#MeToo(ミートゥー)は、セクハラや性的暴行などの性犯罪被害の体験を告白・共有する際にSNSで使用されるハッシュタグである[1]。
「私も被害者である」という意味で「私も」を意味する英語にハッシュタグ(#)を付している。「Me Too」「#metoo」なども用いられる。欧米では、被害を告発する#MeToo運動と、被害の撲滅を訴えるTime's Up運動が存在するが、日本においては両方の意味で「#MeToo」のみを用いることが多い[2]。 2006年に若年黒人女性を支援する非営利団体「Just Be Inc.」を設立したアメリカの市民活動家タラナ・バークが、家庭内で性虐待を受ける少女から相談されたことがきっかけで、2007年に性暴力被害者支援の草の根活動のスローガンとして「Me Too」を提唱し地道な活動を行う[3][4]。 2017年10月5日にニューヨーク・タイムズの記者、ジョディ・カンター(英語版
概要
10月13日、フランスのジャーナリスト、サンドラ・ミュラーが、告発者の9割以上が職を失う現状を鑑み、訴訟の代わりにセクハラ被害の告発をSNSで行う「#BalanceTonPorc(豚を告発せよ)」運動を提唱した[10][11]。
ワインスタインによる被害者が多かったイタリアでは、13日に作家のGiulia Blasiが「#quellavoltache(あの時)」を提唱し[12]、15日に被害者の一人である女優のアーシア・アルジェントがリツイートして連帯を呼びかけた[13][14]。
10月15日、アリッサ・ミラノが同様の被害を受けたことのある女性たちに向けて"Me too"と声を上げるようツイッターで呼びかけた[1][15]。多くの著名人や一般利用者がこれに呼応し、世界的なセクハラ告発運動が展開された[1]。ちなみに、ミラノは同じスローガンが10年前に既に提唱されていたことを知らず、2日後にバークと連絡を取り協力関係を築いた。バークは当初、自分の地道なライフワークのスローガンが予期しない大きなムーブメントになったことに恐怖を感じたと証言している[16]。 #MeToo運動には多数のハリウッドの著名人たちが賛同を示し、「セクハラや性的虐待を見て見ぬ振りをするのは終わり」にする「タイムズ・アップ」運動が起こった[17]。2017年10月25日、ジャーナリストのマーク・ハルペリン
運動の拡がり
欧米
10月29日、俳優のケビン・スペイシーが、30年以上前の強姦未遂を当時14歳だったアンソニー・ラップに告発され、「覚えていない」としながらも謝罪し、かねてから噂のあった同性愛者であることを告白した[20]。同性愛の告白は非難をかわすためのものだと批判された[21]。その後も業界関係者ら十数名から告発が相次ぎ[22]、出演作品からの降板が決まった[23]。
11月9日、コメディアンのルイ・C・Kが5人の女性からセクハラを告発され、番組からの降板が決まり、17日に公開予定だった映画の上映が中止された[24]。同9日、アラバマ州上院補選の共和党候補ロイ・ムーア元判事が複数の女性から性被害を告発された。これに対しムーアは「魔女狩りであり、典型的なフェイクニュースだ」と反論したが[25]、12月12日の選挙で落選した[26]。
11月14日、NBCが重役のマット・ジマーマンをセクハラ疑惑で解雇した[27]。
11月20日、ニューヨーク・タイムズが看板記者のグレン・スラッシュをセクハラ疑惑で停職処分にした[28]。11月22日、CBSが大物ニュースキャスターのチャーリー・ローズをセクハラ疑惑で解雇した[29]。
11月29日、NBCが看板情報番組『トゥデイ』司会者のマット・ラウアーをセクハラ疑惑で解雇した[30]。これには、ドナルド・トランプ大統領も反応を示した[31]。この件について、弁護士でコメンテーターのジェラルド・リベラは、ラウアーを擁護し、局の対応に懐疑的な見解を示した。それを受けて、ベット・ミドラーがリベラによる過去の性被害を告発した1991年のインタビュー動画をツイッターに投稿した[32][33]。
12月2日、ニューヨーク・ポストが、メトロポリタン・オペラ名誉監督ジェームズ・レヴァインによる過去の少年への性的虐待を告発した[34]。被害男性は2016年に警察に訴えたが時効を迎えており、レヴァインも容疑を否認していた。メトロポリタン・オペラは報道の後、調査を開始し、2018年3月にレヴァインを解雇した。これを受けてレヴァインはメトロポリタン・オペラを損害賠償や名誉毀損で提訴した[35]。
12月7日、タイム誌の2017年度パーソン・オブ・ザ・イヤーに#MeToo運動を起こした「サイレンス・ブレイカーズ(沈黙を破る女性達)」が選ばれる[36]。
12月8日、コメディアン出身で民主党上院議員のアル・フランケンが、2006年12月の中東への米軍慰問団ツアーでのセクハラ疑惑を受けて辞任する意向を発表した[37]。2018年1月2日、正式に辞任した[38]。
2018年1月7日、第75回ゴールデングローブ賞授賞式において、「タイムズ・アップ」運動に賛同した女優たちが黒い衣装で参加し、被害者との連帯を示した[39]。「Me Too」創始者のバークも友人で女優のミシェル・ウィリアムズに招待され出席した[4]。同様の動きは、2月18日の英国アカデミー賞でも見られた[40]。
4月16日、「#MeToo」を使った運動の発端となったセクハラについて報道したニューヨーク・タイムズとザ・ニューヨーカーの記者が、ピューリッツァー賞の公益報道部門に選ばれた[41]。