けいれん
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自動症は複雑部分発作中あるいは発作後もうろう状態に認められ、患者本人はその記憶がないか、あっても断片的、部分的である。
全般発作における痙攣

全般発作における大脳ニューロン過剰放電は、局所性ではなく両側性、広範におこる。てんかん発作が局所性に部分発作ではじまり、異常放電が両側性、びまん性に波及した結果、全般発作が生じることがある。これを二次性全般化という。全般発作は広範な脳障害のため意識障害を伴い、両側性の強直間代性痙攣を生じることが多い。強直間代性痙攣の経過を示す。ますは意識消失に伴う突然の痙攣がおこる。これは開口、開眼と眼球上転、上枝は外転挙上し肘は屈曲位で前腕は回内する。次に強直相であり、通常持続は10?20秒ほどである。四肢は伸展し、呼吸筋の強直により、肺からの空気が閉鎖した声帯を通って強く呼出される際に叫び声をあげることがある。呼吸停止とチアノーゼが認められることがある。間代相の持続は30秒前後が多い。間代性痙攣の感覚は次第に長くなり終焉する。咬舌はこの時期におこる。自律神経症状として頻脈、血圧上昇、瞳孔散大、流涎、発汗過多がみられる。深い吸気をもって間代相は終わる。間代相がおわると回復期になる。このとき呼吸は再開し、対光反射も回復する。痙攣後の意識障害が持続する。
痙攣患者のマネジメント

まず、患者の前に来た時、痙攣が持続しているのかしていないのかを確認する。痙攣発作は大抵は数分で消失するが、なかには数十分続く痙攣重積というものもある。痙攣中は呼吸が満足にできないので、持続すると低酸素脳症を起こす恐れがある。30分以内に停止できなかった場合は脳に不可逆的な変化が起こる場合がある。そのため痙攣を止める必要がある。痙攣発作中の患者にはまずBLSACLSのアルゴリズムに従い救命を行う。低血糖心室細動の診断もこの時に行う。低血糖ならば50%ブドウ糖20mlを2A (40ml) を静注し、心室細動ならば電気的除細動を行う。次に考えるのはヒステリーによるもの(偽痙攣という)であるかだが、これは経験的に診断することが多い、疑わしければアームドロップテストなどを行うこともある。偽痙攣が否定されれば真性痙攣の治療となる。

酸素投与、あるいはバックバルブ換気を行う。

ホリゾン(10mg/2ml/A、ジアゼパム)を1A筋注あるいは0.5A静注する。とまらなければ、3 - 5分ごとに5mgずつ、最大20mg (2A) まで投与する。

痙攣が止まったら痙攣再発予防のためアレビアチン (250mg)(抗痙攣薬フェニトイン)を2A (500mg) 、生理食塩水100mlに溶解し点滴する。

ごくまれに、ホリゾンを20mg投与しても痙攣が治まらない場合がある。この場合はアレビアチンの点滴を開始する。これでも止まらなければチオペンタールラボナール)を50 - 100mg(1Aに500mg含まれているので注意)静注したり、フェノバール (100mg/A) を1A筋注したりすることもある。これでもダメなら、気管挿管し、低酸素を防ぎ専門医に相談するべきである。アレビアチン(フェニトイン)は2A以上でないと効果がないと言われている。この薬はナトリウムチャネルが不活化状態から回復させる頻度を減らす作用がある。よく用いられる抗てんかん薬であるデパケン(バルプロ酸)もこの作用を有しているがこちらはカルシウムチャネルにも作用する。

発作が止まったら原因検索と外傷検索を行う。採血を行い血算、生化学、アルコール濃度、抗てんかん薬血中濃度を測り、動脈血液ガスにて代謝性アシドーシスを確認する。頭部CTや尿中薬物検査も行う。これらの検査で異常があれば症候性てんかんと診断され、異常がなければ真性てんかんである。

