鼻_(芥川龍之介)
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訳題The Nose
作者
芥川龍之介
日本
言語日本語
ジャンル短編小説掌編小説
発表形態雑誌掲載
初出情報
初出『新思潮
1916年2月・第4次創刊号
刊本情報
収録『羅生門
出版元阿蘭陀書房
出版年月日1917年5月
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「鼻」(はな)は、芥川龍之介による初期の短編小説掌編小説)。1916年に『新思潮』の創刊号で発表された。『今昔物語集』の「池尾禅珍内供鼻語」および『宇治拾遺物語』の「鼻長き僧の事」を題材としている。

芥川龍之介の出世作であり、「人の幸福をねたみ、不幸を笑う」と言う人間の心理を捉えた作品。この小説で夏目漱石から絶賛された。

高僧の禅智内供は、鼻が長かったため、周囲から笑われていた。治療して、鼻は短くなるが、人々は一層嘲笑する。ある朝、気がつくとまた鼻は長くなっていた。内供は心が落ちついた。いつの時代にも尽きない、俗衆の生の原動力ともいえる利己的心理と、自尊心の愚かさを描いた名作。
あらすじ

池の尾(現在の京都府宇治市池尾)のである禅智内供(ぜんちないぐ)は五、六(約15 - 18 cm)の長さのある滑稽な鼻を持っているために、人々にからかわれ、陰口を言われていた。内供は内心では自尊心を傷つけられていたが、鼻を気にしていることを人に知られることを恐れて、表面上は気にしない風を装っていた。

ある日、内供は弟子を通じて医者から鼻を短くする方法を知る。内供はその方法を試し、鼻を短くすることに成功する。鼻を短くした内供はもう自分を笑う者はいなくなると思い、自尊心を回復した。しかし、数日後、短くなった鼻を見て笑う者が出始める。内供は初め、自分の顔が変わったせいだと思おうとするが、日増しに笑う人が続出し、鼻が長かった頃よりも馬鹿にされているように感じるようになった。

人間は誰もが他人の不幸に同情する。しかし、その一方で不幸を切り抜けると、他人はそれを物足りなく感じるようになる。さらにいえば、その人を再び同じ不幸に陥れてみたくなり、さらにはその人に敵意さえ抱くようにさえなる。

鼻が短くなって一層笑われるようになった内供は自尊心が傷つけられ、鼻が短くなったことを逆に恨むようになった。

ある夜、内供は鼻がかゆく眠れない夜を過ごしていた。その翌朝に起きると、鼻に懐かしい感触が戻っていた。短かった鼻が元の滑稽な長い鼻に戻っていた。内供はもう自分を笑う者はいなくなると思った。
映像作品
テレビドラマ

1959年5月7日、
日本テレビで放送。出演は三木のり平永井智雄柳谷寛

2010年8月25日、NHKデジタル衛星ハイビジョンの『妖しき文豪怪談』の第3回として放送。ただし、本作をそのまま映像化したのではなく、本作の後日談をオリジナルストーリーで描いたものとなっている。監督は李相日、出演は松重豊(禅智内供)、井川遥(トメ)、小山颯(保吉)など。

2016年10月26日、BS朝日世界の文学がわかる!あらすじ名作劇場わらしべ長者猿蟹合戦とともに放送。

その他

半透明なふたり
- 本作を原案として現代劇にリメイクした短編映画。主人公はコンビニ店員の設定。2022年6月、YouTubeで公開。

参考文献

芥川龍之介『羅生門・鼻』(改)新潮文庫、2005年10月。.mw-parser-output cite.citation{font-style:inherit;word-wrap:break-word}.mw-parser-output .citation q{quotes:"\"""\"""'""'"}.mw-parser-output .citation.cs-ja1 q,.mw-parser-output .citation.cs-ja2 q{quotes:"「""」""『""』"}.mw-parser-output .citation:target{background-color:rgba(0,127,255,0.133)}.mw-parser-output .id-lock-free a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-free a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/65/Lock-green.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-limited a,.mw-parser-output .id-lock-registration a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-limited a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-registration a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d6/Lock-gray-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .id-lock-subscription a,.mw-parser-output .citation .cs1-lock-subscription a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/a/aa/Lock-red-alt-2.svg")right 0.1em center/9px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-ws-icon a{background:url("//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/4/4c/Wikisource-logo.svg")right 0.1em center/12px no-repeat}.mw-parser-output .cs1-code{color:inherit;background:inherit;border:none;padding:inherit}.mw-parser-output .cs1-hidden-error{display:none;color:#d33}.mw-parser-output .cs1-visible-error{color:#d33}.mw-parser-output .cs1-maint{display:none;color:#3a3;margin-left:0.3em}.mw-parser-output .cs1-format{font-size:95%}.mw-parser-output .cs1-kern-left{padding-left:0.2em}.mw-parser-output .cs1-kern-right{padding-right:0.2em}.mw-parser-output .citation .mw-selflink{font-weight:inherit}ISBN 978-4101025018。  初版は1968年7月

外部リンク

『鼻』:新字新仮名 - 青空文庫

『鼻』 - 国立国会図書館デジタルコレクション

芥川龍之介「鼻」をめぐって - 早稲田大学リポジトリ

「鼻」論 : 「羅生門」を媒介として - 九大コレクション 。九州大学附属図書館

芥川龍之介「鼻」解釈論ノート - 九大コレクション 。九州大学附属図書館










芥川龍之介の作品
短編小説

老年 - 羅生門 - 鼻 - 芋粥 - 手巾 - 煙草と悪魔 - さまよえる猶太人 - 戯作三昧 - - 道祖問答 - 偸盗 - 蜘蛛の糸 - 地獄変 - 奉教人の死 - 枯野抄 - るしへる - 犬と笛 - きりしとほろ上人伝 - 魔術 - 蜜柑 - 舞踏会 - - 南京の基督 - 杜子春 - アグニの神 - 藪の中 - 神神の微笑 - 将軍 - 報恩記 - トロツコ - 魚河岸 - おぎん - 仙人 - 六の宮の姫君 - 漱石山房の冬 - 猿蟹合戦 - 雛 - おしの - あばばばば - 糸女覚え書 - 保吉の手帳から - 一塊の土 - 大導寺信輔の半生 - 点鬼簿 - 玄鶴山房 - 蜃気楼 - 河童 - 誘惑 - 浅草公園 - 歯車 - 或阿呆の一生
長編小説

邪宗門 - 路上
その他

三つの宝(戯曲) - 侏儒の言葉(随筆) - 文芸的な、余りに文芸的な(評論) - 西方の人 - 続西方の人 - 八宝飯(随筆)
関連項目

芥川龍之介賞 - 芥川文 - 芥川比呂志 - 芥川多加志 - 芥川也寸志
関連カテゴリ

芥川龍之介 - 小説 - 原作映画作品


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