本船の場合、ライザーは内径533mm、1本の長さは27メートル、重量は約27トンである。水深2,500mでの掘削では、約90本をつなぐことになる。また、その内部に通じるドリル・パイプは直径140mm、長さ9.5メートルの高強度鋼管であり、先端部にはダイヤモンドなどの掘削刃がついたドリル・ビットが付けられている。地底下7,500メートルまで掘削する能力を備えている。これは世界最高の掘削能力であり、マントル物質や巨大地震発生域の試料を採取することができる。ライザーの先端部(海底面)には防噴装置(BOP)が取り付けられており、石油やガスが噴出した場合にも掘削孔内に留めることができる[1]。 船上では単に深海底掘削を行うだけではなく、掘削試料を用いた分析を行うための研究区画も備えられている。研究区画は居住区後方に配されており、上階から順に、試料の分割を行う「ラボ・ルーフデッキ」、一次的な分析を行う「コア・プロセッシングデッキ」、さらに高度な分析を行う「ラボ・ストリートデッキ」、それらを管理する「ラボ・マネージメントデッキ」の全4デッキに分かれており、総床面積は約2,300m2。掘削・採取されたコアから生じる有毒ガス(硫化水素や炭化水素)に対処するための安全措置が講じられており、陰圧管理とされている[2]。 コアの分析のため、X線コンピュータ断層撮影(CT)装置を搭載するが、これは医療用と同じものである。またサンプルの地磁気測定のため、船舶では世界初となる磁気シールド・ルームを備えている。ケイ素鋼板やコバルト系アモルフェス鋼板などによる4層の磁気シールドが施されており、地球磁場の100分の1、3.5ミリガウス以下に保たれている。また、船体動揺などの加速度のために、船上でサンプルの正確な質量を測定するのは困難とされていたが、本船では質量原器との比較補正によって正確な質量測定を可能にする計量器を開発し、搭載している[2]。
船上研究区画
主要運用史
2001年4月25日 - 起工
2002年1月18日 - 進水式、船名決定。なお支綱の切断は紀宮清子内親王によって行われた[9]。
2003年4月22日 - 海上公式試運転
2004年12月3日 - 海上公式試運転
2005年7月29日 - 竣工
2006年
8月から10月 - 下北半島東方沖掘削試験
11月から2007年2月 - ケニア沖(水深約2,200 m、海底下約2,700 m)及び、オーストラリア北西沖(水深約500 m、海底下約3,700 mと水深約1,000 m、海底下約2,200 m)掘削。
2007年
9月から2008年2月 - 統合国際深海掘削計画(IODP)による最初の研究航海となる「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(ステージ1)を実施、8箇所でコアを採集。
2009年
3月 - 日本マントル・クエスト株式会社に運用業務委託し運用開始。
5月から7月、統合国際深海掘削計画(IODP)「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(南海掘削(ステージ2)を実施、3箇所でコアを採集。
2010年
7月から2011年1月、統合国際深海掘削計画(IODP)「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(南海掘削(ステージ3)を実施、8月に紀伊半島沖熊野灘でケーシングパイプ、ウェルヘッドランニングツールの一部、ドリルパイプを海中脱落させ遺失。
2011年
3月11日 - 展示のため寄港していた八戸港で東日本大震災に被災。沖への退避は間に合わず、見学中の小学生を乗せたまま、渦巻く港内において操船のみで大津波を乗り切る[10]。
2012年
2012年2月12日から3月下旬、Non-IODP航海、第1回メタンハイドレート海洋産出試験事前掘削(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
2012年10月3日から2013年1月13日、統合国際深海掘削計画(IODP)第338次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画」(南海掘削(ステージ3)を実施[11]。2012年11月18日 低気圧による悪天候によりライザーパイプ上部の機器を損傷し、11月27日 新宮港
2013年
2013年4月14日から2013年7月22日、新潟県佐渡南西沖における「上越海丘」基礎試錐(JX日鉱日石開発株式会社)
2013年9月13日から2014年1月31日、統合国際深海掘削計画(IODP)第348次研究航海 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」ステージ3の実施[13][14]。
2014年
3月26日から、下北半島東部における海上ボーリング調査の実施[15]。
6月25日から、沖縄近海で「沖縄トラフ熱水性堆積物掘削」の実施について[16]。
2015年
2月、インド共和国沿岸海域においてメタンハイドレート掘削調査[17]。
8月、調査を終了して帰国[18]。
9月 定期点検実施。
2016年
1月16日 静岡県御前崎沖で実施していた定期検査工事完了後の動作確認試験中に、定期検査において換装した掘削制御システムの動作確認中に、御前崎沖南南東約51.8km付近(水深約3,600m)で海底掘削用のドリルパイプが破断し海中落下させ、ドリルパイプを遺失した[19][20]。
2018年
10月10日、紀伊半島沖のユーラシアプレート・フィリピン海プレート境界掘削調査のため清水港(静岡県)を出航した[21]。