食器(しょっき)とは、食事に用いる容器や器具の総称で、容器については単に器(うつわ)と呼ぶ場合もある。
菜箸や鍋といった調理の際に用いる器具や容器は、調理器具として通常は食器の範疇に含めないが、食事中も卓上で用いられるものに関してはその限りではない。また、テーブルや椅子といった家具は食器ではないが、和食における膳や、洋食においてパンなどを直接乗せる布、ランチョンマットなどは食器の範疇に含まれることがある。抹茶や煎茶に用いる道具は、茶器または茶道具、飲酒に用いる道具は酒器とも呼ばれ、これらを食器とは区別して用いる場合もある。また、携帯や輸送、保存の為の容器で直接、食事の際に利用するもの(水筒、缶飲料の缶、ペットボトル、包み紙)なども広い意味での食器であるが、通常はこれを食器の範疇に含めない。
食文化の違い、食品・食材の違いによってさまざまな食器が存在する。日本では和食器・洋食器に大別されることが多く、洋食器はさらにガラス食器と陶磁器のチャイナなどに分かれる。 和食における食器。 椀や鉢よりも浅く、低い食器。後述の椀よりも汁気の少ない料理を入れるのに用いられる。皿も参照。 ご飯茶碗汁椀(吸物椀)竹を素材としたモールド製の椀(ヨネヤマ製)。近年、自然素材の生態系へ悪影響を与える心配がなく紙よりも強度で勝るモールド容器が普及し始めた[5]。 大別して飯椀と汁椀、盛椀の三種類がある。木製のものには木偏の椀、陶磁器製のものは石偏の碗、金属製のものには金偏の鋺の字を用いる。円形で底部が湾曲しており、片手で持ち上げることのできるものを椀または碗と呼ぶ。蓋付きのものもあり、椀の縁に口を付けて食することもある為、椀の口径より狭い径の蓋が付くものが一般的である。 皿よりも深く、椀よりは浅い、広く口の開いた器を指す。大きさで大鉢、中鉢、小鉢と分けたり、形で深鉢、平鉢、浅鉢と分けたり、または用途で盛り鉢、向付(むこうづけ)と呼ぶことがある[8]。
食器の一覧
和食器
皿籠
大皿 - 25 cm以上のものを指すが、尺皿と呼ばれる30 cmのものが一般的[1]。「大皿料理」などと用いられる場合には複数人が食べるための料理が盛られる皿を意味する。
中皿 - 大皿に比べ、形、色、絵柄が豊富である。五寸皿、六寸皿、七寸皿が該当し、15 cmから22 cm程度[2]。分割されているプレート皿もあり、洗物を減らせるメリットがある。
盛り皿、平皿: 造りなどを盛るのに用いられる平らな皿。円形の他、長方形や多角形など様々な形状のものがある。
長角皿、長皿、かわら皿: 和食において焼き魚や刺身を乗せるのに用いられる長方形の平たい皿。和食においては例外的に手に持たず、膳に置いたまま使用される。かわら皿は長角皿で全体に緩やかなそりの入ったもの。
刺身皿: 長角皿が多いが、大型の丸皿やデザインの工夫された皿、隅に醤油を入れる仕切り付きの皿もある。
板皿: 盛台と同義、もしくは盛台の形状を模した陶磁器の皿を指す。
盛台、板、塗り板: 汁気のない料理を盛りつける平らな食器。食材の匂いや色が移らないように漆塗りやカシュー塗りのものが多い。無垢の板では素地で食材の匂いや色が移らないように大葉・ダイコンのツマ(ケン)・海草などを敷いて用いる。
寿司盛台: 寿司を乗せるのに用いられる盛台。寿司下駄などとも呼ばれる。
八寸皿(八寸): 直径寸法が尺貫法による八寸である約24 - 25cmの皿のことで、数種類の前菜的な酒の肴を盛るのに用いられる。転じて、そうした料理の名称(八寸皿料理の略)としても用いられる。本来は縁が付いた杉のトレーで、元々は使い捨てであった。
籠(かご): 汁気のない料理を盛りつける食器で竹製のものが多く、素地・煤竹・塗りものがある。
小皿 - 10 cmから15 cm[3]
取り皿、銘銘皿(銘々皿): 英名はmonkey dish。複数人が食べる料理が盛られた食器から、各自の料理を取り分けるための小皿。
和食器においては大きさが三寸 - 四寸内外。
自分の食べる量だけを取り分けることができ、他の料理の味が混ざらないように料理ごとに複数の皿を用意することがある。
複数の人が食べる為の料理が盛られた大皿・中皿から直接料理を取って口に運ぶ事を直箸(じかばし)と言い、正式な和食ではこれを作法に反するとして、各自が取り皿を用いる。会食においては給仕が取り分ける場合もある。
