酒を蒸留する技術は、3世紀頃のアレクサンドリアの錬金術師たちには、既に知られていたと推測される。
ローマ帝国は、ブリタンニア属州(現代のイギリス南部)をはじめヨーロッパの各地を支配下に収め、その過程でワイン生産の技術を伝えた。フランスのボルドーやブルゴーニュでは、その頃からワインの製造が始まっている。なおイギリスは、気候の低温化によりブドウが栽培できなくなり、ワイン生産は廃れた。 10世紀以前には蒸留酒が発明されていた。それは錬金術師が偶然に作り出したものだといわれる。ラテン語で蒸留酒はアクア・ヴィテ(生命の水)と呼ばれた。それが変化してフランス語でオード・ヴィー、ゲール語でウシュクベーハーになり、今日の様々な蒸留酒の区分ができた。 1171年、ヘンリー2世の軍隊がアイルランドに侵攻した。その時の記録によると、住民は「アスキボー」という蒸留酒を飲んでいたという。これがウイスキーの語源となる。 日本の沖縄(当時は琉球)では、若い女性が口の中で噛み砕いた木の実を唾液とともに吐き出し、それを醗酵させた口噛み酒を中国の使節へ供したという記録がある。 糖分、もしくは糖分に転化されうるデンプン分があるものは、酒の原料になりうる。脂肪やタンパク質が多いもの(たとえば大豆などの豆類)は原料に向かない。 酒に含まれるアルコール分はほとんどの場合、酵母などの菌によって、糖のアルコール発酵が行われる[10]。テキーラは酵母ではなくザイモモナスと呼ばれる細菌をアルコール発酵に使用している)[11]。 しかし、麦・米・芋などの穀物類から造る酒の場合、原材料の中の炭水化物はデンプンの形で存在しているため、先にこれを糖に分解(糖化)する。糖化のためにはアミラーゼ等の酵素が必要である。酵素の供給源として、西洋では主に麦芽が、東洋では主に麹が使われる。 このほか、通常は飲料や食材として扱われていなくても、含有している糖分をアルコール発酵させれば酒は造れる。日本の森林総合研究所は、木材を細かく破砕してリグニンに保護されていたセルロースを露出させて酵素により糖に変え、樹種により味・香りが異なる酒を造る製法を開発した[12][13]。 酒は大きく分けて醸造酒、蒸留酒、混成酒に分かれる。醸造酒は単発酵酒と複発酵酒に分けられ、複発酵酒は単行複発酵酒と並行複発酵酒に分けられる。 蒸留酒のうち、樽熟成を行わないものをホワイトスピリッツ、何年かの樽熟成で着色したものをブラウンスピリッツとする分類法がある。ただし、テキーラ、ラム、アクアビットなどではホワイトスピリッツとブラウンスピリッツの両方の製品があり、分類としては本質的なものではない。 なお、全ての酒が上記いずれかに含まれるわけではない。例えばアイスボックビール[14] は、醸造後にアルコール分を高める手順があるため醸造酒とは言いがたいが、その手順が蒸留ではない(凍結濃縮)ため蒸留酒でもない。また、凍結濃縮を他の酒類に適用する研究も行われている[15]。
中世
原料カベルネ・ソーヴィニヨン(ブドウの品種)
よく用いられる原料
果実類
ブドウ、リンゴ、サクランボ、ヤシやクリの実など
穀物類
米、麦、トウモロコシなど
根菜類
ジャガイモ、サツマイモなど
アルコール発酵に用いる菌
その他の原料
天然の素材
サトウキビ、テンサイ、樹液、乳、蜂蜜
加工品
酒造の副産物として得られる酒粕やブドウの絞りかすなど
種類
製造方法による分類
醸造酒:原料を発酵させた酒。蒸留や混成といった手順を踏まないもの(発酵後そのままとは限らない。飲みやすく調整するために水を加えるなど)。
単発酵酒:原料中に糖類が含まれており、最初からアルコール発酵を行うもの。
複発酵酒:アルコール発酵だけでなく、穀物のデンプンなどを糖化する過程を含むもの。
単行複発酵酒:糖化の過程が終わってからアルコール発酵が行われるもの。ビールなど。
並行複発酵酒:糖化とアルコール発酵が並行して行われるもの。清酒など。
蒸留酒:醸造酒を蒸留し、アルコール分を高めた酒。
混成酒:酒(蒸留酒が主に使われる)に他の原料を加え、香り・味・色などを整えた酒。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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