かもめ_(チェーホフ)
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女優としても芽が出ず、今は地方を巡業して回る日々を過ごしている。「手紙にはいつもかもめと署名してあるんです。彼女は今この近くにいますよ。」

ソーリンの容体が悪くなったために呼び寄せられたアルカージナがトリゴーリンとともに訪ねてくるが、ソーリンは小康を得ていて一同はロトに興ずる。シャムラーエフがトリゴーリンにコスチャが撃ったかもめを剥製にするよう頼まれていたことを話題にするが、トリゴーリンは思い出せない。

やがて一同は食事のために部屋を出ていくが、コスチャは一人残り仕事を続ける。かつて新しい形式の必要を訴えていたコスチャは、今では自分が型にはまりつつあることを感じとる。「問題は新しいとか古いとかいう形式にあるのではなくて、形式になんかとらわれずに書く、魂から自由にあふれ出るままに書くということなんだ。」

そこへ巡業で近くまで来ていたニーナが訪ねてくる。病的に張りつめた様子のニーナは何度も「私はかもめ」と繰り返し、トリゴーリンとのいきさつをほのめかす一方で、その度に「私は女優」と言い直す。「大切なのは名誉でもなければ成功でもなく、また私がかつて夢見ていたようなものでもなくて、ただ一つ、耐え忍ぶ力なのよ。私は信じているからつらいこともないし、自分の使命を思えば人生もこわくないわ。」片やコスチャは今も信じるべきものを見つけ出すことができずにいる。「僕には信じるものもなく、何が自分の使命なのかもわからずにいるんだ。」

何か食べるものを、というコスチャの申し出を断り、懐かしむように2年前の失敗した芝居のセリフをひとしきりそらんじてみせると、ニーナはコスチャを抱き締め、外へ駈け去っていく。コスチャはしばらくの沈思の後に自分の原稿を尽く引き裂き、部屋の外へ出て行く。

食事を終えた一同が部屋に戻るとシャムラーエフが完成したかもめの剥製を見せるが、それでもトリゴーリンは思い出せない。やがて外で一発の銃声が鳴り響く。調べに出て戻って来たドールンは「エーテルの薬瓶が破裂した」と説明して怯えるアルカージナを落ち着かせたあと、トリゴーリンに小声で「コンスタンチン・トレープレフが自分自身を撃った」と告げる。
本稿の参照文献

神西清訳 『かもめ・ワーニャ伯父さん』 新潮文庫、改版2004年。解説池田健太郎

近年刊の日本語訳書

浦雅春訳『かもめ』 岩波文庫[3]、2010年

沼野充義訳『かもめ』 集英社文庫、2012年

中本信幸訳『かもめ』 新読書社(新書版)、2006年

堀江新二訳『かもめ 四幕の喜劇』 群像社<ロシア名作ライブラリー>、2002年

内田健介訳『かもめ』 論創社〈注釈付 近代古典劇翻訳〉、2022年(上演用訳書)

小田島雄志訳『かもめ ベスト・オブ・チェーホフ』 白水社<白水Uブックス>、1998年(英訳版をもとにした上演用訳書)

松下裕訳『チェーホフ戯曲選』 水声社、2004年。旧版は『チェーホフ全集(11)』(筑摩書房+ちくま文庫

映画

映画化された作品は以下の通り。

『The Sea Gull
』(1968年 イギリス/ アメリカ合衆国/ ギリシャ、監督:シドニー・ルメット[4]

『チェホフのかもめ(英語版、ロシア語版)』(1971年 ソビエト連邦、監督:ユーリー・カラーシク(ロシア語版))[5]

リリィ』(2003年 フランス/ カナダ、監督:クロード・ミレール) ※設定を現代(公開当時)のフランスに置き換えている。

かもめ』(2018年 アメリカ合衆国、監督:マイケル・メイヤー(英語版)) ※日本劇場未公開、WOWOWにて放映[6][7]

日本での上演例.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節の加筆が望まれています。

この項では、日本での舞台公演について記述する。

日本での初演は1922年の研究座公演で、ニーナ役を水谷八重子が務めた[8]

日本でもプロ・アマ問わず数多く上演されているが、主な上演は以下の通り[8][9][10]

トレープレフアルカージナトリゴーリンニーナ演出家
1950年
劇団民藝宇野重吉北林谷栄??奈良岡朋子岡倉士朗
1954年東山千栄子滝沢修楠田薫千田是也
1977年
文学座角野卓造加藤新吉
1980年
劇団四季市村正親藤野節子日下武史久野綾希子アンドレイ・シェルバン
1994年

(ひょうご舞台芸術)井上倫宏冨士眞奈美沢田研二神野三鈴井上思
1999年
Bunkamura橋洋原田美枝子筒井康隆宮本裕子蜷川幸雄
1999年
(Bunkamura)岡本健一樋口可南子串田和美千ほさち岩松了
2002年
新国立劇場北村有起哉三田和代益岡徹田中美里マキノノゾミ
2004年
(TPT)藤沢大悟佐藤オリエ木村健三郡山冬果熊林弘高
2008年
ホリプロ藤原竜也麻実れい鹿賀丈史美波栗山民也
2013年
シス・カンパニー生田斗真大竹しのぶ野村萬斎蒼井優ケラリーノ・サンドロヴィッチ
2014年
宝塚歌劇団星組礼真琴音花ゆり天寿光希城妃美伶小柳奈穂子


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