2013年に成立、施行されたいじめ防止対策推進法によれば、「いじめ」とは、「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」(第2条1項)。 教育社会学者の藤田英典も(学校での)いじめを次の4つに分類し、多くのいじめに対する言説がその特性の相違点を考慮していない点を批判している[24]。 教育評論家の森口朗も藤田の分類を継承して「修正藤田モデル」という四分類を作った[25]。 そしてそれぞれ求められるべき対処法は異なり、1のタイプの軋轢の解消は可能な限り生徒の自主性に任せ(教師は2の段階に移行しないかを直接介入することなく見守る)、3・4のタイプでは警察へ通報または弁護士に相談するなど司法の介入によって解決し、2のタイプのみ教師・学校側が積極的に解決すべき問題であるという。 間接的、隠れた虐め 学校の種類別では、幼稚園・保育園では小学校や中学校のようないじめはないという。積極的な子供が消極的な子供を従えているようにみえる「子供同士の力関係」や、「子供のコミュニケーション能力の未発達」による玩具等の横取り、手を出すことをいじめととらえてしまう親もいるという[28]。 学年別動向の統計調査では、小学校では、「冷やかし」の割合が多いが、「仲間はずれ」の割合が、他の区分に比べて多い[29]。国立教育政策研究所追跡調査(2004-2009)によれば小学校・中学校で「仲間はずれ、無視、陰口」が3年間の間に全く無かった児童生徒はそれぞれ22.6%、27.6%で[16]、3年間連続でいじめがあった児童生徒は小学校・中学校でそれぞれ0.4%、0.6%であった[16]。しかし、2005年の滝川市小6いじめ自殺事件や2010年の桐生市小学生いじめ自殺事件など、小学校でもいじめを苦にした自殺事件は起こっている。 中学校は統計上、いじめが最も多くなる年代である[29]。国立教育政策研究所調査(2004-2009)によれば、学年別で見た場合、中学1年生だけで17,063件のいじめが認知されており、この数字は小学6年生(4,262件)や高校1年生(3,701件)に比べ4倍以上多い。
分類
モラルの低下・混乱によるもの。1980年代中ごろに頻発したタイプで、被害者が偶発的に決定されるところに特徴がある。一種のモラル・パニックや集団ヒステリーといえる。
社会的偏見・差別による排除的なもの。1のケースと比較するといじめの対象となった理由(特定の社会的属性を持っていたということ)は明瞭であり、差別意識自体を取り除く指導をすることがこの種のいじめの対策となる。
閉鎖的な集団内で特定の個人に対して発生するもの。教師など外部から実態が把握しにくいぶん、対策は難しくなる。
特定の個人への暴行・恐喝を反復するもの。3のケースと違って、加害者と被害者の属するグループは異なる場合が多い。不良が下級生からカツアゲするといったものが典型的なもので、認知されやすい。
子供たちが共同生活をおくる上で当然発生するであろう軋轢。
従来型コミュニケーション系いじめ。仲間はずれにするなど、犯罪の構成要件は満たさないもの。
犯罪型コミュニケーション系いじめ。インターネット上での誹謗中傷のように犯罪(名誉毀損罪、侮辱罪など)とみなしうるもの。
暴力・恐喝型いじめ。暴行や窃盗などの犯罪(暴行罪、傷害罪、恐喝罪など)に問われるもの。
学校でのいじめ
日本で言う「いじめ」は特に1985年(昭和60年)ごろから陰湿化した校内暴力をさすことが多い[26]。いじめによる暴行で、重篤な場合は重傷を負わせられる傷害の結果死に至ったり(山形マット死事件)、強姦されたり(1996年の旭川女子中学生集団暴行事件)、自殺する例もある(1986年の中野富士見中学いじめ自殺事件)。また、中学生が5000万円も恐喝によって得たり(名古屋中学生5000万円恐喝事件、2000年)、いわゆる問題児(モンスターチルドレン、不良行為少年)による単純な暴力だけでなく、使い走り(パシリ)をさせたり、「物を隠す」「第三者の物を隠し、被害者に罪をなすりつける」「交換日記で悪口を書く」「机に花を置き死亡したことにする」「被害者の名前を隠語にして被害者がききかえしても別人のことをしゃべっているふりをする」といった「心に対するいじめ」もあり、シカト(無視、仲間外れ)などは水面下で行われることから、教師や周囲が気づかないうちに深刻な事態になりうる。1996年(平成8年)に文部大臣(当時)が緊急アピールしているように、「深刻ないじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子供にも起こりうる」[16]もので、児童生徒1,000人あたりの7.1人がいじめを受けている[27]。調査では「小学校4年生から中学校3年生までの6年間の間に、いじめ(仲間はずれ、無視、陰口)と無関係でいられる児童生徒は1割しかいない」[16]ことが指摘されている。
学校の種類別といじめの様態