いじめ
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集団の中の「ノリ」がエスカレートして暴力が激化したり、客観的には取るに足らない理由でシカトされる者が決定されたりと、集団心理のダイナミクスが働いていることが狭義におけるいじめの要件となっている[21]

日本政府による定義

平成18年以前の日本文部科学省の定義では「(1)自分より弱い者に対して一方的に、(2)身体的・心理的な攻撃を継続的に加え、(3)相手が深刻な苦痛を感じているものであって、学校としてその事実を確認しているもの」とされていた[22]。2006年(平成18年)度文部科学省による調査[23]において、いじめの新定義として「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」とされ、起こった場所は学校の内外を問わない、個々の行為が『いじめ』に当たるか否かの判断は表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする、とされた[22]。また、具体的ないじめの種類に「パソコン・携帯電話での中傷」「悪口」などが追加された。いじめの件数についても「発生件数」から「認知件数」に変更された。

2013年に成立、施行されたいじめ防止対策推進法によれば、「いじめ」とは、「児童等に対して、当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているものをいう」(第2条1項)。
分類

教育社会学者の藤田英典も(学校での)いじめを次の4つに分類し、多くのいじめに対する言説がその特性の相違点を考慮していない点を批判している[24]
モラルの低下・混乱によるもの。1980年代中ごろに頻発したタイプで、被害者が偶発的に決定されるところに特徴がある。一種のモラル・パニック集団ヒステリーといえる。

社会的偏見・差別による排除的なもの。1のケースと比較するといじめの対象となった理由(特定の社会的属性を持っていたということ)は明瞭であり、差別意識自体を取り除く指導をすることがこの種のいじめの対策となる。

閉鎖的な集団内で特定の個人に対して発生するもの。教師など外部から実態が把握しにくいぶん、対策は難しくなる。

特定の個人への暴行・恐喝を反復するもの。3のケースと違って、加害者と被害者の属するグループは異なる場合が多い。不良が下級生からカツアゲするといったものが典型的なもので、認知されやすい。

教育評論家森口朗も藤田の分類を継承して「修正藤田モデル」という四分類を作った[25]
子供たちが共同生活をおくる上で当然発生するであろう軋轢。

従来型コミュニケーション系いじめ。仲間はずれにするなど、犯罪の構成要件は満たさないもの。

犯罪型コミュニケーション系いじめ。インターネット上での誹謗中傷のように犯罪(名誉毀損罪侮辱罪など)とみなしうるもの。

暴力・恐喝型いじめ。暴行や窃盗などの犯罪(暴行罪傷害罪恐喝罪など)に問われるもの。

そしてそれぞれ求められるべき対処法は異なり、1のタイプの軋轢の解消は可能な限り生徒の自主性に任せ(教師は2の段階に移行しないかを直接介入することなく見守る)、3・4のタイプでは警察へ通報または弁護士に相談するなど司法の介入によって解決し、2のタイプのみ教師・学校側が積極的に解決すべき問題であるという。
学校でのいじめ

間接的、隠れた虐め、学校での虐め、学友迫害も参照。
日本で言う「いじめ」は特に1985年(昭和60年)ごろから陰湿化した校内暴力をさすことが多い[26]。いじめによる暴行で、重篤な場合は重傷を負わせられる傷害の結果死に至ったり(山形マット死事件)、強姦されたり(1996年の旭川女子中学生集団暴行事件)、自殺する例もある(1986年の中野富士見中学いじめ自殺事件)。また、中学生が5000万円も恐喝によって得たり(名古屋中学生5000万円恐喝事件、2000年)、いわゆる問題児モンスターチルドレン不良行為少年)による単純な暴力だけでなく、使い走り(パシリ)をさせたり、「物を隠す」「第三者の物を隠し、被害者に罪をなすりつける」「交換日記悪口を書く」「机に花を置き死亡したことにする」「被害者の名前を隠語にして被害者がききかえしても別人のことをしゃべっているふりをする」といった「心に対するいじめ」もあり、シカト(無視、仲間外れ)などは水面下で行われることから、教師や周囲が気づかないうちに深刻な事態になりうる。1996年(平成8年)に文部大臣(当時)が緊急アピールしているように、「深刻ないじめは、どの学校にも、どのクラスにも、どの子供にも起こりうる」[16]もので、児童生徒1,000人あたりの7.1人がいじめを受けている[27]。調査では「小学校4年生から中学校3年生までの6年間の間に、いじめ(仲間はずれ、無視、陰口)と無関係でいられる児童生徒は1割しかいない」[16]ことが指摘されている。
学校の種類別といじめの様態

学校の種類別では、幼稚園保育園では小学校や中学校のようないじめはないという。積極的な子供が消極的な子供を従えているようにみえる「子供同士の力関係」や、「子供のコミュニケーション能力の未発達」による玩具等の横取り、手を出すことをいじめととらえてしまう親もいるという[28]

学年別動向の統計調査では、小学校では、「冷やかし」の割合が多いが、「仲間はずれ」の割合が、他の区分に比べて多い[29]。国立教育政策研究所追跡調査(2004-2009)によれば小学校・中学校で「仲間はずれ、無視、陰口」が3年間の間に全く無かった児童生徒はそれぞれ22.6%、27.6%で[16]、3年間連続でいじめがあった児童生徒は小学校・中学校でそれぞれ0.4%、0.6%であった[16]


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