はやぶさ_(探査機)
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注釈^ はやぶさの探査情報を基にした、小惑星イトカワの解析結果とその論文がアメリカ科学論文誌サイエンス』2006年6月2日号に特集として掲載(日本宇宙研究・開発では初)された。アメリカの International Space Development Conference (ISDC 2006) において Space Pioneer Award として米国宇宙協会から表彰を受けている[1][2]
^ NASAの小型探査ロボットを運んで行って小惑星表面を移動しながら探査を行う計画も存在していた(MUSES-CNの項を参照)。
^ トラブルとは、姿勢制御装置の故障や化学エンジンの燃料漏れによる全損、姿勢の乱れ、電池切れ、通信途絶、イオンエンジンの停止など数々のアクシデントを指す。
^ 当初の計画通りなら、再突入の約10時間前に月軌道程度の距離で試料カプセルを分離した後[7]、はやぶさ本体は突入軌道から離脱して別の目標へ向かうことも可能だった。しかし化学スラスタが使えなくなって急激な軌道変更が不可能になり、また精密な姿勢制御に困難を伴うようになったことで、カプセルが市街地に落下する心配も生じた。このため、地球になるべく近付いてからカプセルを切り離す計画に変更され、結果として当初のような延長ミッションは断念された。その代わり、2009年には本体の大気圏再突入の際のデータを、地球に衝突する小惑星の軌道予測のためのシステム開発に役立てるという新たなミッションが加えられた。
^ 探査機との通信は臼田宇宙空間観測所の64mパラボラアンテナを用いて行われたが、2009年11月より64mアンテナが改修工事に入ったため、工事終了までは内之浦の34mアンテナが使われた。
^ 「はやぶさ」は温度管理を内蔵ヒーターで行っていた。内蔵・外装の機器類は太陽光線などを遮蔽することで基本的には低温環境にしておき、電源系からの電力を使ったヒーターで適温まで暖める方式が採用されていた。
^ 他の大型宇宙機などでは冗長性を持たせるために複数台の制御装置を搭載することが珍しくないが、はやぶさでは軽量化が優先されてITCUは1台だけ搭載された。ただ、内部的には3つのCPUの出力をASICによる多数決回路で不良判定することで、ある程度の信頼性を確保している。
^ 制御装置は汎用自律化機能を備え、最大32ある条件テーブルに従って外部からの指令を待たずに自律的に動作を行うことが可能になっている。また常時IESを監視していて、アキュムレータ圧力、プラズマ点火状態、直流電源の電圧/電流値、グリッドの短絡などを見張っていて、動作不良と判断すると安全なモードへ移行するようになっていた。
^ HGAは、火星探査機「のぞみ」のものと同等品であるが、地球公転軌道より内側にあたるイトカワ公転軌道近日点での熱環境を考慮して白色に塗装されている点が異なる。
^ イトカワとのランデブーでは、はやぶさから見て地球と太陽がほぼ20度程度の視野範囲内に位置していたため、地球方向へ高い精度でHGAを向けた姿勢でz軸での回転運動を行っても、太陽電池パネルはおおむね正しく太陽へ向けることが可能であった。
^ 通信途絶からの回復後には32 bpsで通信を行った。
^ MGAを用いた通信が不可能で、LGAを用いざるをえない状況というのは、機体が安定せずにランダム方向にスピンしているか、良くても太陽方向に太陽電池パネル面を向けてZ軸周りにスピンしている「セーフホールドモード」にあるという場合が想定された。LGAは8 bpsというきわめて低速度通信しか行えず、遠距離によって信号波にタイムラグがあり、さらに自転しているために一定周期で通信が遮蔽されるという状況でも、最低限の質問を短いコマンドで問い合わせて、その回答を"YES"/"NO"で得るという「1ビット通信」機能を用意していた。燃料タンクからの漏洩によって姿勢制御を失い漂流したが、この機能によって通信を回復させた。
^ 一般的な人工衛星などでは太陽電池パネルは「I形」になるような一直線に配置されることが多いが、「はやぶさ」ではz軸方向での回転モーメントが最大になるように「H形」に配置されている。仮にトラブルによって姿勢制御を失った場合、宇宙機は予測不可能な向きに回転してしまうことが考えられる。そのような時、燃料タンク等の液体などが動揺することで3軸の回転成分同士でエネルギーを交換し合い、長い時間が経てば、3軸の中でも最大モーメントの軸にだけ回転運動が収斂されることが知られている。太陽電池パネルを「H形」になるよう配置することで、z軸方向にだけ回転するようになり、太陽を公転する「はやぶさ」はやがて太陽方向にセルを向け続けることで発電量も確保し、再起動が可能になると考えられていた。そして、実際に長期間の通信途絶後に再び制御を取り戻すことができた。また「H形」であれば小惑星「イトカワ」へのタッチダウン時に接触する可能性を少なくできると考えられた。
^ 燃料漏洩によって漂流した後、4セルは過放電で使用不能になっていたが、生き残っていた7セルはある程度充電さえ行われていた。本来は過充電防止のためのバイパス回路が、生き残った7セルに対して微弱ながら発電していた太陽電池からの電力を供給し充電していたので、偶然にも7セルだけは過放電による機能喪失を免れた。
