そろばん
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例えば天(梁の上側)に1つの珠、地(梁の下側)に4つの珠を配置したそろばんであれば天1顆、地4顆(天一地四)の形式となる[23]。天の1珠は梁に付くと5を表し、状態で0または5を表すため五珠(ごだま)、地の4珠は梁に付くと1つが1を表し、状態で0から4までを表すため一珠(いちだま)という。

枠が大きく珠の形状が丸い中国の算盤(さんばん)では天2顆・地5顆(天二地五)のそろばんが用いられていた。このそろばんは普通の置き方で五珠で0、5または10、一珠で0から5まで、1桁では0から15まで表せる。さらに上の五珠を半分下ろし、下の五珠を完全に下ろすという特殊な置き方(「懸珠」と呼ばれる)は15を表すので、1桁で最高20まで置けることになる。現代の中国で算盤がいまだに用いられることがあるのは、尺貫法が民間に根強く残っているからである。中国で発達した尺貫法では度量衡の重さの単位で1が16と定められていたため、十六進数の計算をする必要があったのである。

日本では十六進数の計算は必要ではなかったが、江戸時代の乗算や除算の方法(尾乗法・中乗法・帰除法)では、一時的に1桁に10以上溜まる場合もあった(尾乗法・中乗法・帰除法では、一時的に1桁に最大18まで溜まる場合があり、16以上の場合は懸珠を使うことになる)ので、江戸時代まではこの五珠2つの形式が多く使われていた。明治時代になって、不要な五珠を1つ減らした天1顆・地5顆の五つ珠(いつつだま、天一地五ともいい、1桁に10までの数が置ける)の形が普及したが、地5顆の形はしばらく続いた。江戸時代中期には乳井貢などから四つ珠利用の提案があったが定着はしなかった。時代が下り、榊原孫太郎などの教育研究者の啓蒙運動により四つ珠そろばんが次第に認知されるようになる。

日本では昭和10年代に珠算教育に用いる児童用そろばんの標準型を天に1つの珠、地に4つの珠の形式(天1顆・地4顆、天一地四)と定め[23]、これが一般に普及し現在に至る。

天1顆、地4顆の形式には次のような利点がある。

1桁で0から9までの数を表すことから筆用数字の記数法と一致し、暗算や筆算とも連携が良い[24]

珠の数が少なく数の認識が容易である[24]

珠の数が多いと誤謬がおきる確率が高くなる[24]

地5顆とすると同一の数に幾通りも表現があるため合理的でなく煩瑣である[24]

地5顆とすると計算上都合の良い場合があるが、そのような場合は極めて限定的である[24]

国際的にメートル法が使用されるようになり、中国でも天1顆・地4顆の四つ珠のそろばんが普及してきている。

珠の構成については特殊で変則的なものもある。10行の芯に10個の珠が並ぶ100珠そろばん(百玉計数器)は100個の珠が数そのものを表すというもので視覚的に数字と算数を理解するのに向いておりもっぱら低年齢層向けの教育補助具として用いられている。また、通常のそろばんの五珠の部分のみ(0と1のみ)とした2進法のそろばんもある[25]
珠の形

日本では江戸時代にそろばんが広まっていくうち、枠の大きさが手の大きさに合わせて小さめに、そして珠の形状が素早く計算しやすいように円錐を2つ合わせた菱形のような形に変化していった。
桁の数

珠を通す芯(軸)の数が桁(けた)となり奇数が一般的である。桁数は13桁、17桁、21桁、23桁、27桁、35桁のものが多い[26]。一番多く作られているのは23桁のものである。桁数は多くなると持ち運びに不便である[26]。反面、桁数が少なすぎると乗法や除法の計算に不便である[26]

梁には真ん中を基準として、左右の端まで一定の桁ごとに定位点が打たれている。標準的なそろばんでは定位点は4桁ごとに打たれている[23]

なお、実用に用いられたそろばんには、桁ごとに梁に金額(千、百、十、、十、)や体積()を記したものもある[27]
計算法詳細は「珠算」を参照

以下は天(梁の上側)に1つの珠、地(梁の下側)に4つの珠を配置した天1顆、地4顆の形式のそろばんの計算法。
布数法

布数法とは数を表現するための珠の置き方である。天(梁の上側)にある1つの珠を五珠、地(梁の下側)にある4つの珠を一珠という。


0123456789

一般的に一の位は枠上の定位点の付いた桁(軸の位置)に置くのが一般的で左に向かって十進法で位取りを行う。
加法及び減法

そろばんの用語では、加法及び減法をまとめて見取り算と呼ぶ。
加法

(例)1937+284






1937+200+80+4=2221

減法

(例)1756-957






1756-900-50-7=799

乗法及び除法

乗算・除算の場合は、特に慣れていない人の場合、乗数・除数を被乗数・被除数の左側に置くことが多いが、計算中は乗数・除数を全く操作しないので、乗数・除数については、紙に書いてある数字や印刷してある数字を使う方法もあり、あるいはある程度慣れている人の場合、記憶だけに留める方法(片落とし)を取ることが多い。また、そろばんの用語では、被乗数・被除数を実(じつ)、乗数・除数を法(ほう)という。

そろばんでの乗算・除算において、答えが出る位置を決めることを定位法と呼ぶ。

現在一般的な方法の乗算・除算(それぞれ新頭乗法・商除法)の場合、法が整数の場合には、法の桁数+1桁だけ実より乗算では右に、除算では左にずれて答え(積・商)が出てくる。

江戸時代?昭和初期に行われていた古式の乗算・除算(乗算では頭乗法・尾乗法・中乗法、除算では帰除法)の場合、法が整数の場合には、法の桁数だけ実より乗算では右に、除算では左にずれて答え(積・商)が出てくる。

乗法

そろばんの乗法には実(被乗数)の尾桁から計算する留頭乗法と実(被乗数)の首桁から計算する破頭乗法がある[3]。また、それぞれ法(乗数)の首位数から計算を始める頭乗法と法(乗数)の尾位数から計算を始める尾乗法がある[3]

以上の組み合わせにより主な乗法として留頭尾乗法、留頭頭乗法、破頭頭乗法、破頭尾乗法の四種がある[3]

またこの他に中乗法といって、法の次位数から尾位数まで計算した後、最後に法の首位数を計算する方法もある。

一般には留頭頭乗法の欠点を克服するため部分積を置く位置を改良した方法が用いられる[28]。以下に示すのは新頭乗法と呼ばれる現在一般的な方法(法を盤面に置いていない片落としの例)である。

(例)32×97






322を消して2×90+2×7



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