高砂丸
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この項目では、大阪商船の船について説明しています。郵便汽船三菱会社、日本郵船の「高砂丸」(元「デルタ」)については「デルタ (船)」を、1957年に日ノ御埼沖で焼失した高砂丸については「ヨハネス・クヌッセン」をご覧ください。

高砂丸

基本情報
船種貨客船
船籍 大日本帝国
日本
所有者大阪商船
運用者 大阪商船
 大日本帝国海軍
第二復員省/復員庁
建造所三菱重工業長崎造船所
母港大阪港/大阪府
信号符字JJUL
IMO番号43182(※船舶番号)
建造期間323日
就航期間6,904日
経歴
起工1936年6月9日[1]
進水1936年12月1日[2]
竣工1937年4月28日[2]
その後1956年3月23日に解体のため売却[1]
要目
総トン数9,347トン[3]
9,315トン[1]
純トン数4,989トン
載貨重量5,997トン[3]
全長142.09m[3]
垂線間長139.99m[1]
幅18.50m[3]
型深さ11.60m[3]
高さ10.6m(水面からデリックポスト最上端まで)
喫水4.485m(空艙平均)[3]
満載喫水7.524m(平均)[3]
ボイラー石炭専焼缶
主機関三菱ツェリー式二段減速装置付蒸気タービン 2基[3]
推進器2軸[3]
最大出力12,641SHP[3]
定格出力9,500SHP[3]
11,000SHP[1](計画)
最大速力20.15ノット[3]
航海速力15.34ノット[1]
16ノット[3]
旅客定員一等:45名[1][3]
二等:156名(うち和室客室定員62名[4][1][3]
三等:700名[1]/757名[3]
合計:901名[1]/958名[3]
乗組員187名[3]
1941年11月12日徴用
高さは米海軍識別表[5]より(フィート表記)
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高砂丸
特設病院船時代の高砂丸
基本情報
艦種特設病院船(日本海軍)
特別輸送船(第二復員省/復員庁)
艦歴
就役1941年12月1日(海軍籍に編入時。日本海軍)
連合艦隊付属/呉鎮守府所管
1945年12月1日(第二復員省/復員庁)
呉地方復員局所管
除籍1945年10月5日(日本海軍)
1946年8月15日(復員庁)
要目
兵装なし
装甲なし
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高砂丸(たかさごまる)は大阪商船貨客船太平洋戦争では特設病院船、戦争終結後は引揚船として運用された。
概要

文中、トン数表示のみの船舶は、一部の例外を除いて大阪商船の船舶である。
商業航海時代「高千穂丸」も参照

大阪商船は1896年(明治29年)に大阪[注釈 1]基隆間の航路を台湾総督府命令航路として定期航海を下命され、遅れて同区間の航路を命令航路として下命された日本郵船[注釈 2]との間で競争を繰り広げるが、大阪商船では、大型船の投入などで常に先手を打ってサービスの向上に努めた。大正時代までは「笠戸丸」(6,209トン)や「亜米利加丸」(6,030トン)、「蓬莱丸」(9,205トン)など他の船会社や外国からの購入船で占められていたが、昭和時代に入り、台湾航路向けとして初めての新造船となる「高千穂丸」(8,154トン)が竣工した。しかし時代の趨勢とともに台湾の重要度が増し[6]、「高千穂丸」を拡大改良[7]した貨客船が投入される事となった。これが「高砂丸」である。

「高砂丸」は1937年(昭和12年)4月28日に三菱重工業長崎造船所で竣工した。大阪商船の主任造船技師だった和辻春樹は「高千穂丸」に続いて客室部分の甲板の反りを廃止して極力水平に近づけ、居住性を高めた。その一方で、外観上は「高千穂丸」とは異なって流線型を多用するなど「美意識が潜んだデザイン」[8]で纏め上げられた。機関部も改良が加えられ、機械室の主復水器の配置方法や主軸受けの位置を変更してスペースの縮小と重量軽減に取り組んだ[8]シーマージンは30%程度に設定され、「少し石炭を余分に焚くと忽ち20ノットに増速した」[8]が、これは命令航路では到着時刻の厳守が規定されており[8]、荒天時の航海での遅れを取り戻すための措置だった[8]。大阪商船の台湾航路就航船の中で、文字通り「最大、最新、最高速」[8]を誇ったが、スペック面では「高砂丸」の竣工に先立つ1ヵ月前に完成した近海郵船の「富士丸」(9,138トン)とほぼ同等であった[1][9]。「高砂丸」の就航に先立ち、これまで台湾航路に就航していた「瑞穂丸」(8,506トン)は大連航路に転属となった[8]

