龍擡頭
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龍擡頭[1](りゅうたいとう。簡体字: ?抬?; 繁体字: 龍抬頭; ?音: Long Taitou(ろん・たい・とう)、英語: Longtaitou Festival)は、中華人民共和国(中国)の北部、特に北京周辺において旧暦2月2日に行われている伝統的な行事である。名称は「龍(竜)が頭をもたげる(上げる)」を意味する[2][3]。古来からは雨をもたらす神だと信じられており、かつて農業が主要な産業であった時期の中国では、この時期に竜を祭る龍擡頭は重要な行事であった[3]。すなわち、華北地方では旧暦2月上旬にあたる時期に乾季から雨季へと変わることから、その年の豊作を期待して竜に雨を願うのである[1]。春竜節[4](しゅんりゅうせつ)とも。
伝説玉皇大帝(画像中央)

陝西省には龍擡頭の由来となった伝説が残っている。則天武后が皇帝となった頃、国号がから周(武周)に改められたことに怒った玉皇大帝が、太白金星(英語版)(太白)を通じて四海竜王に対し降雨を3年間止めるように命じた。しかし玉竜が、地上の人々が旱魃で苦しむ様子を見かねて独断で雨を降らせた。玉皇大帝は、玉竜を地上の山の中に1000年間監禁し、金豆の花が咲くまでは天に戻れないという罰を下した。人々は玉竜を助けようとしたが金豆のある場所すらわからない。手をこまねくうちに迎えた2年目の2月1日、市場で金豆と称してトウモロコシの実が売り出された。人々は、金色をしたこの実を炒れば花が咲くはずだと考え、こぞってトウモロコシの実を炒り、翌2日に、炒った実を持って玉竜が閉じ込められている山に集まった。玉竜はこれに気付くと、太白金星に「金豆の花が咲いたから山から出してほしい」と呼びかけた。太白金星は玉竜に同情していたのですぐに玉竜を解放した。玉竜は頭を擡(もた)げて空へと舞い上がり、乾いていた地上に雨をもたらした。この出来事に由来して、旧暦2月2日は「龍擡頭」の祝日とされ、その日はトウモロコシの実を炒って「花を咲かせ」、雨の恵みを願うようになったという[5]
龍擡頭の行事店で供される春餅

龍擡頭の行事が始まったのはの頃だと言われている。古くは農業が最も重要な産業であり、春の始まりとされた旧暦2月2日はその年の豊作を願う祝日となって[3]、主に漢民族の間で伝統的に祝われてきた[4]。しかしこんにちでは、農業従事者が減ったこともあり、特に都市部では龍擡頭の行事は廃れつつあるという[3]

龍擡頭の日、中国北部では、春餅などに「龍(竜)」の字の入った名前をつけ、竜のを取り入れることを願って食す。たとえば春餅は「龍鱗(龍のうろこ)」、水餃子は「龍耳(龍の耳)」、うどんなどの麺類は「龍須(龍のひげ)」や「扶龍須」と呼ばれる[3][6]。特に、春に収穫される様々な野菜を材料に用いる春餅は、そうした食材が入荷しにくかった昔の北京では「春を噛む食べ物」とみなされていた。こんにちも、春の始まりを祝う食品として多くの人に食されている[2]。これらの他、きび粉から作られる「龍胆」も人気がある[6]

旧暦2月2日は二十四節気啓蟄の時期にあたり、農作物に害を為す虫も出てくる。こうした虫を追い払うため、火を燃やして煙を出したり(薫虫)、塩に漬けた大豆を油で炒めて大きな音を出す(炒豆)などの儀式も行われていた[3]
脚注[脚注の使い方]^ a b 櫻井 1998, p. 78.(中国【漢民族】 解説)
^ a b 原口純子 (2011年3月1日). “現地ガイド記事「暦「二月二日」に食べてみたい「春餅」」”. アジア旅行 北京旅行. 海外旅行情報エイビーロード. 2016年12月6日閲覧。
^ a b c d e f ミン亦氷(日本語訳) (2007年3月2日). “ ⇒北京昔話 - 2月2日・龍抬頭”. CRI Online. CRI中国国際放送局. 2016年12月6日閲覧。
^ a b “ ⇒「2月2日の竜抬頭」 春の作付けに勤しむ農家(人民網)”. 中華人民共和国農業部 (2014年3月3日). 2016年12月7日閲覧。
^ 櫻井 1998, pp. 73-74.(中国【漢民族】 3 金豆の花が咲くとき 陝西省一帯 漢民族)
^ a b “ ⇒旧暦2月2日、「龍食」を食べて吉祥を願う”. 人民網日本語版 (2012年2月23日). 2016年12月6日閲覧。

参考文献

櫻井龍彦 著「中国【漢民族】」、竹原, 威滋、丸山, 顯コ 編『世界の龍の話』(初版)三弥井書店〈世界民間文芸叢書 別巻〉、1998年7月10日。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4-8382-9043-7


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