鹿男あをによし
著者万城目学
イラスト石居麻耶
発行日2007年4月10日
発行元幻冬舎
ジャンルファンタジー小説
国 日本
言語日本語
形態四六判
ページ数394
公式サイト ⇒www.gentosha.co.jp
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ISBN 978-4-344-41466-2(A6判)
ウィキポータル 文学
『鹿男あをによし』(しかおとこあをによし)は、日本の小説家・万城目学のファンタジー小説である。
奈良の女子高に赴任した教師が奈良公園の鹿に命を受け、日本の滅亡を防ぐために奮闘する物語。タイトルの「あをによし(青丹よし)」は「奈良」につく枕詞。
2007年4月10日に幻冬舎より刊行され、2007年夏には第137回直木賞候補になった。さらに2008年1月には第5回本屋大賞の候補10作品にノミネートされた。発行部数は当初7万部と発表されていたが、2009年3月現在では20万部を突破した。2010年4月6日には幻冬舎文庫が刊行された。
2008年にテレビドラマ化され、漫画化もされた。 9月、「おれ」はひょんなことから大学の教授に勧められ、2学期の間限定で奈良の女子高の教師になる。しかし、生徒にからかわれたり、無視されたりとコミュニケーションが取れず、途方に暮れる。そうして迎えた10月。奈良公園の大仏殿裏にいた「おれ」の前に突如鹿が現れ、人間の言葉で話しかけてきたのだ。実はその鹿は1800年前から人間を守りつづけてきた存在で、60年に1度行われる「鎮めの儀式」で用いる目を運ぶ役(「運び番」)に「おれ」を任命する。目は人間界で「サンカク」と呼ばれ、狐の「使い番」を任せられた女性から渡されると話す鹿であったが、「おれ」は「使い番」に気づかず、挙句に違うものを渡される。鹿は「目を鼠に奪われた」と言い、状況が理解出来ない「おれ」に印をつけ、「おれ」の顔を鹿にしてしまう。そして鹿は「目を取り戻さないと日本が滅びる」と警告するのであった。ちょうど同じころ、東では火山性微動が続き、富士山が噴火する兆候にあった。 一方、勤務する高校では年に一度のスポーツイベントである姉妹校との交流戦「大和杯(やまとはい)」が行われようとしていた。そして「おれ」は大和杯の剣道部門の優勝プレートが「サンカク」と呼ばれていることを聞く。剣道部の顧問になった「おれ」は、そのプレートこそ、鹿が言っていた目であると考え、人類を危機から救うために目を取り戻そうと優勝を目指すのだが、思わぬ事態が待ち構えていた。 平城宮跡の隣に建てられた学校で「おれ」が勤務することになった場所。シンボルは鹿。 平安京大内裏の近くに建てられた学校。奈良女学館の姉妹校。シンボルは狐。 難波宮跡の隣に建てられた学校。奈良女学館の姉妹校。シンボルは鼠。
あらすじ
作中用語
鎮めの儀式
地中には大鯰がいて、時々大暴れをして災害を起こすという言い伝えがある。卑弥呼(ヒミコ)に仕えていたという奈良の鹿、京都の狐、大阪の鼠は卑弥呼の死後、1800年に渡って目の力を使い、大鯰が暴れるのを封印していた。彼らは60年に一度、神無月になると、「運び番役」と「使い番役」の人間を介して、目を神の目が届かない場所に遷し、また自らも目の力を手に入れて鯰の動きを鎮める。この儀式は満月の夜に行われなければならず、満月以外の場合では目の力が衰え、封印に時間がかかるという。そして、神無月に儀式が行えなかった場合に日本全体が大変なことになってしまう。実際に約300年前には鼠が「使い番」をなかなか決めなかったため、満月の夜に儀式が行えず、人間世界が大変なことになってしまったという。
大和杯
