高トリグリセリド血症
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脂質異常症

コレステロール構造式
概要
診療科内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10E78.0
ICD-9-CM272.0
DiseasesDB6226
eMedicinemed/1073
Patient UK脂質異常症
MeSHD006937
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脂質異常症(ししついじょうしょう、: dyslipidemia)は、血液中に含まれる脂質が過剰、もしくは不足しているなど、脂質代謝に異常をきたした状態を指す。2007年7月に高脂血症(: hyperlipidemia)から脂質異常症に改名された[1]
診断基準および病態による分類

脂質異常症(高脂血症)は診断基準による分類と病態による分類とがある。診断基準による分類には、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症といった種別があり、世界保健機関 (WHO) の基準に基づき日本動脈硬化学会が診断基準を定めている[2]。一方、病態による分類はリポタンパク質の増加状態より分類するものであり、世界保健機関の1970年報告[3]に基づき日本動脈硬化学会が2013年版脂質異常症治療ガイドに脂質異常症表現型の分類法として記載した[4]
診断基準による分類法
高コレステロール血症

高コレステロール血症(Hypercholesterolemia)とは、血液中の総コレステロール値が高い(220ミリグラム (mg)/デシリットル (dL)以上)タイプの脂質異常症である。生活習慣による脂質異常症の多くがこのタイプである。1997年の国民栄養調査では、日本人の男27%、女33%が該当する。フラミンガムスタディにおいて使用されたため、この値と生活習慣病との関連が注目されたという意味で重要だが、WHO、アメリカ合衆国、日本のガイドラインは、いずれも総コレステロール値に注目していない。

ただし、LDLコレステロールの直接測定法は、主に日本で使われており、欧米では総コレステロール、中性脂肪、HDLコレステロール値から計算するLDLコレステロール値(Friedewaldの計算式{LDL-C=TC-(HDL-C)-TG/5})を使用しており、日本でも日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版」から、Friedewaldの計算式によるLDLコレステロール値を用いることとなった。ただし、計算式は TGが400mg/dL未満のとき有効である。
高LDLコレステロール血症

高LDLコレステロール血症(高LDL-C血症)とは、LDL中のコレステロールが血液中に多く存在する(140 mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。アメリカ合衆国のACC/AHAガイドラインでは、家族性高コレステロール血症以外についてはLDLの目標値を設定するエビデンスはないとされていた。LDLコレステロールは単にコレステロールを肝臓から他の臓器に運ぶ働きがあるだけで、その存在自体は体にとって必要であり、単純に悪玉であるとは考えられていない。
低HDLコレステロール血症

低HDLコレステロール血症(低HDL-C血症)とは、血液中の善玉コレステロール (HDL) が少ない(40 mg/dL 未満)タイプの脂質異常症である。特に女性において、心血管疾患の重要なリスクファクターとなりうる。1997年の国民栄養調査では、日本人の男性の16%、女性の5%が該当する。この病態は脂質が低下して起こるため、高脂血症から脂質異常症へと改名される主な理由となった。
高トリグリセリド血症

高トリグリセリド血症(高TG血症)とは、血液中に中性脂肪(トリグリセリド)が多く存在する(150 mg/dL 以上)タイプの脂質異常症である。1997年の国民栄養調査では、日本人の男45%、女33%が該当する。内臓脂肪型肥満の人に多い。

一時期(米国ATP-IIのころ)、その心血管疾患との関連が疑問視されたが、やはり関連はあると考える人が多い。RLP-C (Remnant-like lipoprotein particles-cholesterol) の高TG血症における動脈硬化発症への関与が示唆されている。
(WHO型)病態分類法脂質異常症(高脂血症)の病型分類リポフォーAS版