手塩皿(御手塩)、たれ皿、醤油皿、千代口、豆皿: 直径二寸内外の皿。小皿よりも更に小さい皿。薬味を入れる皿としても用いられる。
刺身や餃子・シュウマイなどで醤油やタレ、薬味などの少量で用が足りる調味料を入れ、料理を浸して調味するのに用いる皿。空の状態で食卓にあげられ、醤油瓶などから各自が適量を注いで用いられることが多い。その際、料理が深く浸るほどの多量の調味料を入れることは無作法とされる。深くたれ汁に浸す料理の場合は、呑水 (食器)(とんすい)などの小鉢や蕎麦猪口などの深さのある食器が用いられる。餃子専用の中皿や刺身皿、寿司千代口などにはたれ皿を兼ねた仕切りやくぼみの付いたものがある。
薬味皿: 薬味を盛る為の小振りの皿で、複数の薬味を入れるために幾つかの窪みや仕切りがあるものや、たれ皿と兼用になっているものがある。
向付皿、突出し皿: おひたし、刺身、酢の物、和え物といった向付
葉: 元来、食器として用いていたが、現代では入手が難しくなり一部の葉では食器よりも高価になった。汁気の多いものであっても漏らない様に、幅広く厚みがあり丈夫な形状のものが多く用いられる。皿だけでなく、包むことで弁当箱や蒸し器として用いられたり、料理や食材の仕切りや飾りつけとしても用いられる。
葉蘭(ハラン): 百合科植物。一般にバランと呼ばれることが多く、葉蘭、婆蘭、馬蘭の字を当てることがある。隈笹の葉の縁が白っぽい帯状であるのに対して葉蘭は葉全体が緑色。食べ物の仕切りや中敷、皿の上に葉蘭に料理を載せて彩りを兼ねて出すことがある。隈笹に比べてしなやかさが多い。
隈笹(クマザサ): 稲科植物。バランとして葉蘭の代用にすることが多い。押し寿司・ちらし寿司などで段々重ねの仕切りとして用いたり、笹の上に料理を載せて彩りを兼ね、笹が持つ殺菌力を生かして利用される。握り寿司ではガリや刺身、寿司などを載せる。中に餡が入った草餅を隈笹でくるみイグサで縛ったものが笹団子で、両手の平で回すように揉むと葉がきれいに剥がれやすい。
竹の皮(タケノコの皮): 敷いて食器として用いるより包むことで用いられることが多い。
柿の葉: 殺菌力を生かせ、葉に厚みがあり、丈夫であるため柿の葉寿司に用いられる。
朴葉: 大型のホウノキの葉を生かして包むことに用いられることが多く、朴葉味噌では包んだまま焼くことにも用いられる。
懐紙: 和装において懐中にいれておき、複数用途に用いられる和紙。茶道においては取り皿の代わり、揚げ物では揚げ油の吸い取る。塗り板の上に敷いて料理を載せ、塗り板の色と一般に白である懐紙との色の対比を引き立たせる役目を担う[4]。
椀
茶碗
飯椀(御飯茶碗) - ご飯を盛るための椀。大型のご飯を盛る容器としては丼があり、これは鉢に属するが、飯椀との区別が曖昧な形状のものもある。蓋ありと、蓋無しがある[6]。
夫婦茶碗 - 夫婦で使用するための大小二つ一組になった茶碗のこと。洋食器のペアグラスなどが同形の食器の組み合わせなのに対し、夫婦茶碗は男女の食事量の違いを考慮して同じデザインでも大きさが異なることが一般的である。他に、夫婦湯呑茶碗や夫婦箸などもある。
茶漬け茶碗 - 茶漬け用の茶碗。
蒸し碗 - 口径が広く、浅い形で蒸し物や煮物を入れる蓋向(ふたむこう)と、茶碗蒸し用の蒸し茶碗がある[7]。
湯呑み茶碗
湯呑(ゆのみ)- 湯呑のうち、口径よりも高さが低いものは汲出し湯呑(または汲出し茶碗)、あるいは単に汲出しと呼ばれる。円筒形で縦長のものを長湯呑ということもある。
煎茶碗 - 煎茶をのむ、やや大きめの茶碗。飲み口が外に反っている。
抹茶碗 - 抹茶をのむ、大きめの茶碗。
汁椀 - 汁ものを入れる為の椀。持ち手に熱を伝えない為、漆器が一般的で、蓋付きのものも多い。ご飯でも、漆器が好きな人もいる。汁は椀の口に口を付けて飲むため、湯呑やコップのように飲みやすい形状の縁取りがなされるが、具材は箸でも扱われる為、湯呑やコップより広い開口部を持つ。主に味噌汁に使われるが、雑炊・豚汁・水団の碗は一回り大きい。
雑炊椀
多用碗
盛椀: 主に煮物など、汁物ではないが汁気の多い料理を盛る椀。
竹椀: 竹を輪切りにして作成した椀で、盛り椀や蕎麦猪口などとして用いられる。意匠として竹椀の形状を模した陶磁器の椀もある。竹は他に、縦に割って皿として用いられることもある。
鉢詳細は「鉢」を参照