この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
養育費(よういくひ)とは、未成熟子が社会自立をするまでに必要とされる費用のことである。子供を援助し扶養する親の責任は国際的に認識されており、1992年児童の権利に関する条約は全ての国際連合加盟国が署名し、米国以外のすべての国はこれを批准している[1][2]。 養育費とは、子どもの監護や教育のために必要な費用のことである[3]。子供が経済的・社会的に大人として自立できるまでに要する費用であり、具体的には、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などが該当する[3]。典型的には、離婚によって一方の親のみが親権を行うことになった場合に、親権者でなくなった親が支払う義務を負った費用を養育費と呼ぶ。ただし、婚姻関係は養育費の要件ではなく、子供を養育している親は、何らかの事情で別居している他方の親から養育費を受け取ることができる[3]。 養育費の根拠は、扶養義務に依拠する説(民法877条
日本における概要
母子家庭の7割超が養育費を受け取れていない状況にあるなど、養育費の不払いが横行しており(後述)、政府が対策を検討している[5]。2018年時点では、子供自身が支援機関に養育費について相談するケースも多いとも言われている[6]。 養育費の取り決め(養育費の金額、支払時期、支払期間、支払方法など)は、基本的には当事者間の話し合いによって決められる[7]。話がまとまらない場合は家庭裁判所に判断をゆだねることになる。いずれにせよ、民法では「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」としている[7]。 養育費の金額は 親の生活水準によって異なり、民法752条 養育費の取り決め時に予想し得なかった事情がある場合には、事情変更を理由として養育費の増額又は減額が認められることがある[7]。 基本的に日本国憲法で定めている成人とみなされる年齢20歳まで養育費を支払う例が多い(外国の場合は外国の法律で成人とみなされる年齢まで)。当事者との約束で22歳まで支払われる例もある[8]。子供が自立する前に死亡した場合は年齢以上の養育費を支払う必要はない。 通常の裁判では互いに非があるなどで慰謝料(損害賠償)が相殺されて計算されることがあるが、養育費の場合は一方的な意思表示で慰謝料などと相殺することが法律上認められていない[11]。
養育費の取り決め
金額
期間
相殺の禁止
相殺が認められるためには、養育費と慰謝料の両方について、支払いを行わなければならない時期が到来している必要がある(民法505条1項
養育費は、子どもの生活を支える性質のものであり、相殺の対象とすることが禁止されている(民法510条
慰謝料(損害賠償)は、不法行為によって生じるものであるため、被害を受けた人を保護する必要があることから、相殺の対象とすることが禁止されている(民法509条
ただし、これらの理由と子供の扶養義務を合わせると逆に言えば「親権者が子供を養育できないという理由を盾にして支払いから逃げる」と言った事ができない。また、裁判(もしくは話し合い)で親権を主張する側が3.の理由と扶養義務を主軸に「命じられた慰謝料(損害賠償)が大きすぎて養育できない」「信用が著しくない」などの大きな問題がある場合は親権が認められなかったり、落し所として相殺が認められることがある。 養育費は一度取り決めをした以上、変更するまで合意内容が有効になるため、返還請求は困難である。しかし、相手の再婚・養子縁組などの事情変更により養育費の金額が不合理な状況になった場合は、話し合いや調停によって減額・免除・返還請求できる可能性がある[12]。
減額・免除・返還請求