鴨川ホルモー
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鴨川ホルモー
著者
万城目学
イラスト石居麻耶
発行日2006年4月19日
発行元産業編集センター
ジャンルファンタジー
日本
言語日本語
形態並製本
ページ数288
次作ホルモー六景
公式サイト ⇒鴨川ホルモー 産業編集センター
コードISBN 978-4-916199-82-9
ISBN 978-4-043939-01-5A6判

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『鴨川ホルモー』(かもがわホルモー、KAMOGAWA HORUMO)は、日本の小説家・万城目学青春ファンタジー小説産業編集センターより2006年4月19日に刊行され、角川文庫版が角川書店より2009年2月に刊行(解説は金原瑞人)。

この作品を原作とした漫画作品月刊少年エースにて連載された。また、2009年のゴールデンウィーク松竹配給で実写映画(監督:本木克英 出演:山田孝之 栗山千明)が公開された。2009年5月にはアトリエ・ダンカンプロデュースで舞台化(出演:石田卓也芦名星他)された。

スピンオフである『ホルモー六景』が2007年11月に刊行。
評価・受賞歴

第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞を経て刊行されたデビュー作。「京大青竜会」なる怪しげなサークルに勧誘された主人公が、「ホルモー」という謎の競技を通じて経験する2年間の青春と恋愛を描いた作品。陰陽道を取り入れた奇抜な設定とテンポのよい作風、そして個性的なキャラクターが作り出すコミカルで、時に切ない物語が話題を呼んだ。2009年1月現在の発行部数は15万部。

本の雑誌エンターテインメントで高い評価をうけ、2006年度第1位を獲得。また、TBSテレビ「王様のブランチ」内の本のコーナーにおいて、ブランチBOOK大賞新人賞を受賞している。2007年本屋大賞候補にもなった(結果は6位)。
要約

二浪して京都大学への入学を果たした新入生・安倍は、葵祭のエキストラのアルバイトの帰り、やはり京都大学の新入生である高村と偶然に知り合い、帰路を共にする。その途上、二人は京都大学三回生のスガ氏から「京大青竜会」というサークルの勧誘を受け、新歓コンパに誘われるが、京大青竜会へ入会するつもりはなく、ただ新歓コンパにだけ参加するつもりで会場へ向かった。しかし安倍は、その席で早良京子という女性に一目惚れし、彼女に近づきたい一心で入会してしまう。

当初はただのリクリエーションサークルと思われた青竜会だったが、やがて安倍たちは、自分たちが京都を舞台に式神を使って争う謎の競技「ホルモー」で戦うために集められたことを知らされる。半信半疑の安倍たちであったが、吉田神社での儀式を終え、自らの目で「オニ」たちを見るに至り、否応なくホルモーの世界に引き込まれることとなる。

安倍、高村、早良、芦屋、楠木、三好兄弟、松永、坂上、紀野の10名からなる第500代目京大青竜会は、ホルモーの練習を重ね、初戦に臨む。オニたちを巧みに使役する芦屋の活躍で圧倒的優位に戦いを進めた京大青竜会は勝利を確信したが、高村の失策により思わぬ敗北を喫してしまう。このとき、使役するオニが全滅した高村は、断末魔の叫び声を挙げる。京大青竜会の面々は、ここで初めてホルモーの恐ろしさを知ることとなる。

この敗戦直後、安倍と芦屋との不和が表面化し、敗戦の原因となった高村はしばらく姿を見せなくなってしまった。

しばらくして高村は、チョンマゲ頭で安倍の前に現れる。そしてその高村の口から、安倍が恋心を抱く早良は、よりにもよって安倍が忌み嫌う芦屋と交際していることを知らされる。心に傷を負った安倍は、ホルモーの練習を拒絶するようになった。

しかし、ホルモーを途中で投げ出すことができないことを知った安倍は、芦屋とは別のチームを組んでホルモーを続行する手立てを模索する。そして安倍は、スガ氏から各校のチームを2分して全8チームとする特別ルール「17条ホルモー」の存在を聞き出し、この17条ホルモー実現のために奔走する。

