髪の色
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ヒトの髪の色の種類

ヒトの髪の色(ヒトのかみのいろ)では、ヒトにおける頭髪について記述する。
概要

ヒトユーメラニンとフェオメラニン(ドイツ語版)と呼ばれる物質により決まる。

毛髪をはじめとするヒトの体毛は、地域や民族によりさまざまで、白色・淡褐色・栗色・金色・赤褐色・黒色など実に多様な色がある。体毛にユーメラニンが多いとその色は濃く、フェオメラニンが多いと赤みを帯びた色になる。毛髪の色が淡い人種では、人によっては成長につれ毛髪が次第に濃い色へ変化することもある。また高齢になるにしたがい髪の色が薄くなり、灰色や銀色や白色になることはほとんどの人種で起きる。

毛髪の色は、地域や民族によって様々な違いがある。黒髪はネグロイドモンゴロイドオーストラロイドコーカソイド(いわゆる四大人種)に共通に見ることができる。栗毛・赤毛などの毛髪はオーストラロイド、コーカソイドなどで見ることができる。また栗毛はモンゴロイドにも見られ、金髪・赤毛はオーストラロイドにも見ることができる。なお、同じ民族の間でも毛髪の色には明確な個人差がある。だが、高齢になるにしたがい、ほぼ全ての民族で、みな灰色や銀色や白色になってゆき、つまりその結果、ついには色の民族差や個人差が無くなってゆく。

また、髪の色は染髪により、自然には見られない人工的な色に着色することも可能である。
メラニンの作用

毛髪の色はメラニンによるものである。メラニンには、黒?茶褐色のユーメラニン(真性メラニン)と、赤褐色 - 黄色のフェオメラニンの2種類がある。色の濃淡はユーメラニンにより決定され、黄色み・赤みはフェオメラニンに左右される。つまり、ユーメラニンが多ければ毛髪の色は黒色に近付き、フェオメラニンが多ければ暖色に近付く。フェオメラニンは赤褐色の色素であるが、濃度が低いと黄色や象牙色を呈する。つまり、毛髪の黄色み・赤みは同一の色素によるものである。ほとんどの人々はこれらの二種類の色素を混合して持っている。

フェオメラニンはユーメラニンよりも化学的に安定しており、毛髪が酸化された場合には、ユーメラニンから先に破壊されていく。エジプトのミイラが赤い髪を持っているのは、ミイラの頭髪のユーメラニンが失われてしまったにもかかわらず、フェオメラニンがまだ存在しているためである。また、髪の脱色(ブリーチ剤)を行ったときに濃い色の髪が脱色につれて赤色に変化していくのもこの理由による。髪の脱色の際にユーメラニンは急速に破壊されてしまうが、フェオメラニンは比較的ゆっくりと破壊される。フェオメラニンが破壊されると髪はオレンジ色になり、次第に黄色へと近付いていく。
加齢による髪の色の変化白髪の男性(ヘンリー・ワズワース・ロングフェロー)。髭も白色に変化している。

年を取るにつれて人間の毛髪は自然に変色していき、通常は生まれつきの色から灰色へ、そして白色に変化していく。40パーセント以上のアメリカ人は、40歳の誕生日を迎える頃には多くの白髪を持つようになる。しかし、白髪は十代や二十代、場合によっては幼児期にさえ現れることもある。ある人物が白髪になり始める時期の決定は、年を取ってからにせよ早期からのものにせよ、ほとんどは遺伝に基づくものであると見なされている。時には遺伝的な理由によって、生まれながらの白髪を持つ人々もいる。

しかし、白髪は年配のものというイメージは強くあり、「白髪」という単語そのものが老人の代名詞となることもある。例として、中国には「白?偕老」(白頭偕老)という表現があり、これは「白髪になるまで共にいる」という意味で、結婚式などで新郎新婦に対してよく使われる表現である。そのため若く見られたい人の多くが、自分の白髪の量を少なく見せるために染髪料を使っている。

加齢による髪の色の変化は、毛根でメラニンの生産が中止された後も、色素なしで新しい髪が伸びることで、髪の色素がゆるやかに減少していくために起こる。Bcl2Mitfの二つの遺伝子が、白髪の発生の過程に関係していると考えられている。毛嚢の基部にある幹細胞が、毛髪や肌の色素の生産と保持を行う細胞であるメラノサイトの発生を受け持っている。メラノサイトを生み出す幹細胞の死により、毛髪は白髪に変化し始める[1]

毛髪の産生には毛髪そのものの幹細胞と、メラニンを供給している幹細胞が関与しており、その両方が存在してはじめて黒くなる。メラニン産生の幹細胞は造血幹細胞ニッチに存在しているが、ストレスがかかったり、加齢によりニッチから移動してしまう。この幹細胞は造血幹細胞ニッチでしか存在出来ないために死んでしまい、その結果メラニンが作られなくなり、毛髪は一生白髪のままとなる[2]

