高次脳機能障害
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高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、主にの損傷によって起こされる様々な神経心理学的障害である。主として病理学的な観点よりも厚生労働省による行政上の疾患区分[1][2]として導入された概念であり、異なった原因による複数の疾患が含まれる。それぞれの症状や治療について、詳しくは脳血管障害といった病理学的な観点から論じられる。
概要

高次脳機能障害という用語は、メディアや行政で用いられるが、精神医学・神経学・生理学などの医学分野においてはあまり使われていない[3][4]

その障害は外からでは分かりにくく自覚症状も薄いため隠れた障害と言われている[要出典]。

よく、一言で「高次脳」と略されるため、脳内にそのような部位があるのか、と勘違いされることがあるが、そうではなく、分かりやすく記すれば「高次の脳機能の障害」ということである[5]
定義

学術用語としての「高次脳機能障害」は、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、この中には巣症状としての失語失行失認のほか記憶障害注意障害遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる[6]

@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}これに対し、日本の厚生労働省が2001年度から本格的に研究に取り組んでいる「高次脳機能障害」は、行政的に定義されたものといえる。これについては少し説明が必要である。脳血管障害(いわゆる脳卒中)や、交通事故による脳外傷後に身体障害となる場合がある。身体障害が後遺障害として残る場合と、時間の経過とともに軽快していく場合がある。しかし、身体障害が軽度もしくはほとんど見られない場合でも、脳の機能に障害が生じている場合がある。それが前述の認知障害、つまり行動に現れる障害であるため、職場に戻ってから、問題が明らかになるというケースがある。つまり、日常生活、社会生活への適応に困難を有する人々がいるにもかかわらず、これらについては診断、リハビリテーション、生活支援等の手法が確立していないため早急な検討が必要なことが明らかとなった。そこで、2004年4月から、高次脳機能障害診断基準に基づいて医師により高次脳機能障害と診断された場合、作業療法士言語聴覚士による訓練が診療報酬の対象とされることになった。また、2006年4月からは、脳血管疾患リハビリテーションの限度180日を超えて訓練を受けることができるようになり、機能回復を中心とする医学的リハビリテーションを最大6か月実施した後は、必要に応じて生活訓練プログラムや就労移行支援プログラムを加えた連続的な訓練が実施されるようになった。交通事故による高次脳機能障害については、他の公的制度に先駆けて、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)が2001年から交通事故被害として認定するシステムを構築している。自賠責保険により、交通事故によって生じた高次脳機能障害として認定されれば、損害賠償の対象として保険金が支払われることとなる[要出典]。

医療の現場においては、他の神経心理学的障害や認知障害などの用語の方が一般的な場合もある[7]。例えば精神保健領域では,器質性精神障害という病名の方が用いられる機会が多い[7]
症状

その症状は多岐にわたり、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、失見当識、社会的行動障害などの認知障害等で脳の損傷部位によって特徴が出る[要出典]。
診断
診断基準

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部国立障害者リハビリテーションセンターは診断基準を以下のように定めている。

 T.主要症状等

  1. 脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。

  2. 現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。


 U.検査所見

  MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。


 V.除外項目

  1. 脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。

  2. 診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。

  3. 先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。


 W.診断

  1. I?IIIをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。

  2. 高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。

  3. 神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。


  なお、診断基準のIとIIIを満たす一方で、IIの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。

  また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。

  (平成16年2月20日作成) ? 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部国立障害者リハビリテーションセンター、[6]
診断の困難さ

医師の山口研一郎は以下の理由によって診断が困難であると述べる[8]
症状が多彩であるため、それぞれの病態がいかなる理由から生じているのか、整理がつかない。

症状の中で元からの性格と事故(病気)によって生じた(精神)症状の区別がつけにくい。

症状が各科に渡り(脳神経外科、神経内科、精神神経科、リハビリテーション科、小児科など)、一貫した診療が困難

経過が長く、一人の医師(療法士)が一貫して携わることが困難。

画像(CTやMRI)上、異常所見がでにくい。


SPECT(放射断層撮影)、PET(陽電子放射断層撮影)など、先端の画像診断で判別されることがあるが、現在では、診断の一材料である[要出典]。


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