高度な気道確保
[Wikipedia|▼Menu]

高度な気道確保
治療法
解剖学的に困難気道である病的肥満の高齢者の気管挿管麻酔科医ビデオ喉頭鏡の一種であるグライドスコープを用いている。
診療科麻酔科学救急医学集中治療医学
[ウィキデータを編集]
テンプレートを表示
気道確保 > 高度な気道確保

高度な気道確保(こうどなきどうかくほ、: Advanced airway management)とは、高度な訓練、手技、侵襲を伴う気道確保の下位分類である。これには、患者の肺と外界との間の明確な流路、すなわち気道を確保するために行われる様々な手技が含まれる。もう一つの気道確保の下位分類には、基本的な気道確保(または基本的な気道管理、basic airway management)(英語版)が挙げられる。前者は二次救命処置、後者は一次救命処置で行われることが想定されている[1][2]。なお、Airwayは本来の解剖学的構造としての気道と人工的な気道の2つの意味を有する[3]が、本項においては前者を気道、後者をエアウェイと区別して記述する。

気道確保は、気道の閉塞を解除または防止することで達成される。閉塞は、患者自身のや気道の他の解剖学的構成要素、異物誤嚥(英語版)、大量の血液や体液、食物残渣の誤嚥など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性がある。

侵襲的な気道確保手技の中には、「盲目的」に行えるものがあれば、または声門直視下で実施されるものもある。声門の可視化は、喉頭鏡による直接喉頭展開によるか、近年開発されたビデオ喉頭鏡(英語版)を利用することで可能となる。

頭部後屈あご先挙上法(head tilt/chin lift)(英語版)や下顎挙上法(jaw-thrust maneuver)(英語版)などの基本的な気道管理とは異なり、高度な気道確保は、医療機器の用い方と高度な訓練に依存する。気道確保の分類。上から下になるほど、侵襲が大きくなり、手技完了に時間を要するようになり、難易度も高くなる。

大まかに侵襲度が低い順に、口咽頭エアウェイ経鼻エアウェイラリンジアルマスクとなる。さらに、声門下の器具、例えば気管挿管、最終手段として外科的気道確保(英語版)が続く。ラリンジアルマスクや気管挿管は全身麻酔でも用いられている。

高度な気道確保は、心肺蘇生法麻酔救急医学集中治療医学において重要な要素である。重症患者に対応するための心肺蘇生のABCのAは、気道確保(Airway management)を意味している。多くの場合、気道確保は単純である。しかし、中には困難なものもある。その困難さの度合いはある程度は予測可能である。最近のコクランシステマティックレビューでは、気道確保の困難さ(困難気道)を予測するために一般的に用いられる様々なベッドサイド検査の感度特異度が検討されている[4]。これらベッドサイド検査はスクリーニング検査として感度が高いことが期待されるが、いずれも感度は低く、特異度は高かった[4]。つまり、困難気道の予測精度は低いが、困難気道ではないことの予測精度は高い。
咽頭エアウェイ

咽頭エアウェイとは、自発呼吸のある患者に対して、気道の開通した状態を維持する目的で、舌をのどの奥から避けるために用いるものである[5]。舌による気道閉塞は、意識レベルが低下しているときによく起こる[6]。咽頭エアウェイには、経鼻エアウェイ口咽頭エアウェイがある。これらのデバイスは、最も単純な人工エアウェイである[7][8]。医師だけではなく、救急標準課程の講習を修了した救急隊員ないしは救急救命士にも使用が認められている[9][10][11]全身麻酔により意識消失した患者のマスク換気が困難である際にも咽頭エアウェイ留置は推奨されてい る[12]
口咽頭エアウェイ詳細は「口咽頭エアウェイ」を参照口と咽頭の解剖構造

口咽頭エアウェイは、口腔咽頭から挿入される硬いチューブで、舌を喉の奥から遠ざけるために舌の上に留置する[5]。経鼻エアウェイよりもよく用いられる[13]。口咽頭エアウェイは、咽頭反射(英語版)のない深昏睡または意識消失(英語版)の患者にのみ用いるべきである。口咽頭エアウェイを留置すると、咽頭反射が刺激され、嘔吐、誤嚥、喉頭痙攣(英語版)を引き起こすことがある[14][15]。口咽頭エアウェイ留置による合併症には、歯や口腔内組織の損傷、逆に気道閉塞を悪化させる(不適切なサイズのエアウェイ使用による)、などがある[14]
経鼻エアウェイ詳細は「経鼻エアウェイ」を参照

経鼻エアウェイは、鼻から喉の奥に通す柔軟なチューブである。口咽頭エアウェイに比べて咽頭反射を刺激しにくいため、ある程度意識があり、咽頭反射に異常がない患者に用いられる人工気道である[16]。また経鼻エアウェイは、開口制限や口腔外傷などの口咽頭エアウェイが使用できない状況でも用いることができる[16]。経鼻エアウェイは、チューブが頭蓋内に入る危険性があるため、頭蓋底骨折の疑いがある場合は一般的に推奨されない[16]。また、著しい顔面外傷がある場合は禁忌である[17]鼻出血はよくある経鼻エアウェイの合併症で、抗凝固剤内服患者ではリスクが高い[18]

口咽頭エアウェイ

経鼻エアウェイ

実際に留置されている経鼻エアウェイ

声門外エアウェイ

声門外エアウェイ(Extraglottic airway devices: EGD)は、気管に入ることなく、気道の開通した状態を維持する器具である。EGDは酸素化と換気には特に効果的である[19]心肺蘇生時などの最初の気道確保や、他の装置で気道確保ができなかった場合のレスキュー器材としても使用することができる[19]。EGDは、肥満患者や顔面に大きな外傷がある患者にとって、特に優れた救助装置である[7]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:68 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef