食品安全委員会
[Wikipedia|▼Menu]

食品安全委員会(しょくひんあんぜんいいんかい、: Food Safety Commission of Japan)は、BSE問題などを受け、2003年7月に設立された科学者からなる内閣府の委員会で、リスク管理機関から独立して、食品に含まれる農薬食品添加物微生物などが人の健康に与えるリスクを、科学的、客観的、中立的に評価している[1][2][3]。この「リスク評価」などを受けて、農林水産省厚生労働省消費者庁などの各省庁が、食品に規格基準を設定したり、事業者を指導したりする「リスク管理」を行う[4][5][2][6]。7名の委員から構成され、その下に16の専門調査会が設置されている[1]
設立の背景

2001年のBSE問題などをきっかけに、2003年5月に「国民の健康の保護が最も重要である」ことを第一の基本理念とする食品安全基本法が制定され、食品の安全性を確保するためのしくみとしてリスクアナリシス(リスク分析)の考え方が導入された[2][7][5]。「リスク分析」とは、食品を含むあらゆるものには「絶対安全」「ゼロリスク」はなく、「リスクはある」ことを前提に、科学的に「評価」し、その結果をもとに「管理」し、みんなで情報を共有し、意見を出し合うという考え方(手法)であり、「リスク評価」「リスク管理」「リスク・コミュニケーション」の3つの要素から成り立っている[8][5][9]。食品安全委員会は、「リスク評価」を行う機関として、食品安全基本法の施行日である2003年7月1日に内閣府に設立された[5][2][3][9]。また、食品の安全性についての「リスク・コミュニケーション」を行っている[6][10]

世界の安全委員会には、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)、欧州食品安全機関(EFSA)、アメリカ食品医薬品局(FDA)、カナダ保健省(Health Canada)などがある[11][12]
役割
リスク評価

食品安全委員会は、科学に基づく「リスク評価(食品健康影響評価)」を行うために設立された[2][5]。「リスク管理機関(消費者庁厚生労働省農林水産省環境省など、規格や基準の設定などの政策・措置を行う)」からは独立している[2][5]。「リスク評価」と「リスク管理」とを分離することにより、独立・中立の立場から科学に基づいたリスク評価が行われる[13][14]。この「独立・中立性」は、2001年のBSE問題を巡り、厚生労働省や農林水産省がリスク管理とともにリスク評価も担当し、生産者や事業者の都合を重視して消費者を軽視したことの反省に基づくものである[13][5]

食品安全委員会は、リスク管理機関から評価の要請があると専門調査会に審議を依頼し、審議結果に対して国民からパブリックコメントを求め、審議・評議をまとめてリスク管理機関に通知する[9][2][15]。リスク管理機関は、このリスク評価の結果など基づき、技術的な実行可能性、費用対効果、国民感情など様々な事情を考慮し、関係者との十分な対話を行った上で食品添加物農薬の使用基準や、食品の規格基準などの政策を決定して、実施する[13][4]。これまで食品安全委員会は、評価依頼を受けて、食品添加物、農薬、動物用医薬品、器具・容器包装、汚染物質、微生物ウイルスプリオン(BSE)、かび毒・自然毒遺伝子組換え食品など3000以上の案件について、評価を行ってきた[2]。さらに、委員会自身が必要があると判断した、トランス脂肪酸や加熱時に生じるアクリルアミドアレルギー物質を含む食品などについても評価を行っている[2][4][16]。食品安全委員会の審議会は原則として傍聴可能で、会議資料を公表するなど、透明性の確保に努めている[15][17][18]

リスク評価(食品健康影響評価)は、食品に含まれる様々な物質を摂取することによる健康への影響の程度を、科学的に調べて決めることである[19][16]。塩や水、添加物など全ての物質は、食べる量によっては有害にも無害にもなり、どのくらいの量なら体に影響を与えないかを知る必要がある[11]。国によって食品の摂取量などの状況は異なるため、日本の現状に近い摂取量に基づいて評価を行う[19]。食品添加物や農薬などの無毒性量(NOAEL)は、動物を用いた毒性試験結果等により求められ、この無毒性量の100分の1を「一日摂取許容量(ADI)」に設定している[20][8][21]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:49 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef