと思しき電車が時計坂駅前の踏切を通過するシーンがある。

アニメでは「都内時計坂市時計坂町1-3-10」と書かれた手紙が54話、61話に登場した(劇場版アニメ『めぞん一刻 完結篇』においては「〒177 東京都練馬区時計坂三-三-九」と記されている)。

物語は、超人的な設定や、それまで作者が得意としていたSF色を一切排し、主人公の五代と管理人の二人の視点でアパートを舞台に繰り広げられる人情ドラマであり、転居するまで他の住人の影響を強く受けざるを得ないアパートの日常を描くという内容だった。その後、恋愛物語へと方向性を修正し作者が得意とするシチュエーション・コメディとなり、すれ違いと誤解の繰り返しが各話の基本構造となっている。当時はすでに固定電話(いわゆる黒電話)が普及していたが、五代は経済的余裕がなく電話を引けず、当初は管理人室の電話で取り次ぎを依頼し、すぐに共用ピンク電話)が備えられた。なお6号室、2号室にも電話が引かれているが、その電話が使用される場面は1回しかなかった。裕作と、そのガールフレンドのこずえと響子の三角関係においてこずえから五代宛てにかかってくる電話をめぐって起こるトラブルを楽しむ悪癖を持つ住人らが取り継ぐなど、携帯電話・スマートフォンが広く普及した現在ではまず考えられないシチュエーションから生ずる数々のすれ違いと誤解、住人たちの干渉などは、物語のための大きな舞台装置となっている[注釈 5]
登場人物の特徴

登場人物はそれぞれが際立った個性を持ち合わせている。「非常識のかたまり」とも言える一刻館の住人をはじめとして、アクの強いキャラクターたちが織り成す奇妙でおかしな行動の数々も、物語の重要な要素である。

住人の苗字には、居住する部屋番号と同じ数字が入っている。また、ヒロインの響子の姓は零を意味する「無」を含んでおり、旧姓は千草である。住人以外の三鷹瞬、七尾こずえ、八神いぶき、九条明日菜にも、苗字に数字が入っている。ただし作者いわく、住人の苗字と部屋番号を一致させる点は意識していたが、それ以外の登場人物に関しては偶然とのこと。ファンレターにて、音「無」を零と捉えると登場人物が数字でつながっていると指摘され、初めて気が付いたという(※2017年18号週刊少年サンデー、サンデー非科学研究所)。

際立った個性をもつ典型的なキャラクターを使い、回話ごとにキャラクターを軸に物語を展開させる手法はコメディの正統にあり、主要登場人物のキャラクターの系譜は他の高橋作品にもしばしば登場している。
作品のきっかけ

