馬場状態
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馬場状態(ばばじょうたい)とは競馬の競走を行うコース(本馬場)の状態を示す言葉である。目次

1 日本の馬場状態

1.1 芝コース

1.2 ダートコース

1.3 不良馬場

1.3.1 不良馬場を巡るレース形態と格付の変更


1.4 中央競馬における馬場状態の確認手法

1.5 競馬新聞への表記

1.6 ばんえい競馬


2 馬場状態を表すさまざまな表現

2.1 芝馬場

2.2 ダートコース

2.3 全天候型走路

2.4 散水による馬場状態の保持


3 関連項目

4 脚注

4.1 注釈

4.2 出典

4.2.1 参考文献



日本の馬場状態

日本における競馬ではダートともに良(りょう)、稍重(ややおも)、重(おも)、不良(ふりょう)の4段階で馬場状態を示している[1][2]。「良」を基本状態として含水率の上昇に伴い「稍重」「重」「不良」と変化してゆく。中央競馬地方競馬ともに同様の表記で示される。なお、ばんえい競馬は馬場状態を含水率の数値そのもので発表している(後述)。

現行の4段階による表記となったのは1937年(昭和12年)からである[3]。1919年(大正8年)からの記録では「良」「稍重」「不良」の他に「良好」・「佳良」・「稍可」・「稍湿」・「湿」・「湿潤」・「泥寧」という表現がなされていた[3]

2003年から2005年までの中央競馬の馬場別の出現率は以下表の通りである[4]

中央競馬の馬場出現率(単位%)(2003年?2005年)良稍重重不良
芝コース83.810.43.72.1
ダートコース69.213.99.07.9

芝コース 水しぶきが飛ぶ芝の不良馬場
(奥のダートも不良馬場)

「良」「稍重」の範囲では大きな負担もなく走りやすい状態である[1]。「重」「不良」と変化してゆくと、芝がぬかるんで滑るようになり、レースタイムが掛かるようになる[1]。馬場状態で表すと「良」「稍重」「重」「不良」と変化してゆくにつれてレースタイムが掛かるようになる[5][6]

現在の芝コースは路盤が砂地で構成され排水性が良好であるため、多少の雨ではコース上へ水が溜まってしまうことはない[6]。そのため、相当な量の水を吸って重くならないと「重」発表には至らない[7]
ダートコース 散水車によるダートコースの散水

芝の場合と異なり、一般的には含水率がある程度高まった方が(馬場状態で言えば「稍重」から「重」)レースタイムは速くなる傾向にある。

「良」の場合、クッション砂の粒子がバラバラの状態なので、肢を踏み込んだ際に蹄の下でクッション砂がパッと散る形となる。そのため、クッション砂が蹄と路盤の間へ残った状態となり、踏み抜けない場合はコロの作用が発生して推進力が逃げることにより、他の馬場状態に比べレースタイムが掛かることになる。ただし、力のある馬であればクッション砂を下層まで踏み抜くことが出来る。[8]ダートではパワー型が有利と言われるのはこの現象によるものである。

「稍重」から「重」の状態であれば、クッション砂同士がくっつき蹄と路盤の間の砂が引き締まった状態となり動きにくくなる[8]。その結果推進力が逃げなくなりレースタイムが速くなる。

「不良」まで達した場合、水によって少し砂が浮いてしまう状態となる。それにより砂が動きやすい状態となって路盤の上で蹄が滑りやすくなりレースタイムが遅くなる現象が起こる。ただし、近年では「不良」といえどもレースタイムは掛からない傾向にある[9]

外観による変化の参考点として、「良」ではサラサラの砂状態であるのに対し、手に取って握ると砂が固まる程度になると「稍重」、足で数回踏み固めて水が浮き出す位になれば「重」である[2]

ダートコースが乾いてきた場合、粉塵が舞うのを防止するため、散水車によってダートコースへ水が散布される(写真参照)。なお、散水車で散布した程度では含水率は0.5%程度しか上がらないという[10]
不良馬場 不良馬場の例(2003年6月18日名古屋競馬場

「重」よりもさらに含水率が上昇した状態。段階としては「不良」が最終段階となる。外観的には芝・ダートが泥まみれになりコース表面へ水たまりができている状態である(写真参照)。あまりに酷い場合は「田んぼ」などと揶揄されることもある(とくにダートでは用いられやすい)[11]
不良馬場を巡るレース形態と格付の変更

1998年2月15日東京競馬場では前日からの激しい積雪により芝コースが閉鎖され、その当日すべての芝レースはダートに変更された[12]。変更に伴い距離は芝1800メートルからダート1600メートルに変更され、レース形態の変更により第32回共同通信杯4歳ステークスのGIII格付けが取り消された[13][注 1][注 2]
中央競馬における馬場状態の確認手法

開催当日の早朝に本馬場からサンプル採取が行われる[2][3][14]。芝コースの含水率(gannsuiritsu)の測定サンプルは4箇所(直線のゴール前100m地点、2コーナー、3コーナー、4コーナー)から採取[3]、ダートは3箇所採取している[2]

芝コースのサンプルは表面の芝やマット層(根や茎が存在している層)ではなく、更に下層の路盤の層から採取する[3]。馬場状態に影響しているのは路盤の土の層であり、芝やマット層では植物自体の水分も多く含まれる事により、正確な含水率を採取出来ないためである[3]

一方、ダートコースの場合は、砂なので保有水分のばらつきは芝に比べ少ない[3]。そのため、路盤の土までは採取せず、表層のクッション砂よりサンプルを採取している[3]

サンプル採取後はサンプルを測定器へ掛けて含水率を算出する。測定器は赤外線水分計を用いており[2][14]赤外線の熱によって水分を蒸発させることにより、測定前と測定後のサンプルの重量を比較することで含水率を算出する[2]。芝コースは最低値と最高値の2箇所を除いた残り2箇所の算出平均値、ダートコースは3箇所の算出平均値が用いられる[2]

含水率の基準として東京競馬場の例(2011年時点)を挙げると、芝コースの場合は「良」で17%以下、「稍重」で17?20%、「重」で20%?23%、「不良」で22%以上となっている[3]

一方、ダートコースの場合は、「良」で10%未満、「稍重」で10?13%、「重」で13%?16%、「不良」で16%以上となっている[3]

なお、芝コースは各競馬場において路盤の土や産地が違うため、含水率の基準値は中央競馬の各競馬場ごとに差がある[3]。それに対しダートコースの場合は、中央競馬の全競馬場において青森県六ヶ所村付近の海砂を採用しており[15][16]、各競馬場ごとの基準値に大きな差はない[3]


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