飛騨春慶(ひだしゅんけい)は、岐阜県の高山市・飛騨市等で製造される春慶塗の漆器[1][2]。
1975年(昭和50年)2月17日、経済産業省の伝統的工芸品に指定されている[2]。 天然木の美しい木目を活かした木地を作る木地師(きじし)と、その木地の持ち味を活かして漆を塗る塗師(ぬし)の、二者の工匠の技が結びついた共同芸術である[3][4][5]。 板を平面から立体的に仕上げる「曲物」細工の技法[2][5]、木目の美しさを活かした「透漆(すきうるし)」塗りの技法に優れている[5][6]。 黄色または紅色の下地に透明度の高い「春慶漆」を塗り上げることで、光沢のある飴色に仕上がる[3]。塗師により春慶漆の調合が異なるため、それぞれに個性が表れ[7]、色が経年変化することも特徴[3][8]。飛騨においては黄色の「黄春慶」が製作の中心で、「紅春慶」は注文のみ[3]。 主要製品には、板物(盆など)、曲物(菓子器、重箱など)、挽物(茶托など)がある[9][10]。 飛騨春慶は、塗りだけではなく木地作りの技術も重要で、木地師と塗師がそれぞれ受け継いできた伝統的な技法を駆使し、二人三脚によって製作される[3][11][12]。 材料の木は、挽物にはトチ、指物や曲物にはヒノキ、サワラと、同等の材質を持つものを使用する[13][14]。それらの材料を活かした木地作りには、以下のものがある[13]。 木地が出来上がると、塗師による塗りの工程に入る。 飛騨は、古くは8世紀の飛鳥時代から、豊かな森林資源を利用して木工技術が発達した地であり、「飛騨の匠」と呼ばれる優れた技術をもつ職人を数多く輩出していた[11][4]。
特色
製造工程
木地作り
「割目」?木目にそって割った木をそのまま木地に生かす
「枇目」?人工的に木目の柔らかい部分をはがして造る
「鉋目」?鉋で線模様を掘る
塗り
木地に磨きをかける[13][11]。
「木地固め」?色よく、むらなく塗るために、目止めとして木肌よりとった汁またはタートラージンによる着色と、豆汁(大豆をつぶした汁)またはカゼインを塗り重ね、乾燥した木地が余分な水分を吸わないようにする[7][13]。水拭きを行う[13]。
「着色」?黄色のオーラミン顔料または紅色のローダミン顔料を染料として用いる[15]。
「摺漆(すりうるし)」?生漆に荏油を加えた、透明な「透漆」を薄く塗っていく[7]。塗る回数により、荏油と漆の配合は変えている[15]。乾燥させ、木地の表面に残った荏油を拭き取る[15]。
「研ぎ」?「トクサ」に水をつけ、表面を磨く[15]。
「上塗」?塗師それぞれの調合で作られる、最も透明度の高い透漆「春慶漆」を刷毛で塗って仕上げる[7][15]。
乾燥させる。
歴史
古代
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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