安倍は、高村、楠木、三好兄弟の協力を得て17条ホルモーを実現し、「京大青竜会ブルース」を結成したが、京大青竜会ブルースのメンバーたちは、黒い「オニ」たちが何者かを虐殺するという正視に耐えない光景を毎夜目撃させられるという恐怖に見舞われることになってしまった。これを解消するためには優勝するしかない。

安倍たちは、楠木の天才的な采配によって勝ち進み、決勝戦は、芦屋率いる「京大青竜会神撰組」との対戦となった。京大青竜会ブルースは、安倍と楠木とが不和に陥り、楠木のメガネが壊れて十分な指揮を執れなくなるという2つのトラブルに見舞われるも善戦し、安倍たちが黒いオニたちを見ることはなくなった。

そして、三回生となった安倍たちの後日談が語られ、物語は終わる。
作中設定
競技内容

「ホルモー」とは鬼や式神(作中では『オニ』と表記)を使い、勝敗を決める競技をさす。名前は勝負のクライマックスで発せられる雄叫びに由来する。『鴨川ホルモー』にて描かれている時代においては、京都産業大学玄武組、龍谷大学フェニックス(旧・朱雀団)、立命館大学白虎隊[1]、京都大学青竜会の4つのサークルで争われている。かつてはもうひとつ「ホルモー」を行うチーム「黄龍陣」が存在していたが、幕末維新の混乱でホルモーが中止されたことをきっかけに、チームが消滅してしまった[2]

各サークルの名称は陰陽五行説に由来しており、その中の四神の名をサークルに冠している。チームカラーもこの色に合わせている。東京にも「ホルモー」を行うサークルが存在する[3]

1チームは10人で構成され、各人100匹ずつ1チーム全体で1000匹のオニを使役し、オニ語を発して攻撃部隊と補給部隊に分かれて攻守を行う。攻撃部隊と補給部隊を何人ずつにするかはチームの自由だが、攻撃陣8:補給部隊2で、女性が補給部隊を担当するのがセオリーとされている。最終的に相手のオニを全滅させるか、代表者を降参させることで勝敗を決める。ただし、オニを全滅させる前に代表者が降参することがほとんどで、前者は形骸化している。

「ホルモー」の歴史は実に1000年といわれており、メンバーは2年ごとに入れ替わる。
オニ

本作品でのオニは体長20センチと小さく、4頭身。顔には耳はあるが目も鼻も口も無く、その代わりに顔の中心に茶巾絞りのような突起がある。その姿はオニを使役できる者にしか見えず、またオニの側から人の手や頭の上に乗ることはできるが使役者もオニに触れることはできない。

使役されるサークルごとに、チームカラーの膝丈ほどの襤褸(ぼろ)を身にまとっている。この襤褸から熊手や棍棒などの武器を取り出し攻撃を行う。

オニは攻撃を受ける度に絞りの部分がへこみ、完全に埋没すると「ぴゅろぉ」という儚い声を出して地面に消えてしまう。この前に補給部隊に属するオニがレーズンを与えることで回復する。このレーズンは使役者が地面にばら撒いた市販のレーズンから取り出された残像のようなもので、現実にレーズンを消費するわけではない。
ホルモーの主なルール

ホルモーは京都市内で行う。その際、道路やオニを扱う各神社で行うことは禁じられている。

オニを使役する者同士の身体に触れてはいけない。故意に接触した場合、反則負けを言い渡されることがある。

各チームの公正を期すため、宵山協定と呼ばれる
祇園祭の宵山まで、新入生に対して「ホルモー」の存在を明かすことを一切禁じる協定がある。

覚書の17条には「サークル内での仲間割れなど、サークルの存続が難しくなった場合、チームを2つ、5人にまで分割することが可能である」と表記されている。これを発動させる条件はサークル内の半数以上の支持を取り付ければよいが、反面、発動した者と支持者にはペナルティが課せられる。なお、1人が使役するオニは倍の200匹になる。1サークルがチームを分割した場合、残りのサークルも強制的にチームを分割させられ、同じサークル同士で対決することにもなる。

