魔物の証明
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タイタス・クロウの事件簿
The Compleat Crow
作者
ブライアン・ラムレイ
言語英語
ジャンルホラー、オカルトアクション、クトゥルフ神話
刊本情報
刊行創元推理文庫
出版元東京創元社
出版年月日2001/03/16
日本語訳
訳者夏来健次
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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『タイタス・クロウの事件簿』(タイタス・クロウのじけんぼ、原題:: The Compleat Crow)は、イギリスのホラー小説家ブライアン・ラムレイによる小説。

タイタス・クロウの全中短編をまとめた作品集である。幽霊、クトゥルフ神話の怪物、ローマの廃墟と、短編ごとにテーマが異なりバラエティに富む[1]。1987年に刊行され、日本では2001年に創元推理文庫から刊行された。日本語版用に新たに書き下ろされたまえがきとして『タイタス・クロウについての覚え書き』が掲載されている。
誕生

妖蛆の王 ●

黒の召喚者 ●○

海賊の石

ニトクリスの鏡 ●○

魔物の証明 ●○

縛り首の木 ●○

呪医の人形

ド・マリニーの掛け時計 ●○

名数秘法 ●

続・黒の召喚者 ●

収録順は時系列順となっている[2]。最初に書かれたのは『黒の召喚者』、最後に書かれたのは『誕生』。●はクトゥルフ神話、○は先行の短編集『黒の召喚者』(朝松健訳)に収録。

別途長編の『タイタス・クロウ・サーガ』全6作があり、日本では2005年から2017年にかけて順次刊行され完結している。
主要人物

タイタスとアンリは、名探偵シャーロック・ホームズワトソン医師の関係に形容される[3]
タイタス・クロウ
1916年生まれ。ロンドン郊外のブロウン館に住む、数秘術と魔術に長けたオカルティスト。「水神クタアト」「グ=ハーン断章」「ネクロノミコン新釈」などの魔道書を所持する。第二次世界大戦中は陸軍省に所属し、対ナチスドイツの暗号解読や霊的国防任務に従事していた。1946年初旬、妖術師カーステアズとの対決をきっかけに、本来は邪神側の武器であるはずの魔術を駆使して悪と戦うようになる。1968年10月4日、大嵐によりブロウン館が倒壊し、消息を絶つ。初登場作品は『黒の召喚者』。本短編集では主に黒魔術師やテロリストを相手に戦っており、長編サーガでは「邪神狩人」として活躍するようになる。
アンリ‐ローラン・ド・マリニー
1923年生まれ。父はエティエンヌ‐ローラン・ド・マリニー。アメリカ出身だが、10代のころに英国に移住し、タイタスと出会い、生涯の友となった。蔵書家。長編サーガでは大幅に出番が増える。
1『誕生』

たんじょう、原題:: Inception。

タイタスの最初期エピソードを知りたいというポール・ガンレイの要求に応じて、1984年に執筆され、『ウィアードブック』に掲載された。短編集の中では、時系列では最初、執筆順では最後にあたる。[2][4]

タイタスの初期エピソードは、既に『妖蛆の王』に書かれたことではあったが、アイデアが浮かんできて3日ほどで書き上げられたという[4]
1あらすじ

墓荒らしの男は、魔術師カフナスの依頼で、サハラ砂漠の<サヌシ教団>の霊廟に忍び込む。魔術師の依頼は「財宝は全てくれてやる。霊液だけをわしのもとに持ってきてほしい」。だが財宝などなく、落胆して小瓶一つだけを持ち帰って来た彼は、カフナスに文句を述べる。魔術師はこの霊液の価値を主張するも、男にはカフナスの説明はたわごととしか思えない。さらに報酬で揉め、結局は「今全額払わないなら、霊液も一部しか渡さん」と言い、一旦去る。翌朝約束通りにカフナス邸に舞い戻ってみると、カフナスは霊液を用いた実験に失敗して、皮一枚を残して液化して死んでいた。男はすぐさま逃げ出すも、教団の人外が追跡してくる。

1916年12月。夜の霧の中、逃げる男と、追いかける人影があった。逃亡者は、地球を半周した末に、故郷ロンドンで追い詰められようとしていた。彼は、30年以上前、文無しの浮浪児だった頃の隠れ家を目指して足取りを進める。五角形の部屋にたどり着き、彼は幼い頃に自分が隠れ家にしていた建物の正体をようやく知る。逃亡者はいまなお霊液を持ち続けることの意味を疑問視し、瓶の中身を石鉢の中にそそいで捨てる判断をして、空の瓶に蓋をするも、終に追いつかれて殺される。ようやく怨敵を始末した追跡者であったが、目当ての物を探すも見つからない。そのとき夜が明け始め、容器の外に出た霊液のパワーが夜明けの日光によって増幅され、不死者を浄化し滅ぼす。

