鶏肉
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鶏肉。生の状態。鶏の唐揚げ鶏肉ハム(リヨネ)。パプリカ味。アメリカケンタッキーフライドチキン

鶏肉(とりにく、けいにく)またはチキン英語: Chicken)とは、ニワトリ食肉である。
概要

牛肉豚肉羊肉と並んで世界で日常的に食用にされる肉の一つである。

鶏肉は牛肉、豚肉と異なり、食のタブーに触れることが少ない食肉でもあり、世界中で広く消費されている。

鶏は最も代表的な家禽であり、日本では単に鳥肉といえば鶏肉を指すことが多い。

アメリカとカナダでは「チキンスープを飲むと風邪が治る」との言い伝えがある。近年、チキンスープの栄養には風邪の症状を和らげる作用があるという研究結果が発表された[1]

世界各国で食べられており、揚げる、煮る、蒸す、焼くなどさまざまな方法で調理されている。そのまままるごと「丸焼き」(ローストチキン)にすることもあれば、部位別に分けてから調理し料理に仕立てたり、あるいは一旦挽肉にしてつくねミートボール類)にするなどということも行われている。(#鶏料理の節で解説)
読み方、呼び方

常用漢字表では漢字の「鶏」は音読みが「ケイ」、訓読みが「にわとり」であるため、「鶏肉」を「とりにく」と読むのは表外読みであるが、新聞常用漢字表では2001年(平成13年)に「鶏」に「とり」という訓読みが追加されているため、マスメディアでは「鶏肉」を「とりにく」と読むこともある[2]

中部地方の一部や関西地方九州地方では鶏肉全般が「かしわ(黄鶏)」とも呼ばれる。「かしわ」とは本来褐色の羽色の日本在来種の鶏だが、それが鶏肉一般の名称に用いられるようになった(かしわめしかしわうどん)。

一方、香川県岡山県兵庫県播州地方では、「かしわ肉」というと老鶏(特に排卵を終えた雌鶏)の肉を意味し、これも販売され食されている。
歴史

そもそも野生の鶏は、もともと今のインドから東アジア(今の中国、タイ王国、カンボジア、ベトナム)あたりにかけて生息していて[3]、(年代ははっきりしないが)おそらくは7000年前後ほど前にそのあたりの地域のどこかで飼われはじめたのだろう、などと書かれている[3]

2008年に発表された論文では、現在の鶏はインド亜大陸の北部あたりで、(年代ははっきりしないが)何千年か前に飼われはじめたものであり、セキショクヤケイハイイロヤケイの交雑種だとされた[4]。2020年に発表されたゲノム研究の論文によると野生の鶏が飼われ始め家禽となったのは8000年前だという[5]

アメリカ合衆国では1940年代まで鶏肉は牛肉よりも貴重品であった[6]。だが第二次世界大戦中に牛肉や豚肉が不足したため、鶏肉の消費量が増加した。栄養学抗生物質の研究の進歩により大量飼育が可能になり、生産費用が下がったのは1950年代で、ケンタッキーフライドチキンもほぼ同時期に全米に展開しはじめた。

ヨーロッパではBSEの影響で、1996年に初めて鶏肉の消費量が牛肉や仔牛肉を上回った。

2017年には、日本ではそれまで消費量1位であった豚肉を抜き、鶏肉が消費量1位になった[7]
部位
胸肉胸肉。

鶏の翼の付け根から肩にかけての部位である[8]大胸筋にあたる。

NHKのサイトの解説によると、鶏むね肉は厚みがあるのでボリューム感を出したいおかずをつくるときに好適であり、フランスでは家庭向きの鶏料理といえば鶏胸肉を使用するのが一般的である[9]。価格も手頃でたっぷり鶏肉を味わいたいときにも良い[9]。脂肪分が少ない部位なので、チキンカツムニエルなどに良い。カロリーを抑えた料理にしたい場合も良い[9]。また、鶏肉の臭みもほとんど無い、という特徴もある[8]

次のような優れた成分を含んでいて、近年は健康食品としても注目されている[8]

イノシン酸(旨味成分)[8]

アンセリンカルノシン(抗酸化作用がある)[8]

イミダペプチド(疲労回復効果がある)[8]

「鶏胸肉」「鶏むね肉」「鶏ムネ肉」などの表記法がある。

鶏肉(broilers or fryers, leg, meat and skin, raw)100 gあたりの栄養価
エネルギー897 kJ (214 kcal)

炭水化物0.17 g
糖類0 g
食物繊維0 g

脂肪15.95 g
飽和脂肪酸4.366 g
一価不飽和6.619 g
多価不飽和3.352 g

タンパク質16.37 g
トリプトファン0.171 g
トレオニン0.729 g
イソロイシン0.742 g
ロイシン1.306 g
リシン1.438 g
メチオニン0.439 g
シスチン0.189 g
フェニルアラニン0.631 g
チロシン0.574 g
バリン0.768 g
アルギニン1.136 g
ヒスチジン0.466 g
アラニン1.001 g
アスパラギン酸1.544 g
グルタミン酸2.55 g
グリシン0.981 g
プロリン0.761 g
セリン0.663 g