主なオニ語

ここで基本的なオニ語を紹介する。下記のような言葉は、まる中男性が洗面所で吐き気をもよおす際の声(嘔吐)に似ているとされるので、事情を知らない人の前で発すると誤解や顰蹙を買うことになる。

「ぐああいっぎうえぇ」(進め・攻撃の際の基本語)

「ふぎゅいっぱぐぁ」(止まれ)

「ぎゃらぎゃら、くぅお」(回り続けろ、右回り)

「ずるぅうぎぃ、がっちゃあっ」(左翼に、展開)

「ぼごぎ、ぐぇげぼっ、ぼっ」(待て、追うな)

「ぐぇげぼっ」(追え)

「くぉんくぉんくぉんくぉん」(走れ走れ)

「べけっ、くぉんくぉんくぉんくぉん」(前線、走れ走れ走れ走れ)

「どうんどぅぐぁ、げっぺ、げっぺ、げっぺ」(パニックに陥ったオニたちを鎮めるときに使う)

「バゴンチョリー」(取り囲め)

「ゲロンチョリー」(潰せ)

「ド・ゲロンチョリー」(ぶっ潰せ)

「ブリ・ド・ゲロンチョリー」(マジ、ぶっ潰せ)

「アガベー」(飛びかかれ)

『鴨川ホルモー』という書名・呼称について

『鴨川ホルモー』というタイトルから、しばしばホルモンと間違われやすい。これは作品内でも指摘されており、著者の万城目学は現実にホルモーはホルモンではない旨の説明を強いられた経験があると語っている[4]

また、「鴨川で行われるホルモー」という意味でもない。各シーズン前にはシーズンを通しての名称を京都の地名からとることを便宜的に決めており、第五百代目は「鴨川」という地名を採用しているだけで、この代は京都のどこで行っても「鴨川ホルモー」と呼ばれる。

