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「メン」はこの項目へ転送されています。映画については「MEN 同じ顔の男たち」を、ベトナムの餅麹については「メン (麹)」をご覧ください。
生麺(ラーメン)

麺(めん、Noodle)とは、穀類小麦粉蕎麦粉米粉[1]など)やデンプンなどを加えた生地を細く長く成形した食品
概要

麺または麺類は穀物などの粉を練って作る加工食品の一種であり、原料としては小麦粉蕎麦粉米粉片栗粉タピオカなどの穀物粉が主体となるが、細長い形状をした加工食品であれば原料によらず「麺」と名付けられて供される場合がある[2]穀物を主原料とする麺は主食とされる場合が多い。様々な調味料や具材、副菜とともに食されるが、麺の生地にビタミンミネラル食物繊維などを練り込んで栄養バランスを確保する製品も開発されている[3]

麺という字は中華圏の「麺(繁体字:?、簡体字:面)」(.mw-parser-output .pinyin{font-family:system-ui,"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}.mw-parser-output .jyutping{font-family:"Helvetica Neue","Helvetica","Arial","Arial Unicode MS",sans-serif}?音: mian)に由来し、小麦粉そのもの、または小麦粉を練って作った食品を指していた[4]。日本に伝来したのは奈良時代頃と考えられており、当時は「菓子」と呼ばれて仏教儀式などに用いられた[4]

また、英語では小麦粉に水を加えて調製したものをドウ(dough)といい、これを応用した料理は薄く伸ばして餡などを包んだ料理(ダンプリング、dumpling)と、切る、伸ばす、ちぎる、穴や型から押し出すなどの方法で成形した料理(ヌードル、noodle)に大別される[5]。日本語の「麺」は後者に相当するものを指す[5]

日本においては製造工程や製法などにより様々に分類されて呼称されるが、大別すると生めん類、乾めん類、即席めん類、マカロニ類(スパゲティ類)、冷凍めん類の5つに分けられる[4]
生めん類
公取協連合会では『生めん類の表示に関する公正競争規約』の中で生めん類について「小麦粉の穀粉類を主原料として製めん、成形したもの及び製めん、成形した後加工したもの」と定義し、うどんそば中華めん生マカロニ類生スパゲッティ類ソフトスパゲッティ式めん、大麦めん、大麦そば、冷めん米粉めんぎょうざの皮等を挙げている[6]
乾めん類
消費者庁は『乾めん類品質表示基準』の中で乾めん類について「小麦粉又はそば粉に食塩やまのいも抹茶等を加えて練り合わせた後、製めんし、乾燥したもの」またはこれに「調味料、やくみ等を添付したもの」と定義している[7]
即席めん類
公取協連合会では『即席めんの表示に関する公正競争規約及び施行規則』の中で即席めんについて「小麦粉またはそば粉を主原料とし、これに食塩またはかんすいその他めんの弾力性、粘性を高めるもの等を加えて練り合わせた後、製めんしたもののうち、添付調味料を添付したもの又は調味料で味付けしたものであって、簡便な調理操作により食用に供するもの」と定義している[8]。なお、かん水の代替としては成分でん粉がアルファ化されているものに限っている[8]
マカロニ類
消費者庁は『マカロニ類品質表示基準』の中でマカロニ類について「デュラム小麦セモリナ若しくは小麦粉又は強力小麦のファリナ若しくは普通小麦粉に水を加え、これに卵、野菜等を加え又は加えないで練り合わせ、マカロニ類成形機から高圧で押し出した後、切断し、及び熟成乾燥したもの」と定義している[9]。また上記定義の中で形状や太さによって条件に合致する場合はスパゲッティ、バーミセリー、ヌードルの呼称が認められている[9]
冷凍めん類
消費者庁は『調理冷凍食品品質表示基準』の中で冷凍めん類について「調理冷凍食品のうち、小麦粉又はそば粉を主原料とし、これに食塩、かんすい等を加え練り合わせたものを製めんした後、蒸し、又はゆでること等の加熱処理をしたもの」またはこれに「調味料で味付け、若しくはかやくを加え調理したもの、又は調味料若しくはかやくを添付したもの」と定義している[10]
発祥

