麻薬
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ケシ果実(いわゆるケシ坊主)に傷をつけて、アルカロイド樹脂を採取する

定義と代表薬物の対応薬物定義
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アヘン○○○
モルヒネ○○○
ヘロイン○○○
コカイン×○○
大麻×○○
THC×○○
アンフェタミン
覚醒剤)×××
LSD××○
MDMA××○
脱法ドラッグ×××
タバコ×××
アルコール×××
凡例

○相当する

△議論の余地あり

×相当しない

麻薬(まやく、英語: narcotic、痲薬とも)とは、通常はモルヒネヘロインのようなケシから生成される麻薬性鎮痛薬のオピエートオピオイドを指すが(定義1)、法律上の用語として、法律で規制された薬物を指して用いられることもある用語である(定義2)[1]アメリカ合衆国カナダの規制法によれば、オピオイドだけでなく、コカイン大麻を含む[1]。日本ではさらに麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)における、「日本の法律上の麻薬」の語が、それらとも異なって使用されている(定義3)。薬物全般は薬物 (drug) を参照。

国際的には向精神薬であるLSDのような幻覚剤の多くは「日本の法律上の麻薬」であり、一方で大麻は大麻取締法覚醒剤覚醒剤取締法が別個に規制する[2]。したがって、致死性、依存性の有無、身体的な離脱症状を生じる身体的依存の有無、離脱症状が致命的となるか否かの異なった薬物が、その含有する意味合いにより異なって含まれてくる、そうした薬物の総称である。医師などによる適正な投与以外の使用は禁止されている。医療目的における用途は鎮痛が多い。

依存性や致死性の高いアヘンコカインなどの麻薬は、国際協力の元で厳しく規制されている。従来、白人の植民地主義によるアヘン売買が問題となり、1912年には万国阿片条約が公布された。条約に並行して、同種でより強力なバイエル社の医薬品ヘロインが出回ったがこれも1920年代には厳しく扱われる。1961年の麻薬に関する単一条約が先の条約を引き継いだが、欧米で再び密造のヘロインが流通し、敵対勢力が生産したものだが、当のアメリカ合衆国の中央情報局が流通に関わり秘密資金としていることも明らかとされた。このようにして、1971年にアメリカのニクソン大統領が、麻薬戦争(薬物戦争)を宣言した。規制されていることで多額の利益を上げるものとなっており、反政府勢力や私兵組織、テロリストなどが生産に関わり、集団犯罪組織である暴力団黒社会ギャングマフィアなどが流通させ、重要な資金源となった。
定義や法

世界保健機関 (WHO) の用語集では、麻薬(narcotic)の語は昏迷・昏睡、痛みに対する無感覚を誘発する化学物質で、通常は麻薬性鎮痛薬のオピエートオピオイドを指すが、法律上の用語として他の薬物を指す場合があるため、より具体的な意味を持つオピオイドの用語を用いている[1]。麻薬(narcotic)の語は、規制された薬物を指して用いられる場合もあり、アメリカ合衆国やカナダの規制法によれば、オピオイドだけでなく、コカインや大麻を含む[1]。国際条約としての規制の根拠は、1961年の麻薬に関する単一条約である[1]

Narcotics の日本語翻訳として麻薬があてられた。痲薬とも書くが、1949年昭和24年)の当用漢字制定以降は、表記は「麻薬」に統一されている。
医学上

歴史上かつ医学上の麻薬の定義で、麻酔薬のアヘン類のことを指す。

アヘン剤とは、モルヒネヘロインコデインなど、ケシの実から抽出されるアルカロイドを合成したオピオイド系の薬物のことである。昏迷状態を引き起こす抑制薬であり、酩酊多幸感などをもたらす一方、強力な依存性があり、急速に耐性を形成し、身体的な離脱症状を生じる身体依存を形成する。とりわけ作用量と致死量が近い薬物で危険性が高い。
国際条約上の定義

1912年の万国阿片条約から、1961年の麻薬に関する単一条約による麻薬の定義で、医学的な定義に大麻とコカインを追加したものである。国際的な定義である。

1912年の万国阿片条約では、アヘンやモルヒネ、またコカイン、またこれらと同様の害悪を引き起こす物質を規制した[3]。その後、この条約が1925年に改定された時に、アジアやアフリカなど大麻の使用習慣のある国が消極的であったが、エジプトの提案でインド大麻も規制に追加された[3]。第二次世界大戦を経て国際連盟が解体し、引き継ぐ国際連合による1961年の麻薬に関する単一条約(Single Convention on Narcotic Drugs)によって、同じような分類で麻薬―Narcotics―が国際的な管理下に置かれた[4]。さらに、後続の国際条約である1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約(Convention Against Illicit Traffic in Narcotic Drugs and Psychotropic Substances)の、第1条n項において、「麻薬」とは1961年の条約にて指定されたものであると定義されている。

大麻の鎮痛作用はモルヒネなどより弱いが、致死量は不明であり、身体依存はなく離脱症状も軽度であり、有害性の異なった薬物である。またコカインはオピオイドや大麻とも異なり、興奮作用がある精神刺激薬であるが、注射部位に局所麻酔作用がある。
日本の法律上の定義

日本の法律上の便宜による、麻薬及び向精神薬取締法(現通称および旧名: 麻薬取締法)における「麻薬」の定義。

まず日本では、大麻繊維産業があったことから1948年に別個に大麻取締法を制定しており、戦後に乱用が問題となった覚醒剤類は覚醒剤取締法にて規制されている[5]。1970年には麻薬取締法にLSDを追加し、日本の法律上の麻薬はほとんどが幻覚剤になっているとされる[5]。日本では、向精神薬に関する条約の付表Iの、そのほとんどが幻覚剤であるものを、「日本の法理上は」麻薬としているということである[6]

この背景を詳しく説明すると、1961年の国際条約以降に乱用された薬物を規制するための、1971年の向精神薬に関する条約(Convention on Psychotropic Substances)が登場した。LSDのような幻覚剤や、覚醒剤やバルビツール酸系ベンゾジアゼピン系抗不安睡眠薬が国際的な管理下に置かれた。向精神薬に関する条約において、医療的な価値がないとみなされた幻覚剤のような薬物は付表(スケジュール)Iに、それ以外の覚醒剤や睡眠薬は危険性により付表II以下に指定されている。後続する1988年の麻薬及び向精神薬の不正取引の防止に関する国際連合条約の第1条r項において、「向精神薬」とは1971年の条約の付表Iから付表IVまでの物質であると定義されている。すべて「国際条約上は」向精神薬である。

付表Iの物質は、欧州議会の報告書によれば次のように説明される。


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