鳥瞰図(ちょうかんず、英: bird's eye view)は、地図の技法および図法の一種で、上空から斜めに見下ろしたような形式のものをいう。飛ぶ鳥の目からみたように見える、というのが鳥瞰の語義。建物や山などが立体的に描かれる。俯瞰図、パノラマ図ともいう。
単なる平面図においては一定の限定された範囲を二次元上に正確に客観的に表示するのに対して、鳥瞰図では透視図法を使った三次元的な描画あるいはデフォルメ(誇張)が可能なため、目的に応じて下記のように制作者の主観や個性をともなう様々な表現が可能である。また、反対の(下から上を仰ぎ見る)視点は俯瞰(ふかん)に対して仰瞰(ぎょうかん)といい、あるいは鳥瞰に対して虫瞰(ちゅうかん:insect's eye view)図と言う視点や表現法も提案されている。 鳥瞰図は古くから様々なテーマで描かれている。 Veduta di Venezia, Museo Correr, Venezia「ヴェネツィア鳥瞰図」 アルトドルファー『アレクサンドロス大王の戦い』 海外の歴史的な鳥瞰図としては、レオナルド・ダ・ヴィンチの「トスカーナ鳥瞰図」[1]、ヤコポ・デ・バルバリの「ヴェネツィア鳥瞰図」(1500年)、アルトドルファーの「アレクサンドロス大王の戦い」(1529年)[2]などがある。 日本の歴史的な名所や神社仏閣を描いた鳥瞰図としては、古くは春日大社を描いた奈良時代の「春日曼荼羅」[2]などがある。名所案内図としては、秋里籬島著、竹原春朝斎画「都名所図会」、斎藤月岑、長谷川雪丹
目次
1 概要
2 技法
3 応用
4 鳥瞰図の著名な絵師
4.1 海外
4.2 日本の近代から現代
5 脚注
6 参考文献
6.1 鳥瞰図の参考文献
6.2 鳥瞰図の描き方の参考文献
7 関連項目
8 外部リンク
概要
日本の江戸時代までの広域の景観を描いた鳥瞰図としては、室町時代の狩野永徳の「洛中洛外図屏風」に代表される京都の景観、風俗を描いた各種の「洛中洛外図屏風」[2][5]、江戸初期の建設途上の江戸の名所、風俗を描いた「江戸図屏風」[5][6]、江戸全景を描いた鍬形寫ヨの「江戸一目図屏風」[5] [7][6] などがある。 『岡山市街鳥瞰図』(作:吉田初三郎)
明治時代以降から観光案内図が多く鳥瞰図で描かれるようになった[1]。大正から昭和にかけて活躍した吉田初三郎によるものが知られる。鉄道、自動車の発達による大衆旅行ブームの広がりによりこうした観光案内図が盛んになった。カメラが発達していない時代に、絵葉書に描かれた観光地の鳥瞰図は旅の記念と土産として盛んになった[8]。さらに遊園地やテーマパークや博覧会などの会場案内などにも鳥瞰図を見ることができる。
現代では都市図、観光案内、商業地域の案内などが多数鳥瞰図で書かれている。日本では石原正の鎌倉絵図(春)、神戸絵図(夏)などがある。海外でも多数描かれている。ヘルマン・ボルマンのドイツ各地の鳥瞰図、ニューヨーク摩天楼図[9][2]「万博のサンフランシスコ」(1894年)[10]、シカゴUSA[10]などがある。
山岳鳥瞰図も多く描かれている。画家H・C・ベラン(en:Heinrich C. Berann)(1915-1999)は世界の多数のパノラマ作品により名声を確立し[11]、多くの山岳図、海底地形図、国立公園図、都市図を描いた。日本でも五百澤智也などにより多くの山岳鳥瞰図が描かれている。
歴史の復元図を鳥瞰図で描かれているものもある。立川博章の江戸時代の江戸周辺の町並みを復元した「江戸鳥瞰図」のシリーズ[12][7]などがある。
建築あるいは造園/ランドスケープ、土木・都市計画の分野では「パース図:パースペクティブ図法」あるいは「透視図」(遠近法の項参照)の一作図技法であり、建築物やランドスケープ、都市計画などの完成予想図は、全体を一望できる鳥瞰図で描かれることも多い。