鳥獣戯画
[Wikipedia|▼Menu]
鳥獣人物戯画(甲巻、部分)

鳥獣人物戯画(ちょうじゅうじんぶつぎが)は京都市右京区高山寺に伝わる紙本墨画の絵巻物国宝。鳥獣戯画とも呼ばれる。現在の構成は、甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻からなる。内容は当時の世相を反映して動物や人物を戯画的に描いたもので、嗚呼絵(おこえ)に始まる戯画の集大成といえる。特にウサギカエルサルなどが擬人化されて描かれた甲巻が非常に有名である。一部の場面には現在の漫画に用いられている効果に類似した手法が見られることもあって、「日本最古の漫画」とも称される。

成立については、各巻の間に明確なつながりがなく、筆致・画風も違うため、12世紀 - 13世紀平安時代末期 - 鎌倉時代初期)の幅のある年代に複数の作者によって、別個の作品として制作背景も異にして描かれたが、高山寺に伝来した結果、鳥獣人物戯画として集成したものとされる。

作者には戯画の名手として伝えられる鳥羽僧正覚猷(とばそうじょう かくゆう)が擬されてきたが、それを示す資料はなく、前述の通り各巻の成立は年代・作者が異なるとみられることからも、実際に一部でも鳥羽僧正の筆が加わっているかどうかは疑わしい。おそらく歴史上無名の僧侶などが、動物などに仮託して、世相を憂いつつ、ときには微笑ましく風刺したものであろう。

現在は甲・丙巻が東京国立博物館、乙・丁巻が京都国立博物館に寄託保管されている。
目次

1 各巻の内容および断簡・模本

1.1 甲巻

1.2 乙巻

1.3 丙巻

1.4 丁巻

1.5 断簡

1.5.1 東京国立博物館蔵

1.5.2 その他


1.6 模本


2 その他

3 甲巻の画像(全巻)

3.1 第1紙 - 第4紙前半

3.2 第4紙後半 - 第7紙

3.3 第8紙 - 第10紙

3.4 第11紙 - 第16紙前半

3.5 第16紙後半 - 第18紙

3.6 第19紙 - 第23紙


4 画像

5 脚注

6 参考文献

7 関連項目

8 外部リンク

各巻の内容および断簡・模本

現状の各巻は、いずれも詞書は伴わない。

鳥獣人物戯画は製作されてから800年程度と長い年月を経過し、また多数の作品を集めた性格から、描かれた当時の形態を留めていない。脱落や繋ぎの変更があり、本来は鳥獣人物戯画の一部であったと思われる「断簡」が多数ある。それらは現在の形になる以前に模写された模本により、描かれた当時の姿、あるいは時代経過に従って進む錯簡を推定することができる。
甲巻

様々な動物による水遊び賭射/賭弓(のりゆみ)相撲といった遊戯法要喧嘩などの場面が描かれる。描かれたなどの植生から、の光景とみられる。断簡や模本から、甲巻は成立当初は2巻立て以上のそれら自体で独立した絵巻物だったと考えられ、内、少なくとも1巻は、草むらからのの出現によって動物たちは遁走し、遊戯が終わりを迎えるという構成だった。現在の甲巻は、後世に遭遇した火災による焼損被害や、失われた(恐らくは何らかの形で持ち去られた)断簡による不自然さを補うための加筆が一部に見られる。

2009年平成21年)から4年かけて行われた大規模な修理において甲巻の中盤と後半の絵が入れ替わっていることが判明した。室町時代の戦乱時に高山寺の伽藍が焼けた記録が残っているが、この時に一度持ち去られた可能性があり、後に回収してつなぎ直した際に順序が入れ替わった可能性がある[1]
乙巻

山羊といった身の回りの動物だけでなく、獅子麒麟といった海外の動物や架空の動物も含め、さまざまな動物の生態が描かれており、動物図鑑としての性質が強い巻。絵師たちが絵を描く際に手本とする粉本であった可能性も指摘されている。
丙巻

前半10枚は人々による遊戯を、後半10枚は甲巻の様に動物による遊戯を描いている。後半部分については、甲巻の動物の遊戯を手本に描かれたものとも言われる。前半と後半の筆致に違いがあることから、別々に描かれた絵巻を合成して1巻とした巻とみられていたが、京都国立博物館による修復過程で元は表に人物画、裏に動物画を描いた1枚だった和紙を薄く2枚にはがし繋ぎ合わせて絵巻物に仕立て直したものだと分かった[2]。19枚目の歩く蛙の絵に墨跡があり、2枚目のすごろく遊びをする人の絵と背中合わせにすると、19枚目の墨跡(烏帽子の滲み)と2枚目の人物画の烏帽子の位置と合致すると判明した後、この他にも1枚目と20枚目、3枚目と18枚目というように墨跡などが合致することが分かった。これにより元々は10枚の人物画の裏に動物画が描かれ、江戸時代鑑賞しやすいように2枚に分けられたと推定されている。
丁巻


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:28 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef