高年齢者等の雇用の安定等に関する法律
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高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

日本の法令
通称・略称高年齢者雇用安定法
法令番号昭和46年法律第68号
種類労働法
効力現行法
成立1971年5月19日
公布1971年5月25日
施行1971年10月1日
主な内容高年齢者等の雇用の安定、シルバー人材センター等について
関連法令労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律職業安定法
制定時題名中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法
条文リンク高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 - e-Gov法令検索
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高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(こうねんれいしゃとうのこようのあんていとうにかんするほうりつ)は、日本の法律である。通称高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)。1971年(昭和46年)5月25日、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定され、1986年(昭和61年)4月30日、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(昭和61年4月30日法律第43号)に基づき現題名に改称され、同年10月1日に施行された。定年制を直接規制対象とする法令としてはこれが最初のものである。
構成

第一章 総則(第1条-第7条)

第二章 定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進(第8条-第11条)

第三章 高年齢者等の再就職の促進等

第一節 国による高年齢者等の再就職の促進等(第12条―第14条)

第二節 事業主による高年齢者等の再就職の援助等(第15条―第21条)

第三節 中高年齢失業者等に対する特別措置(第22条―第33条)


第四章 地域の実情に応じた高年齢者の多様な就業の機会の確保(第34条・第35条)

第五章 定年退職者等に対する就業の機会の確保(第36条)

第六章 シルバー人材センター等

第一節 シルバー人材センター(第37条―第43条)

第二節 シルバー人材センター連合(第44条・第45条)

第三節 全国シルバー人材センター事業協会(第46条―第48条)


第七章 国による援助等(第49条―第51条)

第八章 雑則(第52条―第54条)

第九章 罰則(第55条―第57条)

附則

目的・基本的理念

この法律は、定年の引上げ、継続雇用制度の導入等による高年齢者の安定した雇用の確保の促進、高年齢者等の再就職の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業の機会の確保等の措置を総合的に講じ、もって高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るとともに、経済及び社会の発展に寄与することを目的とする(第1条)。

高年齢者等は、その職業生活の全期間を通じて、その意欲及び能力に応じ、雇用の機会その他の多様な就業の機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする。労働者は、高齢期における職業生活の充実のため、自ら進んで、高齢期における職業生活の設計を行い、その設計に基づき、その能力の開発及び向上並びにその健康の保持及び増進に努めるものとする(第3条)。
定義

この法律において「高年齢者」とは、厚生労働省令で定める年齢(55歳)以上の者をいう(第2条1項、施行規則第1条)。また、この法律において「高年齢者等」とは、高年齢者及び次に掲げる者で高年齢者に該当しないものをいう(第2条2項、施行規則第2条~3条)。
中高年齢者(厚生労働省令で定める年齢(45歳)以上の者をいう。次項において同じ。)である求職者(次号に掲げる者を除く。)

中高年齢失業者等(厚生労働省令で定める範囲の年齢(45歳以上65歳未満)の失業者その他就職が特に困難な厚生労働省令で定める失業者をいう。)

「就職が特に困難な厚生労働省令で定める失業者」とは以下の通りである(施行規則第3条2項)

障害者の雇用の促進等に関する法律第2条2号の身体障害者

売春防止法第26条1項の規定により保護観察に付された者及び更生保護法第48条各号又は第85条1項各号に掲げる者であって、その者の職業のあっせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡があったもの

その他社会的事情により就職が著しく阻害されている者


「45歳以上65歳未満の失業者」と定められたのは、労働力政策と社会保障・社会福祉政策との対象者を明確に区分し、労働力政策としての特別の財政支出を伴う対策の対象者については、労働市場に対する適応性を有する者に限定することが必要であり、その労働市場に対する適応性の有無は、年齢によって判断することが適当であるとの考えから、中高年齢者の範囲に上限の年齢を設けることとし、その上限の年齢を、
生産年齢人口の10%程度を老齢被扶養者人口とみた場合65歳がその境界線となること

労働力率が急激に低下する年齢はほぼ65歳であること

国民年金としての老齢年金の支給開始年齢及び老人福祉法等に基づく老人福祉措置の対象者の最下限が65歳であること

国際的にみて老齢年金の支給開始年齢が65歳であるところが多いこと

等を勘案して、65歳未満とすることとしたものである。これにより、中高年齢失業者は、45歳以上65歳未満の失業者とするが、これは、45歳未満の者あるいは65歳以上の者に対し、一般的な職業紹介や職業訓練を実施し、必要に応じ、職業転換給付金制度等を活用することを妨げるものでないことはいうまでもない(昭和46年9月17日職発328号)。

