食物繊維
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植物繊維」とは異なります。

食物繊維(しょくもつせんい)とは、人の消化酵素によって消化されにくい、食物に含まれている難消化性成分の総称である。その多くは植物性、藻類性、菌類性食物の細胞壁を構成する成分であるが、植物の貯蔵炭水化物の中にはグルコマンナンイヌリンの様に栄養学的には食物繊維としてふるまうものも少なくない。化学的には炭水化物のうちの多糖類であることが多い。
概要

従来は、消化されず役に立たないものとされてきた。後に有用性がわかってきたため、日本人の食事摂取基準で摂取する目標量が設定されている[1]。ただし、定義から明らかなように栄養素ではない。

ヒト消化管は自力ではデンプングリコーゲン以外の多くの多糖類を消化できないが、大腸内の腸内細菌が嫌気発酵することによって、短鎖脂肪酸メタン二酸化炭素水素などに分解される。短鎖脂肪酸の83%が酢酸プロピオン酸酪酸で占められ、産生比は60:20:20の割合である。産生された短鎖脂肪酸の大部分は大腸から吸収される。酢酸は宿主のエネルギー源となり、プロピオン酸は肝臓で糖新生の原料として利用され、酪酸は結腸細胞に優先的にエネルギー源として利用される[2]。食物繊維の大半がセルロースであり、人間のセルロース利用能力は意外に高く、粉末にしたセルロースであれば腸内細菌を介してほぼ100%分解利用されるとも言われている[要出典]。デンプンは約4kcal/g のエネルギーを産生するが、食物繊維は腸内細菌による醗酵分解によってエネルギーを産生し、その値は一定でないが、有効エネルギーは0 - 2kcal/gであると考えられている。また、食物繊維の望ましい摂取量は、成人男性で19g/日以上、成人女性で17g/日以上である[1]。食物繊維は、大腸内で腸内細菌によりヒトが吸収できる分解物に転換されることから、食後長時間を経てから体内にエネルギーとして吸収される特徴を持ち、エネルギー吸収の平準化に寄与している。大腸の機能は食物繊維の存在を前提としたものであり、これの不足は大腸の機能不全につながることになる。食物繊維をNSP[3](non‐starch polysaccharide、非デンプン性多糖類)と呼ぶこともある。
歴史

1918年、医師であるジョン・ハーヴェイ・ケロッグは『自家中毒』[4]という著書を出版し、腸内で細菌が未消化タンパク質から作る毒が健康を害するという自家中毒説をもとに、未消化の肉には細菌が繁殖しやすいが、食物繊維は腸を刺激して活発にさせるので毒が作られにくいという理由で菜食をすすめた[5]

しかし、一方で栄養学では「食べ物のカス」ともされ、長年役に立たないものと認識されていた。たとえば、栄養学の創設者である佐伯矩は、玄米は栄養が多いが未消化物が多いので消化吸収の効率が悪いなどとして、ある程度精白した米である七分搗き米をすすめていた[6]

1960年代の南アフリカのジョージ・オットル(George Oettle)が、食物繊維と大腸がんの関連の研究をしていた。1967年に、インドのマルホトラは食物繊維の摂取が多い場合、がんのリスクが減るという報告をしている[7]

1970年前後、バーキット[8]はオットルの研究を発展させランセットなどで研究報告[9][10]を行い、食物繊維が少ないと腸内の疾患のリスクが上がるだろうという説が広く知られるようになっていった。1975年にバーキットはトロウェル (Hugh Trowell)と共著で『精製炭水化物と病気-食物繊維の影響』[11]を出版し、精白していない穀物である全粒穀物の食物繊維が有益であると述べ、このことは科学的研究によって確認されていった[12]

日本では2000年の「第6次改定日本人の栄養所要量[13]」から摂取量について目標量が設定されている。
分類と種類

大きく水溶性食物繊維 (SDF : soluble dietary fiber)と不溶性食物繊維 (IDF : insoluble dietary fiber)に分けられる。粘性や発酵性で分類する場合もある。
水溶性/不溶性

水溶性食物繊維

ペクチン - 植物の細胞壁における細胞間接着物質であり、果物に多く含まれる

グアー豆酵素分解物 - 増粘安定剤食品添加物)として用いられる

グルコマンナン - コンニャク芋の貯蔵炭水化物であり、こんにゃくの原料。なお、固化したこんにゃくは不溶性食物繊維が大半となる

βグルカン

ポリデキストロース - 化学的に合成された人工の水溶性食物繊維

フルクタン - ラッキョウ[14]キクイモアーティチョークなどに含まれるフルクトース分子の重合体である。イヌリンレバン、グラミナンもフルクタンに含まれる。

イヌリン - ゴボウキクイモなどキク科植物の根や地下茎に含まれる貯蔵炭水化物

アラビアガム - アカシア属アラビアゴムノキ(Acacia senegal)、またはその同属近縁植物の樹皮の傷口からの分泌物を乾燥させたもの

マルチトール

サイリウム

難消化性オリゴ糖

難消化性デキストリン

(海藻に含まれる水溶性食物繊維)

アガロース - 海藻のうち紅藻の細胞壁の主要構成要素であり、紅藻から抽出される寒天の主成分

アルギン酸ナトリウム - 海藻のうち褐藻の細胞壁の主要構成要素であり、コンブなどに含まれる

カラギーナン - ヤハズツノマタやスギノリなどの紅藻類に多く含まれる多糖

フコイダンポルフィランラミナラン[15]

不溶性食物繊維

セルロースヘミセルロースリグニン - 植物の細胞壁の主要構成要素で、野菜など植物性食品から多く得られる。日本人は平均15g/日の食物繊維を摂取しているが、そのうち12gは不溶性食物繊維で、そのほとんどがセルロースであると推定されている[16]

キチンキトサン - 甲殻類の殻や菌類の細胞壁などの主成分

不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の特性をあわせ持つもの

レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)

粘性/非粘性

溶けるとゲル状となり栄養吸収をゆっくりとさせる。[17]

粘性食物繊維

ペクチン

βグルカン

グアーガム

サイリウム

非粘性食物繊維

セルロース

リグニン

発酵性/非発酵性

大腸内のバクテリアにより発酵され短鎖脂肪酸(SCFA)やガス(おなら)が産生される。[17]

発酵性食物繊維

ペクチン

βグルカン

グアーガム

サイリウム

イヌリン

フラクトオリゴ糖類(FOS)

非発酵性食物繊維


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