麻しん
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Measles
morbilli, rubeola, red measles
麻疹発疹が現れた幼児
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
感染症
Patient UKMeasles
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麻疹ウイルス

麻疹(ましん、: measles, rubeola、痲疹、別名:はしか[1])とは、麻疹ウイルスによる急性熱性発疹性感染症[2]中国由来の呼称で、発疹がの実のようにみえる[3]。罹患すると、医療が整った先進国であっても死亡することもある[4]日本では「麻しん」として感染症法に基づく五類感染症に指定して届出の対象としており、疹が常用漢字でないため、平仮名を用いている。

江戸時代以降の日本語でははしか(漢字表記は同じく麻疹)と呼ばれる[3]。古くから「はしかのようなもの」の慣用句があり、「一度罹患すると二度はかからないため通過儀礼のようなもの」という意味で2度なし病とも呼ばれたが、麻疹ワクチンが普及した2000年代以降は言われなくなった[3]

麻疹は、麻疹ウイルス[注 1]によるものであり、その感染力は極めて強く、同じ空間に患者と居るだけで感染してしまい、マスク手洗いでもウイルス侵入は防げない。感染経路空気感染飛沫感染接触感染と多彩である。

麻疹に関して麻疹ワクチンを含んだ予防接種は、効果がある唯一の予防法であり、世界では予防接種の実施により、麻疹による死亡を2000-2013年の間に75%減少させた。世界のおよそ85%の児童は予防接種を受けている。患者に接触してから3日以内であれば、麻疹ワクチンの接種により発病を予防できる可能性があり、患者に接触してから6日以内であれば、ガンマグロブリンの注射により発病を予防できる可能性がある[5]

一度罹患するかワクチンによって抗体価があるうちに感染すると、症状は出ず抗体価が再び上昇するブースター効果がかかる。一方で、現代では抗体価が減少し続けて、麻疹に再感染することがある[3]。ワクチンによる獲得免疫の有効期間は約10年とされるが、ブースター効果による追加免疫が得られないこともある。

発病(発症)してからの治療法はなく、対症療法が行われる[6]。先進国における栄養状態の改善、対症療法の発達によって死亡率は0.1-0.2%である[7]

世界の患者数は年間20万人ほどであり[2]、主にアジアアフリカ途上国である[6]世界保健機関(WHO)は、2018年の感染者が少なくとも22万9000人おり、未報告分を含めると200万人以上と推計している[8]。持続的な流行が一定期間ない「排除状態」とWHOに認定された国でも、再流行により認定が取り消されることもある[9]

流行株の変異によって、麻疹ワクチンで獲得した抗体での抑制効果が低くなることが懸念されている。定期的に流行しており、江戸時代でも13回の大流行があり、ワクチン時代の2007-2008年に、日本で1万人の罹患者を超える大流行が起きた[3]目次

1 臨床像

1.1 診断

1.2 潜伏期間

1.3 カタル期

1.4 発疹期

1.5 回復期


2 合併症

2.1 脳・神経系の合併症

2.2 咽頭?気道系の合併症

2.3 その他


3 治療

3.1 民間信仰


4 予防

4.1 ワクチン接種

4.2 免疫の有無の調査

4.3 隔離


5 疫学

5.1 日本での麻疹ワクチン接種

5.2 2012年の麻疹排除計画

5.3 根絶宣言


6 歴史

6.1 近年における麻疹の日本での流行

6.1.1 2001年

6.1.2 2006年

6.1.3 2007年

6.1.4 2008年

6.1.5 2012年

6.1.6 2014年

6.1.7 2015年

6.1.8 2016年

6.1.9 2018年


6.2 近年における麻疹の日本国外での流行

6.2.1 アメリカ合衆国

6.2.2 フランス

6.2.3 イギリス

6.2.4 イタリア

6.2.5 ベトナム

6.2.6 サモア


6.3 千葉血清製ワクチンの抗体獲得性の問題


7 日本の関連法規

8 脚注

8.1 注釈

8.2 出典


9 参考文献

10 関連項目

11 外部リンク

臨床像 麻疹患者の発疹

流行には季節性があり、初春から初夏にかけて患者発生が多い。日本での患者数は推計で年間20万人程度とされ、患者報告数を年齢別に比較すると、2歳以下が約半数を占め1歳代が最も多い。次に6?11か月、2歳の順となる。小児以外の患者数は地域によるバラツキがあり、ワクチンによる抗体価[10]の低下した10歳代から20歳代前半が最も多く、次いで、20歳代後半の順である[11]

麻疹には、症状の出現する順序や症状の続く期間に個人差が少ないという特徴がある。ただし、免疫のある患者では、非典型的で軽症な経過をとることがある(修飾麻疹)。ワクチン接種歴により軽く済むといわれる。

母体からの免疫移行があり、生後9カ月頃までは移行免疫により発症が抑えられる。なお、抗体価が低下している女性が妊娠し、胎児が十分な抗体を持たず生まれ、生後5カ月以内で免疫が切れてしまうケースが報告されている。
診断 カタル期の典型的な症状であるコプリック斑を生じている頬の内側 咽頭周辺のコプリック斑

かつての日本ではカタル期や発疹期に現れる特有の臨床症状のみで診断することが多く行われていたが、後述の「2012年の麻疹排除計画」開始以降は、実験室内診断を重要視し「IgM抗体検査」或いは「遺伝子検査」が推奨されている。しかし、IgM抗体検査では伝染性紅斑の罹患に伴う血清中の麻疹ウイルスIgM抗体の陽転化が報告されている[12]ことから、可能な限り遺伝子検査を行うよう厚生労働省は通知を行った[13]


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