ビタミン
ビタミンA相当量β-カロテンルテイン
ゼアキサンチン(4%) 28 μg(0%)0 μg91 μg
チアミン (B1)(6%) 0.073 mg
リボフラビン (B2)(12%) 0.141 mg
ナイアシン (B3)(32%) 4.733 mg
パントテン酸 (B5)(20%) 0.994 mg
ビタミンB6(24%) 0.318 mg
葉酸 (B9)(1%) 4 μg
ビタミンB12(23%) 0.56 μg
コリン(8%) 41.6 mg
ビタミンC(0%) 0.2 mg
ビタミンD(0%) 2 IU
ビタミンE(1%) 0.22 mg
ビタミンK(2%) 2.3 μg

ミネラル
ナトリウム(6%) 84 mg
カリウム(4%) 203 mg
カルシウム(1%) 9 mg
マグネシウム(5%) 19 mg
リン(22%) 155 mg
鉄分(5%) 0.69 mg
亜鉛(15%) 1.47 mg
マンガン(1%) 0.016 mg
セレン(26%) 18 μg

他の成分
水分67.3 g
コレステロール93 mg


単位

μg = マイクログラム (英語版) • mg = ミリグラム

IU = 国際単位

%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDI) の割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)
鶏肉のアミノ酸スコア[10][11]

鶏肉(100g中)の主な脂肪酸の種類[12]項目分量(g)
脂肪15.95
飽和脂肪酸4.366
14:0(ミリスチン酸)0.099
16:0(パルミチン酸)3.325
18:0(ステアリン酸)0.844
一価不飽和脂肪酸6.619
16:1(パルミトレイン酸)0.923
18:1(オレイン酸)5.543
20:10.095
多価不飽和脂肪酸3.352
18:2(リノール酸)2.987
18:3(α-リノレン酸)0.155
20:4(未同定)0.103

ささみ

胸肉に近接した部位であり[13][14]、鶏の胸骨に沿って左右1本ずつある小胸筋の肉である[14]。脂肪は少なく、タンパク質を多く含む[14][13]。そのような性質の部位なので、ダイエット食としても知られている[14]。肉質が柔らかいため、さっとゆでて、酒蒸し、サラダ和え物などに良い[13]。鶏1羽につき2本しか取れない部位なので、むね肉よりはそれなりに高めの値段で販売されている[14]

なお「ささみ」という呼称はその細長く伸びた形が笹の葉に似ていることに由来している。
もも肉

鶏のから足にかけての部分の肉[15]。脚の付け根から先の部分[16]脂肪を比較的多く含んでいる[16]。むね肉に比べると硬いが、旨味があるのが特徴[16]。タンパク質に加え、鉄分やビタミンB2も豊富に含まれる[15]

すね肉と一体で骨を付けたまま調理されることも多い。
すね肉

人間における膝下に相当する部位。「ドラムスティック」(Drumstick)と呼ばれ、骨付きのまま唐揚げや煮込み料理に用いられる。
手羽

翼の部分。英語ではウィングと呼ぶ。以下の3つの名称がある。
手羽先
肉はほとんどなく、多くが
ゼラチン質と脂肪である。このため、主にから揚げ煮込み出汁に使用する。人間の手首から指先までの部分に該当する。
手羽中
肉と共にゼラチン質部分が多い。肉を骨から一部離して裏返し、骨を手で持って食べやすくしたものは「チューリップ」と呼ばれ、から揚げにする。これを開いたものが手羽中開きで、これ若しくは手羽中を串に刺したものをイカダ串という。さらに手羽中を二つ割にしたものをチキンリブまたはチキンスペアリブともいう。人間の肘と手首の間の部分に該当する。日本ハムはチキンリブ(手羽中の二つ割り)の唐揚げ(加工肉/総菜)を「チキチキボーン」という商品名で販売している[17]。また、山口県長門市深川養鶏農業協同組合[18]と宮崎県日南市(スーパー戸村)では、チキンリブ(手羽中の二つ割り)をスパイスで味付けした加工肉を「チキンヒーロー」という名前で販売しており、それぞれの地域でローカルフードとなっている。
手羽元
別名「ウィングスティック」(Wing Stick)。骨と肉と皮が程々にあるために正肉に近く、他の料理の具としたりから揚げや煮物にも適する。人間の肘と肩の間の部分に該当する。手羽元を使用したチューリップも存在する。
派生語

以下は、鶏肉の部位としては認められていないが、焼き鳥焼肉煮物ではこのように呼ばれる。

もつ、ホルモン、ジブレッツ内臓肉の総称。

レバー肝臓

ハツ、ハート…心臓

ハツモト…心臓の根本、血管がつながる部分。

ハツヒモ…ハツモトにつながる血管の集まり。


トリガツ…素嚢

センイ…(腺胃)。

スナギモ(砂肝)…筋胃(砂嚢)。

エンガワ…砂肝の周りにある筋肉(中間筋)。


シビレ胸腺。オタフクとも呼ばれる。

アズキ…脾臓。メギモとも呼ばれる。

セギモ…腎臓


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