飲酒運転
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飲酒運転を見つけるための検問ドイツ英語で「飲んだら乗るな」と書かれたアメリカ海軍基地におけるサインと事故車両(グアム

飲酒運転(いんしゅうんてん)は、飲酒後にそのアルコールの影響がある状態で自動車などの車両運転する行為をいう。同様な状況で他の交通手段を操縦する場合は飲酒操縦(いんしゅそうじゅう)といい、船舶(飲酒操船)[1]鉄道車両航空機などが該当する。

日本交通法規による規制により、飲酒等により血中または呼気中のアルコール濃度が一定数値以上の状態で運転または操縦することを特に酒気帯び運転(しゅきおびうんてん)または酒気帯び操縦(しゅきおびそうじゅう)といい、数値に関係なく運転(操縦)能力を欠く状態での運転を特に酒酔い運転(さけよいうんてん)または酒酔い操縦(さけよいそうじゅう)という。そのほか、酔っ払い運転という俗称もある。
概要血中アルコール濃度と事故リスクの相関性を示すグラフ[2]

酒に含まれるエタノールは、中枢神経系に作用しの神経活動を抑制(麻酔作用)する物質であり、飲酒によって運動機能の低下、理性・自制心の低下、動体視力集中力認知能力・状況判断力の低下等を生じることになる[3]。そもそも自動車は免許制をとっていることにも表れているように、通常時においても操作を誤れば死傷者が生じる危険があるものであり、飲酒によって様々な能力が低下している状態で運転すれば多数の犠牲者を出しかねない、大きな危険をともなう行為である。こうした危険を回避する為、多くの国においてはアルコールの影響下にある状態での運転を禁ずる、もしくは制限する法律が作られている。

日本においては、道路交通法第65条第1項[4][5] で「何人も、気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定されており、違反は厳しい取締りの対象となる。同法上の「車両等」には自動車、オートバイ原付バイクだけでなく自転車などの軽車両、さらにトロリーバス路面電車牛馬なども含まれる。なお、道路交通法の飲酒運転の禁止が適用される場所は道路交通法に言う「道路[注釈 1]」上に限られる。ただし、道路交通法と異なり、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律にはこのような限定はない。

また、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の適用を受ける医薬品に該当する健康酒養命酒などの薬用酒)であっても、アルコールを含有するため、飲酒に該当する恐れがあるので、車(オートバイ、自転車も含む)を運転する前に、健康酒を飲用することも、飲酒運転に該当する[6]

鉄道車両の場合には、鉄道に関する技術上の基準を定める省令第11条第3項、軌道運転規則第6条の2第2項、無軌条電車運転規則第2条の2第2項により、航空機については航空法第70条に、船舶等については船舶職員及び小型船舶操縦者法第23条の36第1項により、飲酒操縦[注釈 2]が禁止されている。プレジャーボートなど小型船舶や水上オートバイ(水上バイク)の飲酒操縦を小型船舶操縦者法では禁止はしていても処罰規定がないため、条例で罰則を設ける地方自治体が増えつつある[1]
歴史

飲酒の文化、乗り物の文化の歴史は有史以前にまで遡るものの、記録に残る限りでは、酒に酔った状態で馬に乗ったり馬車の御者を務めることを禁じる法律は近代になるまで登場しない。人類史においてごく最近まで、地球上の多くの地域で清潔な浄水を十分に入手・保存することは困難であり、アルコールは保存のきく安全な飲料であったため、節度を保った飲酒であれば乗り物の操縦をしても問題とは見なされなかった。文学など文字史料や絵画などでも、酔った御者が度々登場する。

酩酊状態で乗り物を操縦することが社会問題となるのは、19世紀後半になって個人で所有可能なスピードの速い自動車が発明・普及した時代以降のことである。記録に残る人類最初の飲酒運転の逮捕者は、1897年、英国の首都ロンドンタクシー運転手をしていたジョージ・スミスという男である。スミスは飲酒運転中に建物に衝突し、最終的に有罪を宣告され、25シリングの罰金刑を受けた[7][8]

米国ではニューヨーク州において全米で初めて1910年に飲酒運転禁止法が成立した[9]。このような初期の法律では、酩酊状態での運転が禁じられていたものの、具体的なアルコールの摂取量についての定量的な基準は存在しなかった。判定の方法は、事故発生後に医師が運転手を観察・検査することによるもので、医師の主観に大きく依存していた。1930年代半ばに、現在でも使用されている呼気アルコール検査の原理が発明された。1938年、米国の医療関係者と交通当局は、血中アルコール濃度 0.15% を運転禁止の基準とすることを提案したHistory of DUI Laws。
日本における歴史

第二次世界大戦前には、内務省令である道路取締と自動車取締令が車馬の通行方法と自動車の運転手免許などについて定めていたものの、飲酒運転についての規定は存在しなかった。第二次世界大戦後、日本国憲法の制定により内務省令による規制が失効したことから、1947年に旧道路交通取締法が制定された法律第百三十号(昭二二・一一・八)道路交通取締法が、旧道交法にも、飲酒運転を禁止する規定は存在しなかった。日本において飲酒運転が法律上明文で禁止されたのは、1960年の道路交通法改正の際である。この法律により、呼気1リットルに対し0.25mg以上の状態での運転が禁止された。当時の酒気帯び運転違反に対する刑罰は、「二年以下の懲役又は十万円以下の罰金」であった[10]。その後、21世紀に入り段階的に厳罰化が進んでいる。
日本における飲酒運転
飲酒運転に関する日本の法律.mw-parser-output .ambox{border:1px solid #a2a9b1;border-left:10px solid #36c;background-color:#fbfbfb;box-sizing:border-box}.mw-parser-output .ambox+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+link+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+style+.ambox,.mw-parser-output .ambox+.mw-empty-elt+link+link+.ambox{margin-top:-1px}html body.mediawiki .mw-parser-output .ambox.mbox-small-left{margin:4px 1em 4px 0;overflow:hidden;width:238px;border-collapse:collapse;font-size:88%;line-height:1.25em}.mw-parser-output .ambox-speedy{border-left:10px solid #b32424;background-color:#fee7e6}.mw-parser-output .ambox-delete{border-left:10px solid #b32424}.mw-parser-output .ambox-content{border-left:10px solid #f28500}.mw-parser-output .ambox-style{border-left:10px solid #fc3}.mw-parser-output .ambox-move{border-left:10px solid #9932cc}.mw-parser-output .ambox-protection{border-left:10px solid #a2a9b1}.mw-parser-output .ambox .mbox-text{border:none;padding:0.25em 0.5em;width:100%;font-size:90%}.mw-parser-output .ambox .mbox-image{border:none;padding:2px 0 2px 0.5em;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-imageright{border:none;padding:2px 0.5em 2px 0;text-align:center}.mw-parser-output .ambox .mbox-empty-cell{border:none;padding:0;width:1px}.mw-parser-output .ambox .mbox-image-div{width:52px}html.client-js body.skin-minerva .mw-parser-output .mbox-text-span{margin-left:23px!important}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .ambox{margin:0 10%}}

この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。

飲酒運転の種類

日本の道路交通法においては、車両等の飲酒運転による罰則について、酒気帯び運転(しゅきおびうんてん)と酒酔い運転(さけよいうんてん)の2種類に分類している。

酒酔い運転は、アルコール濃度の検知値には関係なく、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」である場合がこれに該当する。具体的には、直線の上を歩かせてふらつくかどうか、視覚が健全に働いているか、運動・感覚機能が麻酔されていないか、言動などから判断・認知能力の低下がないかなどの点が総合的に判断される。


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