高橋が大学の卒業の目途が立って少しゆとりができて、前の『うる星やつら』の担当者が青年誌に転勤して声を掛けられ、アパートものがしたかったので当時住んでいた中野のアパートの裏にあった学生寮らしい建物のたたずまいと雰囲気のみを舞台に引いた。オリジナルキャラクターで、豊かではないが底辺でもない当時の人々の生活の人間模様で喜劇を描いてみた[19]。当初は恋愛作品の予定ではなかったという。初期には浪人の五代を一刻館の住人がからかうストーリーが多かったが次第に恋愛中心のストーリーになっていった。この下宿は1980年の春に取り壊され、連載を決めたときにはすでに建物はなかった[20]
登場人物
一刻館の住人
五代 裕作(ごだい ゆうさく)
声 -
二又一成渡辺久美子(幼少期)、櫻井孝宏(CRめぞん一刻版)本作の主人公[21][注釈 6]。一刻館5号室の住人。善良で心優しいが、押しが弱く優柔不断、トラブルに巻き込まれやすい。
概歴
血液型はA型[22]。両親は健在で故郷で定食屋を営んでいる。高校卒業後、浪人生として上京し、一刻館に入居する。当初は一刻館の非常識な他の入居者に馴染めず、頻繁に転居を決意しては断念する日々であったが、管理人として赴任した音無響子に一目惚れして住み続けるようになった。1年間の浪人生活を経て三流私立大学に合格。大学では教育学部に在籍し、響子の母校である高校で国語科教育実習を行ったが教職に就く意思はなく、就職活動は全て一般企業であった。大学を卒業するが、就職内定していた企業が倒産してしまったために就職浪人することになる。「しいの実保育園」でアルバイトを始め、その経験から保父(現在で言う保育士)を目指すようになる。なお、アニメでは就職浪人しておらず、原作とは大学4年目から1年ほどタイムラグが生じている。人員削減で保育園のアルバイトを解雇された後は、キャバレーにて宣伝部部員(呼び込み)や福利厚生部長(ホステス達の子供の世話係)として働く。2年近く専門学校に通って保育士免許を取得した後、欠員がでた「しいの実保育園」に保育士として正式に採用され、響子に求婚、結婚し翌春に長女・春香をもうける。
人物・エピソード
善良であるが意思が弱く流されやすい性格のため、要らぬ苦労を背負い込み、トラブルに巻き込まれることが多い。大学の合格発表[23] までフルネームで公表されておらず、響子は「五代浪人」が本名だと思っていた[注釈 7]。金魚すくいが得意で小さいころは「お祭り裕ちゃん」と呼ばれていた。高校時代はラグビー部に所属。五代の住む5号室は部屋の荷物が一番少ないという理由で一刻館の住人たちが集まる宴会場にされることが多く、試験勉強中などは、度々住人に邪魔されたりからかわれたりしていた。朱美と四谷曰く、五代は「一刻館の玩具」。また、響子が高校生時代の制服を着たことから始まったコスプレ宴会では、後述の花枝に促される形ながら高校時代の学ランを着て参加していた(原作第51話・アニメ第37話)。手先が器用で、大学1年秋に成り行き上所属した人形劇サークル(入部当初を除き全くサークルには顔を出さなかった)では人形を、キャバレーではホステスの子供達のために積み木等の玩具を作ったりもした。物語当初は喫煙する描写があるが、途中から無くなる。アニメ版では響子のために禁煙したと発言している。妄想癖があり、響子のことを考えるたびに妄想してはしばしば壁や電柱などに頭から突っ込んでいく。響子に対しては「管理人さん」と呼んだり「響子さん」と呼んだりしていたが、響子と結ばれてからは「管理人さん」とは呼ばなくなり、最終話で挙式後は「響子」と呼ぶようになった。作者の高橋留美子は五代がいつまでも童貞でいるのは「正しくない」という考えを持っていて、五代が独りで北海道旅行に行くエピソードで旅先で出会った大口小夏を初体験の相手にしようとしていたが、編集部から「五代君は純潔を貫かなければならない」と猛反対され、この構想を断念した[24]。その後、五代の初体験は、坂本のおごりでソープランドに連れて行かれた話で曖昧に描かれた。響子が五代に対して好きであることをなかなかはっきり言わなかったために五代は響子の愛情を確信できず、終盤(原作第149話から第150話)にて破局寸前のトラブルに見舞うところで、響子に「あなたしか抱きたくないんです」と告白し、ラブホテルに入ってベッドインしながらも前夫の惣一郎が気になって失敗してしまうが、その後(原作第152話)、管理人室で響子と改めて話をし、結ばれて一夜を共にした。その後も、響子の心奥深くに残っている「惣一郎」に対し素直に「正直言って妬ましい」と惣一郎の墓前で心中を吐露する(原作第160話)が、それすらも「響子の一部」として捉え丸ごと受け止める決意をする。同姓ということから、鹿児島県薩摩川内市の酒造メーカー「山元酒造」が製造する焼酎「さつま五代」(由来は所在地の「五代町」から)の広告に絵が使用されていたことがある[25]
音無 響子(おとなし きょうこ)
声 -
島本須美ゆきのさつき(CRめぞん一刻版)本作のヒロイン[注釈 6]。原作第133話で「秋には27になります」と響子本人が語っている。若くて美人、スタイル抜群。1980年の秋、本作の舞台となるアパート一刻館」に住み込みの管理人として赴任する。その美貌に五代は一目で虜になり、常に気になるマドンナ的な存在となる。後に未亡人であり、五代より2歳年上であることが分かる。通称「管理人さん」。キャラクターのモデルは女優夏目雅子[26]。また、原作者の高橋留美子は性格が自身に一番近いキャラクターとして音無響子を挙げている[要出典]。音が無いのに響く子というのはサイモンとガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」と同じ構造の矛盾語法であり、本人の矛盾した行動を象徴している[独自研究?]。
概歴
女子高である私立桜ヶ丘高校(アニメ53話より)の出身で、テニス部に所属していた。講師として赴任してきた音無惣一郎と出会い、高校卒業後の1979年親の猛反対を押し切って惣一郎と結婚する。しかし、結婚して半年足らずの翌年1980年の春に惣一郎は亡くなってしまう。失意のどん底にあった響子だが、惣一郎の父・音無老人の取り計らいでアパート「一刻館」に住み込みの管理人としてやってくる。拾ってきたペットの犬も当初は「シロ」の名で呼ばれていたが、夫の死後「惣一郎さん」という名前で接している。音無老人や母親は響子に再婚を勧めて(実父は再婚に反対)いたが、響子は気持ちの整理が付けられず、音無の姓を名乗り続けていた。「非常識のかたまり」の一刻館の住民や周囲の人々との触れあいや生活は、少しずつ響子に笑顔を取り戻させ、失意と喪失感に覆われていた心を和らげていった。


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