『あゝ野麦峠』の映画化の計画は1969年(昭和44年)に一度出ており、内田吐夢監督、吉永小百合主演(政井みね役)の予定であった[3]。しかし、映画化には莫大な資金が必要で興行的にも懸念されたため映画化は断念された[3]。現地を何回か訪れていた吉永は野麦峠に「政井みねの碑」を寄贈している[3]。
本作に製作者としてクレジットされる持丸寛二
は[6][7]、映画界とは門外漢の人物で[7]、宮城県仙台市で、コンピュータ技師を養成する日本コンピュータ学園を設立し[7][8]、財を成して東北電子計算機専門学校を興した成金理事長・社長[6]。映画が好きなのかも不明で、角川映画に触発され[6]、東京新宿3丁目に資本金5000万円で「新日本映画」を設立し映画の製作に乗り出した[6]。1979年末に杉並区浜田山に2億円の豪邸を建設し、映画成金と話題を呼んだ[6][7]。この持丸が原作に感銘を受け[3]、4億円を出資[3]。東宝が配給することになり、東宝から大道具や小道具、衣装などのスタッフの協力を得た[3]。明治時代の女工哀史を描くシリアスドラマで、興行を不安視する見方が強かったが[7]、配給収入14億円の大ヒット[2][7]。また映画に登場する岐阜県飛騨地方の工女たちに共感し、全国で岐阜東宝だけが6週間上映という前代未聞のロングランヒットになった[9]。
一方で野麦峠の資料館「野麦峠の館」には皆が政井みねのような境遇だったというイメージをもつ来館者も多かったため、資料館ではより多面的に、勤続10年で長野県生糸同業組合連合会から表彰を受けた労働者への感謝状、岡谷の写真館での集合写真、青年が工女に宛てて書いた恋文等も展示された[3]。資料館「野麦峠の館」は老朽化等により2022年3月末に閉館することになり、資料の一部は隣接する観光施設「お助け小屋」に移して展示されることになった[10]。
2011年、岐阜新聞創刊130年記念事業として映画上映と飛騨の工女行列が行われた[11]。
受賞歴
第34回毎日映画コンクール:日本映画大賞/音楽賞(佐藤勝)/撮影賞(小林節雄)/美術賞(間野重雄)
第33回日本映画技術賞:撮影賞(小林節雄)/美術賞(間野重雄)/録音賞(渡会伸)/照明賞(下村一夫)
テレビ放送
劇場用映画のテレビでの放映は、劇場公開から二年を経過した後、というのが当時の映画界に於ける暗黙の了解だったが[6]、映画門外漢の持丸はそんな了解どこ吹く風で[6]、早く放映させる条件で、日本テレビと交渉し、約2億円の売り値をさらに1億円上乗せする条件を日本テレビに飲ませ(『キネマ旬報』1981年10月上旬号では1億円[7])、テレビ放映権を売り飛ばした[6][7]。当然、大きな影響を受けるのが名画座や二番館・三番館で、東映会の会長で全国の劇場経営者で結成される全興連の会長・佐々木進が激怒し、激しい抗議を行った[6]。しかし覆らず、公開から約10ヶ月後の1980年4月9日に日本テレビ系・水曜特別ロードショー枠で初のテレビ放送が行われた[7]。視聴率34.3%(関東地区、ビデオリサーチ調べ[12])を記録。
ソフト状況
テレビ放送は1990年頃を最後に行われておらず、ビデオも発売されず、視聴困難な状態が続いていたが、2014年4月16日に東宝からDVDが発売されている。
出典・参考文献
『東宝特撮映画全史』東宝、1983年。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 4-92460-900-5。