麺の主たる原料である小麦は東地中海沿岸イラン西部、イラク東部、トルコ南部および東部)がその起源とされているが[11]、寒冷地から熱帯地方まで広範囲で栽培が可能だったこと、水と混ぜることでグルテンが生成され、粘り気と弾力性に富んだ性質が多様な食品への加工に適していたこと、という大きな二つの理由により世界的な普及を見せた[12]。最初に栽培が行われるようになったのはメソポタミアで、紀元前9000年?7000年頃と考えられている[13]。そのまま食すことに適さない小麦は、栽培当初はとして食されていたと考えられているが、食感などを求めて小麦粉を練って生地を作ってパン無発酵パン・発酵パン)として食す方法や、練った生地をちぎってすいとんのように食す方法が広まると、様々な形状への加工が行われるようになり、その過程で細長く形づくられたものが麺にあたると考えられている[14]が、諸説あり定かではない。

中国大陸に小麦が伝わったのは前漢紀元前1世紀前後)時代に西方との交易路が開けてからであると言われているが、他の穀物を使った麺が地中海地域で小麦粉のものに変えられた可能性も考えられる。現在までに発見された最も古い麺類の遺物は、中国青海省民和回族トゥ族自治県喇家遺跡で発見された。これはおよそ4000年前のものであり、麺は小麦粉ではなくで作られていた。現在カザフスタンキルギスタジキスタントルクメニスタンウズベキスタンなど中央アジアで広く食されているラグマンラーメンの語源とも言われているが、シルクロードを伝播し中国大陸に広まった際に鹹湖(塩水湖)の水を使用してラグマンを作ったのが中華麺の始まりとも言われ、現代においても製麺工程で使用される塩基性塩をかん水と呼ぶのもこの名残からとされている[15]

他に、栽培小麦発祥の古代メソポタミアから遊牧民によって餃子の形(アフガニスタンのオシャク、新疆ウイグル自治区のジュワワ)で伝わり、華北で皮が分かれて麺條(生地を細長く伸ばしたもの)が生まれたとするものもある[16]

一方でヨーロッパで広まったデュラム小麦からはパスタが作られるようになるが、イタリアチェルヴェーテリにあるエトルリア人の遺跡からおよそ2400年前の製麺器具が発見されている他、古代ローマ時代の文献の中でラガーナと呼ばれる焼いて食べるパスタについての記述が見つかっていることなどから古くから食文化として麺を食す習慣が広まっていたと考えられている[17]。しかし4世紀頃のゲルマン民族の侵攻により食肉文化が広く浸透してパスタなどの食文化は衰退し、再び登場するのは13世紀末のフラ・サリンベネの『年代記』であった[18]
中華圏における麺詳細は「中国の麺類」を参照

後漢の『説文解字』には「麺」の本字である「麪(ミェン)」は麦の粉とある[19]の『広韻』も西晋の束ルの『麪賦』を引いて重羅の麺は埃のように細かく雪のように白い[20]と記し、「?」は同上としている。「?」は「麪」の音を表す部品「?」を同音の「面」に置き換えた異体字である。日本の餅とは違い、穀粉の生地をいう。『説文解字』に「餅(ビン)」は小麦をこねた食べ物とある[21]。加熱法で蒸餅、焼餅、油餅、湯餅に分類された。北魏の『斉民要術』には水引という、水中で餅を延ばして麺を作る方法の記述がある。時代に2年三毛作などにより小麦が大量に収穫できるようになり、宋 (王朝)時代には南北の食文化の複合がおきて現代の麺料理の原型が誕生した。宋・元時代の『居家必用事類全集』には14種類の麺料理の記述がある[22]

