湖沼(こしょう)は、周囲を陸に囲まれ海と直接連絡していない静止した水の塊である(一部の例外を除く)。語義では湖沼のうち比較的大きなものを湖、同様に比較的小さなものを池あるいは沼と呼ぶが、学問上は様々な定義や分類が行われてきた(後述)。目次
1 概説
1.1 湖沼学上の分類
1.2 地名との関係性
2 湖沼の形成要因
2.1 地殻変動
2.2 火山活動
2.3 氷河
2.4 その他自然的要因のもの
2.5 人工的なもの
3 湖沼の変化
3.1 湖盆地形の変化
3.2 古代湖
4 湖沼の温度
4.1 二循環湖の季節変動
5 湖沼の水質
5.1 湖沼型による分類
5.2 その他の水質による分類
6 湖沼の色
7 湖沼の生物
7.1 陸地
7.2 水辺
7.3 沖合
8 環境問題
9 湖における経済活動
10 湖に関連する地形
11 関連項目
12 脚注
13 参考文献
14 外部リンク
概説 断層湖の諏訪湖 沖縄県の玉泉洞
陸水は陸氷、地下水、地表水に分けられる[1]。地表水は流水または静水として存在し、静水が滞留する凹地を「湖沼」、水が滞留する凹地を「湖盆」と呼ぶ[1]。一方、地下水に関しては地下河川を通じて地底湖などの水域が形成される[2]。 湖沼学では湖沼を湖(深い水底を持ち少なくとも中央部に水生植物が生えないもの)、沼(浅い水底でその全面で水生植物(沈水植物)の生育が可能なもの)、沼沢(ごく浅い水底で抽水植物が全面に繁茂するもの)に分ける[1]。また、池は人造の静水域のことをいう[1]。 ただし、歴史的には様々な分類が行われており諸説存在する。 1876年(明治9年)の『地所名称区別細目』においては陸地の一か所に水が滞留したもので天然の広くて深いものが湖、浅くて底が泥質のものが沼、平地を掘りまたは谷を堰き止めて人工的に造られたものが池とされている[1]。日本の淡水生態学の開祖とも言える上野益三は小型で浅く全水面に沿岸植物が広がっているものを沼とし、人工施設によって全貯水量を管理できるものを池とした。 湖沼学上の分類は固有の地名には当てはまらない[1]。例えば湖沼学ではカスピ海は世界最大の湖である[1]。また、奥日光の菅沼(最大水深92m)などは水深の深い湖である[1]。ただ、福島県の「沼沢沼」が「沼沢湖」、静岡県の「狸沼」が「田貫湖」となるなど改称する池沼も増えている[1]。 なお、日本では河川法によって、ほとんどの湖沼は「河川」として名称と範囲が指定されている。だが、実際の「湖沼」がどのようなものかについて、法令による定義はない[3]。 何らかの要因で陸地内部に窪地が形成され、なおかつそこに水がたまることによって湖沼が形成される。要因として以下のような例を挙げることができるが、複数の要因が複合して形成されたものや形成要因がはっきりしない湖沼もある。陸水学者のエブリン・ハッチンソンは、湖沼の形成要因を地殻変動(構造湖)、火山活動(火山湖)、氷河活動(氷河湖)、その他の4種類に分類した。 日本においては陸水学者の吉村信吉が要因を侵蝕盆地、堰塞盆地、爆裂盆地、構造盆地に分類している。また、同じく陸水学者の田中正明は侵蝕作用(水蝕湖、氷蝕湖、溶蝕湖)、堰止湖(火山、氷河、川、地すべりなど)、火口湖、構造湖(褶曲湖、断層湖、カルデラ湖)に分類している。
湖沼学上の分類
スイスの陸水学者フランソワ・フォーレルの説では、中央部において沿岸植物の侵入を受けない深さをもつものを湖とし、水底の植物がいたるところで繁茂するものを沼とした。
アメリカの動物学者ポール・ウェルチの説では、波をかぶる不毛の岸をもつものを湖とし、湖が小さく浅く変化したものや人工的なものなどを池とした。
A. J. ホーンとC. R. ゴールドマンの説では、主として風によって混合されるものを湖とし、主として対流によって混合されるものを池とする分類方法を提唱している。
地名との関係性
湖沼の形成要因 日本で最高所(標高2,905 m)の湖沼である御嶽山の二ノ池(火口湖)
地殻変動
断層
地殻の一部が分断されて上下にずれると高低差が生じて窪地が形成される。単一の断層によって形成される場合(例:アルバート湖)と、多数の断層によって形成される場合(例:バイカル湖、タンガニーカ湖、死海、琵琶湖)とがある。