^ リアクションホイールの2基が故障した後は、約+1000 - +5000 rpmだった回転数を+300 - +2000 rpmに制限したため、各運動量の保存量が減少しアンローディングの回数が増えてRCSの推進剤を予定より早く使い切ったが、帰路ではμ10イオンエンジンのジンバルを傾けることで推力を機体重心からずらし、この噴射によってz軸まわりのトルクを発生させてリアクションホイールのアンローディングを行った。
^ 炭素繊維強化炭素複合材料とは、炭素繊維強化プラスチックを熱処理し、母材のプラスチックを炭化させた複合材料のこと。これはモリブデンのような金属板と異なり運転時の高温で膨張することがなく、穴の位置が変化する心配がないが、運転によって内部の繊維が「ウィスカー」と呼ばれるひげとなって表面に出てくると、短絡による放電が起きる。直流電源は短絡によっても数秒間は耐えられる設計になっていた。スクリーン - アクセル間の短絡時には、直流電源のコンデンサバンクからの大電流によってウィスカーが焼き切られることが期待される。アクセル - ディセル間の短絡は300Vと電圧が低いため、コンデンサバンクによっても焼き切れるかそれほど期待できないが、ディセルの電圧がアクセルと同電位になっても加速性能そのものには影響しない。また、リレーボックスの開閉操作は、通常時は直流電源を停止してから行うが、ウィスカーを焼き切るために電源を入れたまま接続系統を切り替えることも行えるようになっていた。
^ 中和器にかけられた電圧は、当初は-30Vほどの電圧であったが、劣化によって機能が落ちたため劣化が加速することを承知で制限値である-50Vへと変更された。劣化が進んだ最終段階では制限を外したさらに高電圧でも運転された。劣化の原因については不明である。
^ イオン生成チャンバーと中和器のキセノンガス供給系が各組ごとで共通だったので、イオン・エンジンのイオン源Bと中和器Aを「クロス運転」した場合には、本来は無用なイオン源Aと中和器Bにもガスが供給された。
^ 宇宙機での推進剤タンクの流量制御にはマスフロー・コントローラを使用するのが一般的であったが、「はやぶさ」ではアキュムレータを用いた。マスフロー・コントローラは故障が多く信頼性に欠けるが、冗長性のために2台搭載するのは重量過大と判断された。アキュムレータを用いたことで流量や圧力の安定性や精度は低下するが、確実な動作の方を選んだ。
^ 仮にマスフロー・コントローラを採用していれば、制御域が10倍程度と狭いマスフロー・コントローラでは、姿勢制御装置が機能を失った時に、高圧ガスをそのまま供給してイオン・エンジンから噴射することはできなかった可能性が高い。
^ バルブ類は、高圧系は70気圧にも耐えられる高価なものを、低圧系はより低い耐圧設計の低コストなものが採用されるのが一般的であったが、「はやぶさ」では低圧系も70気圧に耐え得るものを採用していた。これは高圧側バルブの故障や操作ミスなどでも低圧側が耐えられるように配慮したものだったが、このことが、リアクション・ホイールや噴射式の姿勢制御装置が機能を失った時に、キセノンの高圧ガスをそのままイオン・エンジンから噴射することで姿勢を保つという緊急手段を可能にした。
^ 中和器から電子を放出する適正な電流値は、イオン生成後にグリッドから放出されるキセノン・イオンの正電荷量を打ち消すだけの電流値が倍率「1.0」として標準になっていたが、2台の中和器で3台のイオン源を中和する倍率「1.5」や、1台の中和器で2台のイオン源を中和する倍率「2.0」といった運転モードが用意されていた。実際には、中和器の劣化が早く、このような倍率を用いることはなかった。
^ リレーボックスが行える3台の直流電源からの出力切り替えは「IPPU 1:スラスタA/スラスタB, IPPU 2:スラスタB/スラスタC, IPPU 3:スラスタC/スラスタD」であった。
^ 元々±y面方向にはあまり軌道制御が必要ない事や重量削減のためもあるが、±y面の方向には太陽電池パネルがあり、RCSの噴射によって裏面の放熱板が汚れる恐れや推力方向がズレることもあって、±y面にはRCSを付けなかった。どうしても±y軸方向に動かす必要がある場合には、まずz軸まわりに90度回転させてからx軸方向のスラスタで対応した。
^ 酸化剤の四酸化二窒素は-30℃以下にならないと凍らないが、燃料であるヒドラジンは2℃以下で凍るため、この特性によって構体内に凍結した燃料がいつまでも残ってしまい、時折、機体に予期せぬ運動などを起こして悪影響を与えたと考えられている。
^ リアクションホイールは、2005年7月30日にz軸が、同年10月2日にはy軸が故障した。
^ 「ニア・シューメーカー」や「ディープインパクト」といった宇宙機でも採用実績がある、米イサコ (Ithaco) 社(現グッドリッチ社)製"Type-A"リアクションホイールが使用されたが、精密な回転部品を含むこの製品は液体燃料ロケットによる加速度には耐える設計であったが、「はやぶさ」を打ち上げる固体燃料ロケット「M-Vロケット」の発射時の振動や衝撃に耐え得るように元々出来ていなかった。
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