この法律において「特定地域」とは、中高年齢者である失業者が就職することが著しく困難である地域として厚生労働大臣が指定する地域をいう(第2条3項)。特定地域の指定は、公共職業安定所の管轄区域を単位として、雇用保険法第25条1項に規定する広域職業紹介活動に係る地域であって、次の各号に該当するものについて行うものとする。厚生労働大臣は、中高年齢者である失業者が多数発生することが見込まれ、次の各号に該当することとなると認められる地域その他次の各号の地域に準ずる地域であって必要があると認めるものについても、特定地域の指定を行なうことができる(施行規則第4条)。

中高年齢者である求職者の数が著しく多いこと。

中高年齢者に係る求人の数に対する中高年齢者である求職者の数の比率が著しく高いこと。

中高年齢者である求職者のうち就職した者の割合が著しく小さいこと。

国等の責務

国及び地方公共団体は、事業主、労働者その他の関係者の自主的な努力を尊重しつつその実情に応じてこれらの者に対し必要な援助等を行うとともに、高年齢者等の再就職の促進のために必要な職業紹介、職業訓練等の体制の整備を行う等、高年齢者等の意欲及び能力に応じた雇用の機会その他の多様な就業の機会の確保等を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとする(第5条)。

厚生労働大臣は、高年齢者等の職業の安定に関する施策の基本となるべき方針(高年齢者等職業安定対策基本方針)を策定するものとする。厚生労働大臣は、高年齢者等職業安定対策基本方針を定めるに当たっては、あらかじめ、関係行政機関の長と協議するとともに、労働政策審議会の意見を聴かなければならず、また高年齢者等職業安定対策基本方針を定めたときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならない。高年齢者等職業安定対策基本方針に定める事項は、次のとおりとする(第6条)。現在、平成25年度から平成31年度までの7年間を対象期間とする高年齢者等職業安定対策基本方針(平成24年11月9日厚生労働省告示第559号、最終改正平成31年3月20日厚生労働省告示第74号)が告示されている[注釈 1]
高年齢者等の就業の動向に関する事項

高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項

事業主が行うべき職業能力の開発及び向上、作業施設の改善その他の諸条件の整備、再就職の援助等並びに事業主が行うべき高齢期における職業生活の設計の援助に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針となるべき事項

高年齢者雇用確保措置の円滑な実施を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項

高年齢者等の再就職の促進のため講じようとする施策の基本となるべき事項

前各号に掲げるもののほか、高年齢者等の職業の安定を図るため講じようとする施策の基本となるべき事項

事業主は、その雇用する高年齢者について職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備を行い、並びにその雇用する高年齢者等について再就職の援助等を行うことにより、その意欲及び能力に応じてその者のための雇用の機会の確保等が図られるよう努めるものとする。また事業主は、その雇用する労働者が高齢期においてその意欲及び能力に応じて就業することにより職業生活の充実を図ることができるようにするため、その高齢期における職業生活の設計について必要な援助を行うよう努めるものとする(第4条)。

国は、高年齢者等の職業の安定その他福祉の増進を図るため、高年齢者等職業安定対策基本方針に従い、事業主、労働者その他の関係者に対し、次に掲げる措置その他の援助等の措置を講ずることができ、この事務の全部又は一部を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に行わせるものとする(第49条)。

定年の引上げ、継続雇用制度の導入、再就職の援助等高年齢者等の雇用の機会の増大に資する措置を講ずる事業主又はその事業主の団体に対して給付金を支給すること。

高年齢者等の雇用に関する技術的事項について、事業主その他の関係者に対して相談その他の援助を行うこと。

労働者がその高齢期における職業生活の設計を行うことを容易にするため、労働者に対して、必要な助言又は指導を行うこと。

機構は、毎年10月を「高年齢者雇用支援月間」と定め、年齢にかかわりなく活躍できる社会の実現に向けて、高年齢者雇用についての関心と一層の理解を図るため、厚生労働省、関係機関と協力して、事業主をはじめ、広く国民に対して、様々な啓発活動を展開している。
高年齢者の安定した雇用の確保の促進

事業主がその雇用する労働者の定年の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない(第8条)。1998年(平成10年)の改正法施行により、それまでの努力義務から義務へと格上げされた。「高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務」とは、鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務とする(施行規則第4条の2)。

定年(65歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主は、その雇用する高年齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置(高年齢者雇用確保措置)のいずれかを講じなければならない(第9条1項)。2006年(平成18年)4月の改正法施行により、それまでの努力義務から義務へと格上げされた。当分の間、60歳以上の労働者が生じない企業であっても、措置は必要である。厚生労働大臣は、事業主が講ずべき高年齢者雇用確保措置の実施及び運用(心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いを含む。)に関する指針を定めるものとされ(第9条3項)、現在、高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針(平成24年11月9日厚生労働省告示第560号)が告示されている。厚生労働大臣(都道府県労働局長に権限委任)は、この規定に違反している事業主に対し、必要な指導及び助言をすることができ、指導又は助言をした場合において、その事業主がなおこの規定に違反していると認めるときは、当該事業主に対し、高年齢者雇用確保措置を講ずべきことを勧告することができ、勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる(第10条1~3項)。


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