診断ができればそれに基づいて治療を行うことができる。原則として初発の痙攣では入院による精査が望ましい。しかし患者の希望によっては後日脳波検査となる。てんかんは発作型によって治療薬が異なるのだが、この場合は抗てんかん薬の予防投与となる。それ以外の真性てんかんで受診となるケースとしてはコントロール不良の場合がある、これは非常に危険なので入院精査が必要である。怠薬の場合はアレビアチン投与後服薬を再開する。今までコントロール良好であったのに痙攣した場合は抗てんかん薬の増量を行い、かかりつけ医に受診させるという方法もある。症候性てんかんの場合は原因疾患を治療すれば完治できる可能性がある。可能ならば原疾患を治療し、抗てんかん薬の投与そして診断に合わせて後日専門医を受診させればよい。てんかんで最も怖いのは痙攣後外傷である。危険を感じたらためらわず入院させる。

不思議なことにてんかんはある一定の時期を過ぎると痙攣しなくなることがある、すなわち退薬可能となる。こういった判断を仰ぐために専門医の受診はかかせない。
痙攣発作の血清マーカー

痙攣発作の血清マーカーとしてはCKの他に乳酸プロラクチンが知られている[1]。強直間代発作の場合、CK上昇の感度86%、特異度75%であり、プロラクチン上昇の感度47?76%、特異度85?100%と報告されている[2][3]。プロラクチンは痙攣後15分から60分ほどで上昇が認められ基準値の2倍以上で異常と考えられている[4]
心因性発作

偽痙攣(pseudoseizure)、心因性発作はてんかん患者の5 - 35%も認められるとされている。薬剤無効の発作の35%程度が心因性発作ともいわれている。痙攣と心因性発作の鑑別点を以下にまとめる。ある発作が心因性と診断できたとしても同一個人のすべての発作が心因性と診断することはできないため注意が必要である。首の規則的な反復的な左右への横ふり、発作の最中に閉眼している場合、発作中に泣き出す場合、発作出現に先行して1分以上の閉眼や動作停止を伴う擬似睡眠状態が出現する場合は心因性発作の可能性が高い。また発作後血中のプロラクチン濃度が上昇している場合は痙攣であった可能性がある。

痙攣心因性発作
頭部の動きしばしば肩峰に引っ張られるように動くしばしば左右にふる(中央を超えて左右にふる)
四肢の動き通常は同調率で動くしばしばバラバラに動く
骨盤の動き通常ないしばしば前後に動く
瞳孔散大、対光反射消失正常
開眼操作に対して通常抵抗なししばしば抵抗する
頭位変換眼球逃避なしあり
アームドロップテスト通常回避なし通常回避
腹筋の緊張ありなし
口開口していることが多いぎゅっと閉じている
発作中に話す絶対にないしばしばある
痙攣後もうろう状態ありしばしばなし
痙攣時の記憶なししばしばあり
舌咬傷舌縁でみられることが多い舌先で多い
尿失禁ありえるありえる
便失禁ありえる通常なし

小児科領域の痙攣

特に重要な小児科学の分野の疾患としては熱性痙攣髄膜炎があげられる。
熱性痙攣

熱性痙攣は発熱に伴っておこる痙攣である。中枢神経感染症や電解質、血糖異常などが否定された機会痙攣のひとつである。男児に好発し、小児痙攣の50%が本症である。6か月から6歳の初発が多く、通常は7歳以降自然消失する単純型である。7歳までの発症率は日本で7 - 10%であり米国で2 - 5%とされている。単純型熱性痙攣は15分未満(多くは5分以内)の短時間発作であり、全般性発作、典型的には大発作(強直間代発作)を示し、左右対称であり、巣症状を伴わない。24時間以内に1回の痙攣であり頻発せず、意識障害も短い。複合型熱性痙攣は15分以上の長時間発作であり、局所性の神経学的症候を伴う。24時間以内に2回以上の再発性痙攣であり、てんかんの家族歴を持つことが多い。再発因子としては、初発1歳未満、一親等の熱性痙攣、非定型熱性痙攣、神経学的異常、一親等の無熱性発作の既往などがあげられる。典型的には3分ほどで覚醒するので病院を受診した時点では覚醒している。発熱を伴っている場合は自律神経の作用による振戦をしばしば不慣れな親は痙攣と間違える。振戦は寒冷時の四肢のふるえと基本的には同じであり持続的で病的な印象が乏しい。