いかなる特殊な食品や、ビタミンやプロテインなどの栄養サプリメントも、白髪の発生を防いだり遅らせるための有効な手段とはなりえないにもかかわらず、多くの白髪を防ぐための商品が長年にわたり販売されている。しかしながら、この状況は将来変化するかもしれない。白血病患者の治療を行っているフランス人科学者達によって、予期しない副作用を持つ抗がん剤が発見された。これらの抗がん剤を投与された幾人かの患者は、進行中の白髪頭からの回復を示した[3]

1996年のBMJ誌において、J・G・モーズリー主導の研究により、喫煙が早期の白髪の原因となる可能性があることが指摘された。この研究で、喫煙者は非喫煙者と比べて4倍の確率で若年期に白髪が発生することが発見された[4]

ミイラや土葬された死体の毛髪は、長い時間をかけて変色していくことがある。毛髪には黒褐色のユーメラニンと赤橙色のフェオメラニンが含まれている。フェオメラニンはユーメラニンよりも遥かに安定しており、毛髪に含まれるフェオメラニンはユーメラニンよりも長期間保存される。毛髪の色は、状況によってより急速に変化する。湿気の多い酸素の不足した状況(木材や漆喰の棺による埋葬など)よりも、乾燥した酸化されやすい状況(砂や氷による埋葬など)のもとでは、毛髪の変化は比較的緩やかである[5]

ハーバード大学医学部によると、白髪になったり、ハゲたりするのは宿命で、いろいろな治療法があるが、基本的には効果がないそうだ[6]
髪の色に関わる病気

古くから病気で髪色が変わることは知られており、聖書の『レビ記』第13章には腫物や傷の個所の毛を確認し、白や黄色の変色がある場合は伝染性の病気(ツァラアト)の証拠とする記述がいくつもある(第37節では逆に患部の毛が黒く戻れば治癒と判断する記述もある)[7]

先天性白皮症の人の毛髪は銀髪ないし金髪である。これは、メラニンの生合成をつかさどる遺伝子の欠損により、全身にメラニンの欠乏が起こるためである。

尋常性白斑症は、自己免疫疾患の結果により引き起こされることがある毛髪や皮膚の色の部分的な欠落である。

また、栄養失調は髪の色を薄く、髪質を細く脆いものにすることが知られている。このメラニンの生産の不足により、濃い色の髪が赤毛や金髪になることがある。この症状は適切な栄養により回復する。

ウェルナー症候群悪性貧血も早期の白髪の原因となることがある。慢性胃腸疾患、マラリア、甲状腺疾患、脳下垂体機能低下症、円形脱毛症などの病気に罹患していると、急激に白髪が増えたり、一部分に集中して白髪が発生することがある[8]

白髪の髪に白髪でない眉を持つ50 - 70歳代の人々は、髪・眉共に白髪である人々と比べて、成人性糖尿病を持つ人々との相関関係を持っていることが示された[9]

電子ビームによる脱毛や化学療法によって引き起こされた炎症過程の後に、白髪が一時的に濃い色の体毛に戻ることがある。人間の白髪の発生に関わる生理学は、未だ不明確な部分が数多く残されている[10]

長期ストレスによって白髪になる症状は、Canities subita(英語版)と呼ばれる。ストレスがなくなると、白髪から色が戻る報告もある[11]
文学の中に見られる短期的変化

古くから恐怖や強いストレスによって白髪化したという表現が見られ、10世紀中頃成立の『土佐日記』には、「海賊むくいせむといふなる事を思ふ上に、海のまた恐ろしければ、頭(かしら)もみな白けぬ」(海賊の恐怖から白髪となった)とあり、13世紀成立の『十訓抄』には、藤原顕光11世紀の事件(強いストレス)をきっかけに一夜にして白髪化したことが記述されている。また、小説の題材として、『白髪鬼』がある。

海外では「マリー・アントワネット症候群」(Marie Antoinette syndrome)と称される。この他の伝説としては、『千字文』の撰者・周興嗣6世紀前半)が皇帝の命を受けた際、一晩で詩を作ったために白髪となったという伝説が9世紀半ばに確認でき、それゆえに千字文の別名を「白首文」というようになったと語られる(詳細は「周興嗣#『千字文』にかかわる伝承」を参照)。

これらの記述は、@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}研究により誇張法による表現であることが証明されつつある(髪の毛の色は生え変わるまで変わらないため、全ての髪の色が白髪に生え変わるまでどんなに早くても3年程度かかる。ただし毛髪のサイクルによってはあっという間に白髪だらけになったように見える可能性は否定しきれない)。[要出典]


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