午前十時。五角形の部屋で、赤ん坊の洗礼式が行われた。
1登場人物

逃亡者 - ロンドン生まれ。こそ泥から夜盗を経て。腕と悪名を上げ、国外の墓や寺院を荒らす略奪者となった。

エリク・カフナス - チェニスのオカルティスト。

不死者ムーラ・ドゥンタ・サヌシ - サヌシ教団の<不死なる死の僧>。死後270年が経過した人外。

<霊液> - 正体不明の薬品。純粋無垢な者に一滴与うれば、その者をして覚醒させんという。

タイタス・クロウ - 1916年12月2日に生まれた子供。

2『妖蛆の王』

ようそのおう、原題:: Lord of the Worms。1981年2月から3月にかけて執筆され[2]、1983年の『ウィアードブック17号』に掲載された。

作中時1946年・タイタス29歳と、タイタスの若いころの活躍を描いたエピソードである。ラムレイが他の中短編の合間に書いたものであり、編集者の要求に応じて急いで完成させたもの。ラムレイ自身、タイタスの中短編から一編を選ぶならば本作を挙げると語っており、またラヴクラフト作品とは全く主人公像が異なることが現れており「決して恐怖に屈したり逃げ出したりすることがない」と評している。[5]

朝松健は、初期タイタス作品よりも格段にクオリティが上がっていると評しており、よくある作品から、ラムレイ自身の創意にあふれた作品になったという旨の解説をしている[6]

タイタス後年の作品で登場する文献は、この戦いでの戦利品と目される。執筆されたのは本作の方が後なので、アイテムの入手秘話という位置づけである。特に文献「妖蛆の秘密」には、19世紀英訳版の存在が追加され、以後のクトゥルフ神話資料にも導入されることとなる。
2あらすじ

タイタスは陸軍省で暗号解読やオカルト関係の特殊な仕事に従事していたが、終戦に伴い失職する。翌1946年1月、タイタスはジュリアン・カーステアズの秘書として、彼の屋敷で膨大な蔵書の整理をする仕事を得る。

数秘学を学んだタイタスは、面接で用心して生年月日を偽る。しかし仕事を進めるにつれ、タイタスには薬物を盛られたり催眠術をかけられている可能性が浮上し、雇用主に警戒を抱くようになり、友人らの協力を得て対策を打つ。また屋敷内では、奇妙な虫を見かける。

さらに郵便受けの手紙を盗み見たことで、カーステアズがタイタスの戸籍を密かに調べていたことが判明する。役所からの調査報告には「カーステアズが遺産継承者として、タイタス・クロウという人物を探していること」が書かれ、続いて「当該年月日生まれの同姓同名の該当者なし。別年月日なら該当者1名」と報告されていた。タイタスはカーステアズに、役所を装った偽電話をかけて「(偽生年月日の)タイタス・クロウが実在する」と虚偽報告をする。

聖燭祭前夜にあたる2月1日、カーステアズは弟子たちと共に転生の儀式を始め、タイタスは催眠術にかかっているふりをしながら彼らのもとに赴く。土壇場で真相を暴露されたカーステアズは驚愕し、転生を強行しようとするも、妖蛆たちを従わせることはできず、自滅する。タイタスにとって、この戦いは、以降の人生を方向づける決定打となる。
2登場人物・用語
タイタス・クロウ
主人公。本作時点ではまだ若い。カーステアズの秘書として雇われる。1916年12月2日生まれだが、生年月日を偽っている。オカルト的な意味合いでは、名前の数字は9と6、偽の生年月日の数字は999と
666で、カーステアズに狙われる。真の生年月日の数字は22。
ジュリアン・カーステアズ
<古墳館>の主である老オカルティスト。<現代の大魔術師><妖蛆の王>と呼ばれる人物。12人の弟子がいる。その正体は、1602年にガリラヤ湖畔コラズィンで生まれた反キリストであり、体内に宿した虫たちの術で生きながらえている妖術師。現在は6代目の肉体だが寿命が迫っており、若いタイタスの肉体に転生を企てる。個人としては破格の蔵書を有し、「妖蛆の秘密」「アル・アジフ」などを持っている。
テイラー・エインズワース
化学者。タイタスの学友であり、オカルト・錬金術に造詣ある異端の化学者。カーステアズがタイタスに差し入れるワインの成分を調べる。
ハリー・タウンリー
医師。タイタスの主治医。催眠療法・同毒療法・鍼治療などを信じる奇人医師。タイタスを診療し、高度な催眠術下にあると診断する。
セジウィック
大英博物館の学芸員。戦争時代から懇意のタイタスに「妖蛆の秘密」の閲覧を許可する。
妖蛆の秘密
大英博物館には、保存状態の悪いラテン語版と、古ドイツ語版と、一部のみ英訳版がある。カーステアズの書庫には、チャールズ・レゲットの英訳版があり、カーステアズは「サラセン人の宗教儀式」の章のみ切り取って別保存している。原著者のルードヴィヒ・プリンは、中東の妖術に造詣が深く、妖蛆を用いた転生術についても記載している。本文献はチャールズ・レゲットによって原本から1812年に英訳された。また僧Xという人物が「サラセン人の宗教儀式」の章のみを別途英訳している。
2関連項目

サマセット・ハウス - 作中時代は、中央戸籍登録所として機能していた。アガサ・クリスティのミステリーなどにも頻出する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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