原作はジョン・モンク・サウンダース(ちなみに彼の妻はフェイ・レイであった)。米国陸軍航空隊航空学校の出身で戦後は新聞記者を経て作家になり、パラマウントに出入りするうちにこの原作が採用された。以後、航空映画の原作者(『空行かば』(1928)、『暁の偵察』(1930)、『最後の偵察』(1931)など)として活躍するが会社がこの原作を買ったのは空中戦をはじめとして大々的にスクリーン上に展開するという企画にふさわしい内容だったからだと言われている。
監督にはパラマウントで都会的な秀作の小品を連発していたウィリアム・A・ウェルマンが起用された。他に航空関係の監督が同社にいなかったためだと言われている。ウェルマンは第一次世界大戦のヨーロッパで米国の志願者だけで編成されたラファイエット空軍に参加し、活躍した経歴を持っていたのである。物語の骨子だけ見るとこれは青春もののパターンで戦争が生み出す悲劇の一端に触れているものの反戦がテーマとはいかず、甘いロマンスに重点が置かれている。特に地上の戦闘シーンや空中撮影など、同じ第1次世界大戦を扱った後の『突撃』(1957)や『ロング・エンゲージメント』(2005)顔負けの迫力でさえある。それとは対照的にクララ・ボウが登場する場面は戦場シーンさえもコメディになってしまっている。
パウエル役のチャールズ・ロジャーズとデヴィッド役のリチャード・アーレン(彼自身も第一次世界大戦中実戦パイロットであった)は当時のパラマウントの2枚目役者であった。またボウは当時のいわゆるモダン・ガールで売り出し、後の『あれ』(1927)では"it"ガールと呼ばれる位、セクシュアルで一大センセーショナルを生み出したパラマウントを代表する女優の1人になった。またエキストラ出身のゲイリー・クーパーが見習い飛行士の1人として1カットだが非常に印象的な場面で登場し、この作品の後に航空映画で大いに売り出すことになる。 米国に住む若者ジャック・パウエル(チャールズ・ロジャーズ)は、隣に住む娘メアリー・プレストン(クララ・ボウ)に愛されているのに都会から来たシルヴィア・ルイス(ジョビナ・ラルストン)にのぼせる。しかし、シルヴィアは有力者の息子デヴィッド・アームストロング(リチャード・アーレン)と愛し合っている。 やがて、第一次世界大戦に米国が参戦するやジャックとデヴィッドは航空隊に志願、ジャックは出発の時シルヴィアに会い彼女がデヴィッドに渡そうとする写真を自分にくれるものと勘違いして持ってきてしまう。見習いパイロットとして猛練習を受けた後、2人はフランス戦線に送られ暁の偵察で遭遇した敵機を撃破して初陣の功名をたて、名コンビとうたわれるようになる。巨大なゴーダ爆撃機を襲撃したときはデヴィッドが護衛の戦闘機を引きつけている間にジャックがゴーダ爆撃機に迫るというチームプレーを成功させフランス政府から勲章を授与され、休暇を得てパリで遊ぶ。 パリで2人は酒場で羽目を外してジャックは街の女・セレスト(アルレット・マルシェル)に引っかかりそうになったりMPに捕まりかけたりするが、女子部隊の運転手としてパリへ来ていたメアリーに連れ出される。 休暇を終えた2人は、連合軍の総攻撃に先立って敵の偵察用大型気球2個を打ち落とす任務が与えられる。しかし出発の前、シルヴィアの写真がきっかけでジャックはデヴィットが彼女に恋をしていると誤解し、すっかり興奮したため目標の気球に向かう途中、敵の戦闘機4機に気づかずデヴィッドはひとりでこの4機と渡り合い2機を撃墜するが自身も被弾して河へ不時着する。2個の大型気球を破壊したジャックはデヴィッドの機影が見当たらず愕然となり、夜もすがら彼の帰りを待つがデヴィッドは遂に現れない。 復讐の一念に燃えるジャックは暁の総攻撃開始と共に飛び立ち、阿修羅のごとく猛然と暴れ回る。一方、片腕に負傷しただけのデヴィッドは敵の陣地を彷徨ううちに敵の飛行場を発見し1機を奪って帰還の途につく。しかしジャックの機と遭遇し敵機と間違えられ、猛攻を受け瀕死の重傷を負い、親友の腕の中で死んでいく。 こうして凱旋帰国の日、真っ先にジャックはデヴィッドの両親を訪れるが彼らの心痛のため髪の毛には白いものが混じっている。そして、ようやくメアリーの愛を悟った彼はやさしく出迎えた彼女と抱き合うのであった。 この映画での空中戦のシーンをはじめ飛行場や戦場の場面はテキサス州サンアントニオ、カリフォルニア州クリシー飛行場など4カ所で撮影された。撮影監督は第一次世界大戦当時のパイロットで航空撮影に豊かな経験を持つハリー・ペリーで、当時高価だった21台のカメラを動員し迫力あふれる空中戦場面を撮影した。その激闘の場面は敵と味方の飛行機の動きを設計するのに苦労し実際に死傷者まで出したと伝えられているが、ウェルマンの実戦経験がここで生かされた。また役者はスタントマン抜きで飛行機を実際に始動させ、カメラも役者自身で回したという。こうして撮影された場面には空中の戦闘の様々な形が並べられており、やがて来るトーキー映画の時代に入ってますます盛んになる空中戦映画の模範となり、そして『スター・ウォーズ』シリーズまで営々脈々と受け継がれている。 地上戦の撮影にも様々な苦労があったと伝えられる。その中でも最大の見せ場の1つになるサンミエールの激戦はサンアントニオで撮影されたが視野を広げるため高さ75フィート(約20m)の足場を配置し、その上に15台のカメラを設置してウェルマンはその足場の1つから指示したという。
あらすじ
デヴィッド(リチャード・アーレン)
パウエル(チャールズ・ロジャーズ)
メアリー(クララ・ボウ)
エピソード