奈良、京都、大阪の女学館三校にて行われるスポーツイベント。学校創立の60年前(ただし、史実では戦後すぐのこの時代はGHQによって学校における剣道は禁止されていた)から続いていて、毎回オリンピック並の盛り上がりをみせる。元は剣道部のみの交流戦であったが、現在はバドミントンなど他のスポーツも行われている。しかし、この名残で剣道部は優勝カップではなく、鹿、狐、鼠があしらわれたプレートが使われ、形状から「サンカク」と呼ばれている。大会は各校持ち回りで、開催校は自分たちの学校が盛り上がるように各大会のルールの選択が自由にできる。これまで剣道は京都の独擅場で、過去59回すべてで優勝している一方、「おれ」が顧問を勤める奈良は、部員が3人しかいない弱小チーム。これまでは剣道の経験がない教師が他の部活と顧問を掛け持ちしていた。
登場人物
奈良女学館高等学校
おれ
主人公兼語り部。原作において、本名不明。28歳。大学の研究室で実験をしていたが、助手との折り合いがつかず、「神経衰弱」とのあだ名をつけられている。そのせいもあり、腹が弱く整腸剤が欠かせない。准教授を目指す助手の研究の邪魔になるため、今回、悠久の地、奈良に行くことを薦められたが、鹿から「目の運び番」に任命されたり、さらには役目を失敗して顔が鹿にされたりとありえない事態に遭遇してしまう。ただし、この秘密を知るのは自分とある特定の人物のみで、それ以外の人間には、鹿になった姿が見えない。また、しゃべる鹿のことや運び番、使い番の話を伝えることができない。ドラマ版と漫画版では「小川孝信(おがわ たかのぶ)」という名前になっている。
堀田イト(ほった イト)
ヒロイン。16歳。古風な名前だが、当校の生徒。しかし、「おれ」の授業一日目から遅刻をしたり、腹いせにクラスメートを扇動して「おれ」を攻撃するなど、水と油の関係。実はあることに「おれ」より早く気づいていて、そのことで悩んでいた。どの部活にも属していなかったが、「おれ」が顧問になった剣道部に入部することになる。実家が剣道の道場を経営していて、腕前はかなりのもの。その顔立ちから「野性的魚顔」と表される。名前は姓が「坊つちやん」に登場する山嵐の本名に、名前は邪馬台国・卑弥呼の後継者「壱与(イヨ)(または台与(トヨ))」に由来。
小治田(おはりだ)
教頭。校長が京都女学館にいる事が多いため、実質的には奈良女学館の最高責任者である。ダンディーな出で立ちで生徒だけでなく保護者にも人気がある。紳士的な振る舞いで「おれ」を励ます一方、古くから彼を知っている人間からは「野心家」と言われている。考古学に精通し、遺跡発掘をライフワークにしている。本を何冊も書いており、特に邪馬台国の所在地を探ることに心血を注いでいる。あだ名は「リチャード」。名前は小墾田宮に由来。
福原重久(ふくはら しげひさ)
33歳。美術教師。通称「重さん」。「おれ」が下宿している家の「ばあさん」の孫。祖父、父と、3代続けて美術家を生業としている。物静かでインドア派。生徒の人気はリチャードと二分する。落語好きで、通勤時には車で毎日聴いている。名前は福原京に由来。
藤原君(ふじわら くん)
25歳。歴史教師。妻子持ち。神経衰弱な「おれ」を何かと気遣う能天気な性格。古代史
大津(おおつ)
3つの女学館校長を兼任。禿げ上がった頭が印象的だが存在感があまりない。京都に住んでいるので普段は京都女学館に出勤し、奈良には週に1、2度しか来ていない。実家は京都の料亭「狐のは」を経営しており、姉はその女将を勤めている。名前は大津京に由来。
京都女学館高等学校
長岡(ながおか)
数学教師で剣道部顧問。教師の間からは「マドンナ」と呼ばれる美人。実は重さんに惚れている。実家は道場を経営、自らの腕前は4段。名前は長岡京に由来。
大阪女学館高等学校
南場(なんば)
体育教師で剣道部顧問。かつてマドンナにプロポーズをして失敗し、その時にマドンナの意中の相手を聞いている。剣道5段の腕前で打倒京都に意欲を燃やす反面、弱小奈良には見下した態度をとっている。名前は難波京に由来。なお、後発の『プリンセス・トヨトミ』にも登場しており、名が「勇三」となっており、歳が34であることが明らかになる(下記参照)。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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