「鬼火」(おにび)は、吉屋信子の短編小説。1951年(昭和26年)に執筆され、吉屋はこの小説で同年の女流文学者賞を受賞した。1956年(昭和31年)には中央公論社で単行本化され、同年には東宝で映画化された。現在は、講談社文芸文庫『鬼火 底のぬけた柄杓』に収録され刊行されている。 生活に困窮した人妻がガス会社の集金人に料金と引き換えに肉体を要求されて死を選ぶという内容の短編小説である。異様さを際立たせる語り口で書かれており、のちに中島河太郎・紀田順一郎編『現代怪奇小説集』(立風書房)に収録されるなど、スリラー小説とみなされる傾向がある。また、この小説の映画版も、公開当時の「キネマ旬報」作品データでは「怪談風スリラー」と紹介されている。
解説
小説は困窮したヒロインがガスの集金人に肉体を要求されて自殺するまでの物語がメインになっているが、映画化にあたって、千葉と脚本の菊島隆三は、ガスの集金人の日常描写と困窮する夫婦のドラマを新たに加えるなどの脚色を施した。主人公の集金人を演じた加東大介は、翌1957年(昭和32年)のヒット作『大番』でも千葉泰樹と組んで、再び主演俳優をつとめている。 鬼火
映画
監督千葉泰樹
脚本菊島隆三
原作 吉屋信子
製作佐藤一郎
出演者加東大介
津島恵子
宮口精二
音楽伊福部昭
撮影山田一夫
編集大井英史
配給 東宝
公開 1956年7月5日
上映時間46分
製作国 日本
言語日本語
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『鬼火』(おにび)は、1956年(昭和31年)7月5日公開の日本映画である。千葉泰樹監督、東宝製作・配給。白黒映画、スタンダードサイズ、5巻 / 1,271メートル(46分)。
音楽の伊福部昭は本作などで第11回毎日映画コンクール音楽賞を受賞した[4]。 東京の下町。ガス会社の集金人忠七は、集金に行った留守宅から押し売りを追い出し、戻ってきた家の女からタバコを一箱お礼に貰って、今日はとても調子が良い。しかし、仕事仲間の吉川や職人の吉太郎にタバコをふるまって上機嫌なのもつかの間、次に集金に向かった金持ちの家では、主人の水原が女中を手ごめにする現場を覗き見てしまい、激怒した水原に「会社に電話して貴様をクビにしてやる」と脅迫される。 気分を害した忠七は、吉川にガス料金を滞納している家を紹介してもらい、野原の中にある一軒の荒れ果てた家に向かう。
映画版あらすじ