エッセイ「ザ・万歩計」にて作者は、本書のタイトルが分かりづらかったことを踏まえ、「次の作品ではわかりやすいタイトルをつけよう」と考えていたが、次の作品は『鹿男あをによし』であり、教訓は活かされなかった、と述べている。
登場人物
第五百代京都大学青竜会メンバー
安倍(あべ)
本作品の主人公で
語り部。京都大学総合人間学部一回生。さだまさしの大ファン。二浪の上に誕生日が4月3日で、入学時点で既に21歳だったためサークル活動に興味を示していなかった。浪人の経験からできる限り親に迷惑をかけたくないと考え、仕送りはほとんど受けず、アルバイトをして自活しており、様々なサークルの新歓コンパに参加することで食費を浮かせていた。物事に対してやや斜に構えた態度をとるが、恋愛には極端に奥手で好きな相手には話すことすらできない。美女の鼻に惹かれやすい鼻フェチで、そのことが青竜会に入るきっかけとなる。映画版では「明(あきら)」、舞台版では「学(まなぶ)」という下の名前が設定されている。名前のモチーフは平安時代陰陽師安倍晴明
高村(たかむら)
安倍と共に青竜会に勧誘された経済学部一回生。帰国子女で、入学前は家族と10年ほどロサンゼルスに住んでいた。日本を長く離れていたせいかやや常識はずれなところがあるが、時にまっとうな正論を語る。また壊滅的なファッションセンスの持ち主で、安倍から「イカキョー(いかにも京大生)」と内心蔑まれていた。安倍が抱いた第一印象は「面倒な奴」だったが、「ホルモー」を共に戦う中で友情が芽生え良き相談相手となっていく。初めての「ホルモー」実戦での敗退後に姿をくらましていたが、後に髪型を茶筅髷にして戻ってくる。他のサークルの構成員からは名前より先にこの特徴的な髪型を思い出される。原作では岩倉に、映画版では百万遍寮に在住。映画版では「幸一(こういち)」という下の名前が設定されている。名前のモチーフは小野篁
早良 京子(さわら きょうこ)
教育学部一回生で、安倍が思いを寄せている人物。落ち着いた雰囲気の美しい女性。普段は穏やかな性格だが、恋愛に関しては激情家で周りが見えなくなるところがあり、一方でかなりしたたかかつ自己中心的な一面を持つ。そのことが「青竜会」内部の不和を招来するきっかけとなってしまう。映画版では岡山県倉敷市出身と言っている。また、日15時間勉強の末、一浪して大学に入ったとのこと。名前のモチーフは早良親王
芦屋 満(あしや みつる)
法学部一回生。180cm近い長身で色黒のスポーツマンタイプで、安倍も認めざるを得ないイケメン。「ホルモー」に対する優れた適性を示し、「吉田の呂布」と呼ばれるほど。最下位続きだった青竜会再興の原動力となる。しかし生来の仕切り屋体質から、自分がリーダーシップを発揮しないと気が済まない性格であり、安倍とはそりが合わず、ほとんど口もきかない。また、安倍以外のメンバーにも芦屋を嫌う人はいる。楠木からは陰で「バカ男」と呼ばれている。本作品の『鴨川ホルモー』では「芦屋」と姓(苗字)だけで呼称されていたが、「ホルモー六景」第四景にて下の名が「満」であることと中国地方出身であることが明らかとなっている。また、映画版では財務省志望であることも明かされている。名前のモチーフは安倍晴明のライバル(宿敵)といわれた陰陽師・芦屋道満
楠木 ふみ(くすのき ふみ)
理学部一回生。第五百代青竜会女性メンバー二名のうちのもう一人。長野県出身。流行遅れの髪型とレンズ面の広い眼鏡から、陰で高村に「凡ちゃん」というあだ名を付けられている。極端に無口かつ無愛想で、安倍の問いかけに応じないことも多いが、意外と女性的な一面を見せる。また数学のことに関しては饒舌になる。パソコンを二台所有している。イタリア料理店でアルバイトしている。彼女が青竜会に入った理由は物語の終盤において明らかとなる。映画版では茨城県土浦市出身となっている(映画で彼女を演じた栗山千明の出身地である)。名前のモチーフは楠木正成
三好兄弟(みよしきょうだい)
双子の京大生。文学部一回生。あまりにそっくりで安倍たちも見分けがつかない。兄弟共に温厚篤実で柔らかな物腰を忘れないものの、他者を嫌うこともある。映画版では兄が「慶一(けいいち)」、弟が「賢一(けんいち)」という下の名前が設定されている。それぞれ名前のモチーフは三好長慶三好義賢
松永(まつなが)

坂上(さかがみ)

紀野(きの)
第五百代青竜会のメンバー。松永と坂上は、芦屋の舎弟ともいうべき存在となっている。坂上と紀野は工学部建築学科在籍。いずれも作中において目立った活躍はしていない。映画版では松永が「秀夫(ひでお)」、坂上が「麻人(あさと)」、紀野が「友之(ともゆき)」という下の名前が設定されている。それぞれ名前のモチーフは松永久秀坂上田村麻呂紀貫之
その他の登場人物
菅原 真(すがわら まこと)
理学部三回生。作中では「スガ(氏)」と呼ばれている。第四百九十九代京大青竜会会長。安倍たちを五百代目のメンバーとして勧誘した。飄々としたとらえどころのない人物で、安倍ら一回生が「ホルモー」とは何なのかを問いつめるも、のらりくらりとこれをかわした。後輩の面倒見は決して悪くないが、「ホルモー」の重要な情報を小出しにする。原作の終盤では京大大学院生になった。名前のモチーフは菅原道真
立花 美伽(たちばな みか)
龍谷大学におけるホルモーのサークル「龍谷大フェニックス」第四百九十九代会長。元々のサークル名「朱雀団」を、OBの猛反対を押し切って「フェニックス」に改めた女傑。安倍たちの「ホルモー」初戦の立会人を務める。名前のモチーフは橘三千代
店長
「ホルモー」に関する会合が度々開かれる三条木屋町の居酒屋「べろべろばあ」の店長。年齢は69歳。50年以上「ホルモー」に携わっている競技委員長的存在。苗字は「安倍」。また、映画版では下の名が「清」となっている。
清森 平(きよもり たいら)
京都産業大学におけるホルモーのサークル「京産大玄武組」第四百九十九代会長。


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