現代の中華人民共和国および中華圏でも、「麺(簡体字:面)」(ミェン)は小麦粉を指し、「麺食」と言えば、粉食全般を指す。これには、餃子(ぎょうざ)や中華まんなど饅頭点心も含んでいる。例えば、パンは「麺包」(ミェンパオ)であるが、ラーメンやうどんのような日本語で麺と呼ぶ長細い形状の食品は、「麺条」(繁体字:(?條、簡体字:面条。ミェンティアオ)と呼称する。一方で中国語では、蕎麦ビーフンなど小麦粉以外を使った物は本来「麺」として扱われず、米粉をこねて細長く加工したライスヌードルや、澱粉を使う春雨などは「粉」(フェン)と呼ばれ、区別される。
日本における麺素麺の乾麺

遣唐使唐菓子と果餅を持ち帰ったことが、日本での麺と菓子の始まりとされる。平安時代天皇勅使に「はくたく(??)」という平たい麺類が振舞われたという記録がある[23]。現在でははくたくうどんとも呼ばれ??#語源(ほうとう)のルーツである。

鎌倉時代から室町時代にかけては、留学僧によって宋の麺料理が伝来し、現代のそばうどんそうめん冷麦のもととなった。江戸時代までにこれらの麺料理は大衆料理として親しまれるようになっていった。明治時代に入り内外の往来が活発化するにつれ、うどん、そば、そうめん、冷麦といった伝統的な麺類のほか、中国の麺料理から派生したラーメン、ヨーロッパのパスタ類も一般化し、現代では様々な麺食品が愛好されている。それぞれの麺料理に関しても、にしんそば讃岐うどん、あるいはたらこスパゲッティをはじめとする独特の派生料理が登場している。また、揚げて保存性、加工性を持たせたインスタントラーメンが開発されて以来、うどん、そば、焼きそばについてもインスタント食品としての商品開発が進み、国内のみならず世界各国で一大市場を築いている。
イタリアにおける麺様々なロングパスタ詳細は「パスタ」および「スパゲッティ」を参照

イタリアにおいては「パスタ・アリメンターレ」などと称され、年間319万トンもの生産が行われ、1人あたり年間30キログラムの消費がなされる国民食とも呼べる加工食品である[24]。ギリシャから伝播した小麦(パン)とオリーブは紀元前には広く浸透し、古代ローマ時代には既にパスタが存在していたとされているが、ゲルマン民族の侵攻に伴うローマ帝国の滅亡とともに農業や食文化も破壊され、パスタは歴史の表舞台から姿を消してしまうこととなる[25]。13世紀から14世紀に入るとサリンベネの『年代記』や北イタリアを中心とした様々な地方のレシピ集などに少しずつパスタと思われる料理の料理法などが登場するようになり、祝祭や記念日などに食されるようになったと考えられている[26]都市国家として各地方が独特の文化を育んでいったイタリアは食文化も気候や風土によって色濃い特徴が出るようになると、16世紀半ばから17世紀にかけてジェノヴァナポリパレルモサヴォナローマなどの都市で相次いでパスタギルドが形成され、品質や規格、製造方法、価格、販路などが独自に規定され、都市ごとの独特の文化が醸成され、今日のイタリアパスタの多様性を生み出した[27]

19世紀末の統一国家の成立後、こうした「地方料理」であった様々なパスタを丹念に収集・分類したペッレグリーノ・アルトゥージは1891年に『イタリア料理大全(イタリア語版)』を上梓し、イタリア料理としてのパスタを確立させた[28]
性質茹で上がったうどん。モチモチとした食感が特徴である。

麺は主とする原材料に左右されるものの、基本的にデンプンタンパク質で構成されており、これらの成分の性質の違いが麺の食感や粘弾性に強く寄与する。
デンプンの性質
例えば小麦粉のデンプンの場合、グルコースアミロースアミロペクチンという2種類の分子構造から成っているが、これらは糊化(アルファ化)、老化(ベータ化)させた場合の性質が異なるため、アミロペクチンが多いデンプンほど、加工した時にモチモチした食感が期待でき、アミロースが多いデンプンほど、ドロっとした食感が期待できる[29]


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