熱性痙攣の再発因子として、

A) 初回発作が12か月未満の場合は再発率50%(初回発作が12か月以降の場合は再発率30% つまり初回発作のみの児が7割)

B) 2回目の発作があれば3回目以上の発作がある確率は50%

が挙げられる。その他の再発率に関連するリスクとしては

A) 両親か片親の既往(再発率50%)

B) 発熱から痙攣までの時間が短い

C) 38℃前後の比較的軽度の発熱で痙攣する。

この3つ全てが当て嵌まれば再発率は80%である。

てんかんの発症に統計的に関与しているのは、

A) 12か月未満に初回発作

B) 複数回の発作の既往

C) てんかんの家族歴がある。

このいずれかを満たすと、てんかんの発症率はやや高い(2.4%)。その他に、

A) 神経学的異常もしくは発達遅滞

B) 複雑型熱性発作

C) てんかんの家族歴

の3つの因子のうち2つ以上があると10%程度まで上昇する。

熱性痙攣自体は高頻度の良性疾患であるが、その他の疾患との鑑別が非常に重要となる。注意が必要な痙攣発作は5分 - 10分以上継続する時間の長い痙攣(保護者は長く感じるので注意が必要)、1回の発熱で二回以上痙攣を起こす場合、無熱性の痙攣、意識がなかなか戻らない場合、生後初めての痙攣、片側性痙攣などがあげられる。痙攣自体の対処法としてはポジショニングである。発作が続いている場合は胸元を開けて楽な姿勢とし、肩枕をする。この目的は気道確保を行い、誤嚥、誤飲を防止することである。痙攣で舌を噛むことはほとんどなく、箸、タオル、スプーンといったものを噛ませることに意義はない。むしろ、舌や歯を傷つけ、タオルに関しては呼吸困難を起こし、嘔吐時に窒息の原因となる可能性もある。急性期の治療としてはジアゼパム座薬(ダイアップ)挿入であり、これで数分で止まる。効果がないときはジアゼパムの注射液を0.3 - 0.5mg/kgを2 - 3分で静注する。

治療については15分以内におさまる熱性痙攣に対して医学的には予防も治療も必要はない。15分以上の長い痙攣を起こさないようにするのが治療のゴールである。頻回に熱性痙攣を起こしていたり、病院へのアクセスが困難例、親の不安が強い場合は抗てんかん薬による予防を行うことになる。その場合はジアゼパム座薬(ダイアップ)挿入の指導を行う。痙攣中以外は投与に意味はないが再発予防として一日2回まで(8時間以上の間隔をあけて)、発熱時も3回以上投与しないとして予防を行うこともあるが通常は屯服で十分である。予防としてよく行われる方法は37.5度以上の発熱でダイアップを挿入し、8時間後に38度以上の場合に2回目のダイアップを用いる。24時間経過したら3回目も使用可能だが通常は用いない。2年間予防を行い、5歳くらいで退薬を試みるのが通常である。解熱剤の座薬を併用する場合は、解熱剤を先に挿入するとダイアップの吸収が阻害されるため併用する場合はダイアップ使用後30分以上経過してから解熱剤を挿入する。

家庭にて治療をした場合も髄膜炎脳炎の否定のために受診が望まれる。ダイアップを使用して熱性痙攣を予防したとしても、てんかんへの移行への防止効果はなく、解熱剤を早めに使ったとしても熱性痙攣の予防効果もない。

熱性痙攣で病院を受診する重要なことは髄膜炎、脳炎、代謝性疾患による痙攣を見逃さないためである。AAPガイドラインでは6か月以下の乳児の熱性痙攣の患者では血算、生化学検査が必要としている。熱性痙攣で髄膜炎を合併する確率は2?5%である。髄膜刺激症状は30%で認められない。AAPガイドラインでは12か月以下の乳児、初回で複合型熱性痙攣の場合、意識障害がある場合、熱性痙攣重積の場合は髄液検査を行うことを推奨している。


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