『黒船』(くろふね Black Ships)は、山田耕筰が作曲したオペラ。『夜明け』(よあけ)というタイトルでも知られている。よく「日本人が作曲した最初のオペラである」といわれるが、これは正しくない。山田自身が『堕ちたる天女』『あやめ』という2つの1幕物オペラをこの作品の前に作曲しており、また、山田の作品以前にもいくつか小規模なオペラは作曲され、上演されていた。よって「最初のオペラ」というより「日本人が作曲した最初の3幕物で大規模なオペラ」もしくは「日本人が初めて作曲したグランド・オペラ」といった表現のほうがより作品の性質に近いと言えよう。 1920年代後半にアメリカのジャーナリストであるパーシー・ノエルから『黒船』と題した幕末の日米関係をテーマにした英語のオペラ台本を受け取り、シカゴ・シビック・オペラ 2008年2月22日、新国立劇場において若杉弘指揮、栗山昌良演出、お吉:釜洞祐子、吉田:星野淳、領事:村上敏明らによる序景を含む完全版の初演が行われた。こちらもダブル・キャストである[2]。 領事と書記官は、外国人という設定でありながら日本語で歌う。しかし、初登場のシーンの日本語はたどたどしく、次第に上達していく。また、2008年2月の公演では2人の会話や領事の独白は時折英語まじりになっていた。 標準的な三管編成のオーケストラにハープ、チェレスタが加わる。舞台上のバンダとして三味線と太鼓など。浪人たちが登場する時は尺八が吹かれる。 本来アメリカで初演される予定だったので、アメリカ人に日本の文化や当時の様子を理解してもらうためにつけられた部分である。山田耕筰自身は「可視的序曲」と呼んだ。盆唄の独唱者が朗々と歌うと盆踊りが始まる。熱狂のるつぼから次第に静かになり、パントマイムで吉田とお吉の恋仲、浪人達の様子などを描き出し、突如下田が火事と地震に見舞われた様子を描く。第1幕へはアタッカで入る。 1856年8月、下田のお茶屋伊勢善。アメリカとの開港条約に調印し、函館と下田が開港したことについて伊佐と町奉行が不安げに話している。芸者のお松が呼ばれて酒宴を盛り上げる。突如深編み笠の浪人たちが現れ一時騒然とするが何も起きない。お吉の歌声が聴こえて来て一同は色めき立ち、お吉は「不思議やあら不思議やな」とアリアを歌い上げる。そこへ吉田が現れ、奉行らに詰め寄る。しかし幕府の使いが現れて外国人に危害を加えるものは磔の刑に処すというお達しを届ける。吉田は立ち去る。お吉がお茶屋のそばの道を歩いていると上陸したばかりの領事がやってくる。領事はアリア「おお、うるわしの日本よ」を歌い、お吉に奉行所への道を尋ねる。お吉は領事に好感を抱くが、吉田がお吉を呼びつけ、短剣を仕込んだ白扇で領事を暗殺するよう強要する。お吉は彼の要求を受ける。 1857年春、お茶屋伊勢善の大広間。
作曲の経緯
初演
序景のみの初演:1931年、レニングラード(現サンクトペテルブルク)において、作曲者指揮によりコンサート形式で行われた。
『夜明け』というタイトルで第1幕から第3幕のみの初演:1940年11月25日、作曲者の指揮・演出、お吉:辻輝子、吉田:伊藤武雄、領事:藤原義江というキャストで行われた。なお、ダブル・キャストである。ちなみに、姐さんは杉村春子が担当した。杉村が選ばれたのは、元オペラ歌手志望で新劇で活躍した彼女の声を、山田が日本語でオペラを歌うのにうってつけだと考えたことによる[1]。
完全版初演
登場人物
お吉(ソプラノ):下田で美人で歌がうまいと評判の女性。
お松(メゾソプラノもしくはソプラノ):売れっ子芸者。
姐さん(メゾソプラノ):お吉の養母であり相談相手。
吉田(バリトン):浪人。尊王攘夷派。お吉に領事暗殺を命令する。お吉の恋人。
領事(テノール):アメリカの駐日総領事。「コンスル」と名乗る。お吉と恋に落ちる。
伊佐新次郎(バリトン):支配組頭。
書記官(テノール):領事の部下で遊び人。
町奉行(バス):下田奉行。
盆唄・舟唄の独唱者(テノール)
第1の浪人(テノール)
第2の浪人(バリトン)
第1の漁師(テノール)
第2の漁師(バリトン)
第1の幕吏(テノール)
第2の幕吏(バリトン)
火の番(テノール)
下田の人々 ほか(合唱)
楽器編成
作品の概要
序景
第1幕
第2幕
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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