1965年Fredriksonらは、ヒトのコレステロールや中性脂肪を超遠心分析法と濾紙電気泳動法で分析し、高脂血症(現在の脂質異常症)をI型・II型・III型・IV型・V型と命名し、1970年に世界保健機構もこの分類法を承継してI型・IIa型・IIb型・III型・IV型・V型とするWHO型の病態分類法を制定し、日本動脈硬化学会も、同上の脂質異常症の表現型分類を「脂質異治療ガイド2013年版」に掲載した。しかし、旧態のWHO型は、最近使われなくなった分析法による分類で、実際の判定に使用され難くなっていた。また、日本動脈硬化学会の2013年版も、リポ蛋白質の種類やコレステロールおよびトリグリセライドが増加したか否かの表現で具体的な判定法が示されていなかった。2019年久保田らは、最近臨床検査室で日常使われている分析法の測定結果を用いて、改変型WHO病態分類法を提案し、具体的な数値でもって判定することができるようになった[5]

特徴的な病態

IIa型脂質異常症 : 家族性高コレステロール血症の家系に多い。コレステロールが高く、VLDLや中性脂肪 (TG) は正常に近い。

IIb 型脂質異常症 : 家族性高コレステロール血症の家系に多い。コレステロールが高く、VLDLや中性脂肪 (TG) も正常より高い。

III型脂質異常症 : 遺伝的にアポタンパクE2/2ホモタイプに出現することが多い。VLDLが高くLDLがほとんどないタイプ。若くして心筋梗塞になりやすいが、発症しない人もいる。

IV型脂質異常症 : コレステロールは正常より若干高い。VLDLや中性脂肪 (TG) も非常に高い。アポタンパクE4を持っていることが多い。

V型脂質異常症 : VLDLや中性脂肪 (TG) が非常に高く、LDLが相当低いタイプ。LDLコレステロールが低いからと放置すると膵炎を起こすことがある。

遺伝的にリパーゼ (LPL, HDGL) などの欠損または活性機能障害の時に発症することがある。

脂質異常症WHO型の簡易判定法[5]
WHO型VLDL分画(%)IDL分画(%)HDL分画(%)その他
I型NDNDNDIDL、LDL、HDL分画のピーク値のODが0.03以下
IIa型15%未満ND33%未満総コレステロール値が220mg/dL以上
IIb型15-25%以内ND33%未満総コレステロール値が220mg/dL以上
III型30%以上10%以上NDLDLのピーク値のODが 0.1以下
IV型20%以上ND33%未満V型、III型、IIb型でないこと
V型30%以上ND10%以上IDL、LDL分画のピーク値のODが0.1以下

注1. 分画 (%) は、リポ蛋白分画(PAGE法、80点)のリポフォーAS(R)の検査報告書に記載されている。
注2. 本WHO型の簡易判定法は、下記参考文献1の表2の小粒子LDL(sLDL)をIV型に含め簡素化したものである。sLDLを考慮されたい者は、[5]を参照のこと。
注3. ODはOptical Density(pixel)、NDはNot Dependent。

脂質についての血液検査の参考基準値

米国ACC/AHAガイドラインでは、LDLコレステロールの目標値を設定するエビデンスはないとしている。日本動脈硬化学会はこれに対し、“日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、多くの実地臨床家がガイドラインを遵守し、またその目安を求めている。 患者の治療に対するアドヒアランスも考慮すると従来通りガイドラインの管理目標値を維持するべきであるとの結論にいたった”としているが、各方面から多くの批判がある。

項目被験者のタイプ下限値上限値単位最適範囲
中性脂肪トリグリセリド)10?39 歳54[6]110[6]mg/dL<100 mg/dL[7]
または 1.1[7] mmol/L
0.61[8]1.2[8]mmol/L
40?59 歳70[6]150[6]mg/dL
0.77[8]1.7[8]mmol/L
>60 歳80[6]150[6]mg/dL
0.9[8]1.7[8]mmol/L
コレステロール3.0[9], 3.6[9][10]5.0[11][12], 6.5[10]mmol/L<3.9 [7]


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