におい
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悪臭や刺激臭は、腐敗や有害物質などの危険性を人間に知らせることも多い。近現代に開発された化学兵器には、無色無臭でありながら致死性が高いものもある。

一方で人間は、文化圏や嗜好が異なる人々が悪臭と感じるにおいを放つ発酵食品などを好んで食べたり[11]、好奇心から悪臭を嗅いでみたりすることもある。後者の例としては、アメリカ合衆国で開催されている「最も臭いスニーカーコンテスト」[12]ロッテン・スニーカー・コンテスト)があるほか、東京の池袋PARCOが2018年1?2月、シュールストレミングのにおいなどを嗅げる「におい展」を開催した[13]スウェーデン南部のマルメでは2018年に期間限定で「不快な食べ物博物館」が開設され、シュールストレミングのほかドリアンなど臭いが強い食品も展示された[14]

なお食品などで、においの強さを示す指標としては「アラバスター単位」(AU)が使われる。
においと人の関係
においと感情のつながりの強さ

医学領域における様々な研究成果により、匂いというのは他の感覚とは異なり、大脳辺縁系に直接届いていることが明らかになった。その大脳辺縁系は「情動系」とも呼ばれており、匂いは人間本能や、特に感情と結びついた記憶と密接な関係があると指摘されている。つまり匂いは、最も感情を刺激する感覚なのだとされているのである[15]
におい感受性の男女差

女性は、男性よりも脳の嗅覚野が発達しているので、匂いに敏感に反応する[16]

女性は男性以上に においに関心を寄せるが、その理由の一つに、感覚の男女差がある[17]。女性は男性よりも嗅覚が敏感だと言われている[17]。一つの要因は、女性というのは月経周期内の時期などによって、嗅覚が敏感になる時期があることである[17]。なお排卵期には「成人男性に関係するようなにおい」や「不快なにおい」に対する嗅覚感受性が低下するという[17]月経期には、反対に、「不快なにおい」に敏感になる女性が多いと言われている[17]

脳の発達には男女差があり、嗅覚を司るのは「嗅覚野」で、そこは大脳辺縁系と関係が強いとされている。その大脳辺縁系は、記憶を司る海馬や感情を司る扁桃体があり、嗅覚的感知に大きな影響を与えている[17]。脳がそういう構造になっているので、匂いと記憶、また、匂いと感情 は結びつきやすいのである。そして、女性はにおいを嗅いだ時に、同時にそれに関連する記憶まで呼び覚ましやすいのである[17]
生理的な影響

においは人に生理的な影響を与えることがある。例えば、ジャスミンの匂い(香り)は心拍のパワースペクトルのLF成分を有意に増大させる、との研究もある。これはジャスミンの香りが副交感神経の活動を増大させ(=交感神経を抑制し)、精神性の負荷を減少させることを示唆している[15]

アロマテラピー中世にその原型が生まれ、20世紀により具体的に提唱された。主として花や木に由来する芳香成分の香りを活用し、ストレス軽減など心身の健康維持に役立つ、ともされる技術である。

視覚的イメージ(視覚内容)、(聴覚内容)、(味覚内容)などに比べると、匂い(嗅覚内容)というのは、論じられたり教育されたりする機会は比較的少ない。また、近年の日本では匂いが無いまたはや少ないことが良しとされる傾向があり、家庭用の消臭剤や消臭グッズ、微香性の化粧品・整髪料などを買う消費者も多い。このような「匂いを避ける」という現象の背後には、《匂いの抑圧》があり、さらにその背後には《本能の抑圧》や《の抑圧》が潜んでいる、と鈴木隆は述べた[18][19]

現代では、様々な業種の企業が、においをイメージアップや販売促進に活用しようとしている。こうしたことは10時間以上も香りを長続きさせる最新のにおい噴霧器が開発されたり、「禁煙を手助けする効果がある」「記憶力を高める効果がある」とされる《機能性アロマ》が開発されたりしたことによる。ただし、人工的な香りが氾濫することによって、「日本人がもつ繊細な《香り文化》が失われつつあるのではないか」「自然の、かすかなにおいを教える必要があるのではないか」という専門家の指摘もあるという[20]
においの利用

食品や飲料では、素材や調味料、香辛料およびそれらを使った調理・醸造などにより生じる良い匂いや香りを楽しむ。近現代の加工食品・飲料では香料を加えることも多い。

エタンチオールなどの一部の有機硫黄化合物は低濃度で十分に強い刺激臭を持つ。これを利用して微量のガスが漏れてもすぐわかるようLPG(液化石油ガス)などに付臭剤として添加されることがある。

犯罪捜査においては、人間よりはるかに鋭敏な嗅覚を持つ警察犬を使って、犯人や被害者、遺留品の追跡・捜索を行う。
においの検知・分析と再現

各種の臭気計に加えて、においの種類や強さを可視化するカメラが豊橋技術科学大学浜松ホトニクスによって開発された[21]

また、人間の嗅覚が感じ取れるにおいの構成物質を分析して、「要素臭」の組み合わせや合成をすることにより、バーチャル・リアリティ(VR)やゲームを含む映像や疑似体験と連動させて、においを遠隔地でも再現する技術も実用化されつつある[22][23]
においの制御
「部屋干し」のにおい

洗濯物を室内に干す「部屋干し」をした時、その臭いが問題となる。これは洗濯物が乾燥するまでの長時間、衣類が湿っていることによって雑菌が繁殖し、それによって臭いが発生しているからである[24]

これを防ぐ方法はいくつかある。一つは、部屋干しグッズ等を使用し、[25]できる限り短時間で乾かすという方法である[24]。他にも、雑菌を極力少ない状態にしておくことも大切である[24]。また、「部屋干し専用」の洗剤(抗菌作用のある薬剤が入っているもの)を使う方法、また通常の洗濯洗剤に加えて衣類用漂白剤(漂白剤は滅菌剤や除菌剤としても作用する)を入れる[24]などの方法で、菌の繁殖を最低限にすることが可能である[24]。ヨーロッパでは日本のように「部屋干し」の匂いで悩んでいる人々は少ない。というのは、フランスやドイツなどで販売されている洗濯機の多くが(日本の家電メーカー製の洗濯機とは大いに異なって)洗濯時のお湯の温度を設定する機能がついているものが多く、(電気やガスなどで)きれいな水道水をお湯に温めて設定された温度にしつつ洗濯し、温度としては60℃以上で洗うと洗濯物に潜む雑菌をほぼ全部殺してしまえることがヨーロッパの家庭では常識のように知られており、(洗濯物の状況を判断したり、必要に応じて)そうした温度に設定して洗う習慣がある。そのようにして洗った後はたとえ部屋干ししても(そもそも、干した洗濯物の中に雑菌が少ないので)あまり変な臭いがせず、爽やかに仕上るようになっている。
デジタル制御

ICT分野では映像や音と異なり発生や制御が困難とされてきたが、1ミリ秒以下の時間幅でパルス状に匂いを発生させる嗅覚ディスプレイの研究開発が行われている[26]
博物館

香りをテーマとした展示を行う「磐田市香りの博物館」(静岡県)[27]や「大分香りの博物館」(別府市[28]がある。

Museum of the Land of Frankincense(英語版) - オマーンにある乳香の博物館。
文化

香道

香料

香辛料

アロマアロマテラピー

香水

パピエダルメニイ(英語版)(アルメニアペーパー) ‐アルメニアの家庭でエゴノキ属の植物を燃やすのをヒントにフランスで作られた樹脂を浸透させた紙。


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