竣工後は5月10日から12日に芝浦ふ頭で、5月18日に神戸港中突堤でそれぞれお披露目が行われ[8]、神戸でのお披露目の2日後の5月20日に処女航海で基隆に向かった[8]。「高砂丸」の運航スケジュールに関しては「高千穂丸」および「蓬莱丸」とともに月3往復の就航で[8][4]、基隆行は神戸を正午に出港し、門司には翌日の未明に到着して正午に出港、2日後の正午に基隆に到着[4]。逆の神戸行は午前11時に基隆を出港して2日後の午後1時に門司に到着し、午後5時に出港して翌日の午前10時に神戸に到着するという「高砂丸」専用のダイヤグラムが組まれ[4][注釈 3]、「富士丸」を筆頭とする近海郵船の船舶とのサービス競争を繰り広げた[8]。就航後間もなく日中戦争が勃発し、「高千穂丸」が一時日本陸軍に貸上げされたが[10]、「高砂丸」は1941年(昭和16年)11月まで台湾航路に就航し続けた[8][注釈 4]
病院船時代

「高砂丸」は昭和16年11月12日付で日本海軍に徴傭され、12月1日付で特設病院船として入籍する[2]。12月20日まで三菱重工業神戸造船所で特設病院船としての艤装工事を行った後[2]連合艦隊主力部隊に配属される[11]。12月23日に連合国側に「朝日丸」(日本郵船、9,326トン)および「氷川丸」(日本郵船、11,622トン)とともに病院船として船名を通告され[12]、南方方面に出動する。

蘭印作戦の進捗に伴い、朝日丸では負傷者がさばききれないと見込まれたため[13]1942年(昭和17年)1月末から「朝日丸」に代わってダバオ方面で行動[14][15]。3月からはマカッサルなどセレベス島方面を行動するが[16]、4月26日に最初の災難に見舞われた。「高砂丸」はこの日の未明1時38分頃[17]、.mw-parser-output .geo-default,.mw-parser-output .geo-dms,.mw-parser-output .geo-dec{display:inline}.mw-parser-output .geo-nondefault,.mw-parser-output .geo-multi-punct,.mw-parser-output .geo-inline-hidden{display:none}.mw-parser-output .longitude,.mw-parser-output .latitude{white-space:nowrap}南緯03度19分 東経127度27分 / 南緯3.317度 東経127.450度 / -3.317; 127.450のアンボン近海[17]を航行中にアメリカ潜水艦「ピカーレル」に発見された。「ピカーレル」は商船の煙を発見して戦闘配置を令した[18]。4月26日に入ってすぐ、「ピカーレル」は艦首発射管から4本、艦尾発射管から1本の魚雷を発射し、1本が命中した[18]。「ピカーレル」は浮上して目標を追跡し[18]、さらに魚雷を2本発射したものの命中しなかった[18]。そのうち、金剛丸級客船と思しき艦船[19]が高速で「ピカーレル」の方に向かってくる気配があったので、「ピカーレル」はスコールにまぎれて戦場を離脱した[20]。「ピカーレル」が「金剛丸級客船」と判断した艦船こそ他ならぬ「高砂丸」であり、「高砂丸」は魚雷の命中によりと舵取機械および船体の一部を損傷した[17][21][22]

この攻撃に対する抗議は1943年(昭和18年)12月になってようやく行われたが、連合国側から昭和18年5月14日の「伊号第百七十七潜水艦」によるオーストラリア病院船「セントー(英語版)」(3,222トン)の撃沈事件[23]を持ち出される一幕もあった[24]。また、アメリカ政府は「この攻撃はアメリカ側に高砂丸が病院船として通告される前の件」とする[25]。ともあれ、「高砂丸」は修理のため後方に下がる事となった。

修理後はソロモン諸島方面に進出。ショートランド停泊中の11月1日に爆撃を受け、至近弾により損傷した[26]。修繕後は再びトラック諸島ラバウルなど南東方面と、別府横須賀などとの間での患者輸送や診療に従事するが[27][28][29]、直接現地に赴いて患者を収容したほか、「氷川丸」や「天応丸」(6,076トン)から患者を託されて後送するパターンもあった[30]1944年(昭和19年)1月以降の第十八次航海[31]は南西方面を行動し[32]マニラ、ダバオ、アンボン、クパンスラバヤなどに点在する海軍病院や艦船、陸上部隊を巡って[33][34]3月12日に佐世保に寄港の後、3月14日にに帰投[31]。次の航海ではトラック[31]メレヨン島およびパラオ方面を巡るが[35]、「高砂丸」はこの航海で二度目の災難に遭遇した。


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